景観生態学
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総説
気候変動による塩水侵入が及ぼす樹木の大量枯死と海岸景観の遷移-ゴーストフォレストからの警鐘
大森 結衣
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2026 年 31 巻 p. 43-60

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抄録

樹木の大量枯死は干ばつや極端高温, 洪水による長期冠水や病虫害, 森林火災, 異常寒波,ハリケーン等で起こり, いずれも世界的な気候変動によって増加している. しかし, ゴーストフォレストと呼ばれる, 低地が水没し塩水侵入が増加することで急速に枯死した樹林帯が学術的関心を集めている. ゴーストフォレストは, 19世紀後半以降に加速した海面上昇により, 20世紀から21世紀の現在にかけて顕在化し始めた広域的な沿岸部の森林枯死である. 当初は北アメリカ大西洋地域で見られる気候変動の影響とされてきたが, 近年は世界各地で報告が出始めている. その外観は全体的に白化し独特の土地被覆となっており, 森林がゴーストフォレスト化すると徐々に低木・湿地へと置き換わり, やがて開水域へと遷移し, 一度進行すると元の生態系に回復することはない. ゴーストフォレストの形成には複数の要因が関与し, 海面上昇やハリケーンは塩水侵入の主要因であるが, 遷移と枯死に至るメカニズムは複雑化している. 本稿は, ゴーストフォレスト研究に関する最新の知見をレビューし, ゴーストフォレスト形成のメカニズムや一連の景観遷移の過程を総合的に整理した. さらに, 日本でゴーストフォレスト研究を行う意義や海岸樹林帯の衰退が海岸生態系に及ぼし得る影響について論じた. その含意として, 北海道の野付風蓮道立自然公園では,すでに白化した立ち枯れ木が観察される. これは地殻変動に伴う地盤沈下による相対的海面上昇に加え, 台風, 高潮, 爆弾低気圧等で海岸侵食や海水流入の影響を受け, 立ち枯れや倒木は近年増加傾向にある. そのため, 同地域は日本におけるゴーストフォレストの一事例として位置づけ得る. そして, ゴーストフォレスト化や沿岸生態系の動態を理解する上で, 同地域での研究は国際的にも学術的にも重要な意義を有する. 一方で, 日本の海岸樹林帯の多くはマツ類を主体とする造林された海岸林である. 塩分ストレスの増大や被害要因の複雑化を考慮すると, 将来的に海岸林の健全性が低下することも懸念される. マツ類の衰退は, 飛砂や飛来塩分の増加を通じた後背地や周辺植生への影響も想定される. 日本においても, 気候変動による気象害の激甚化が海岸林とその周辺環境に及ぼす影響を評価し, 衰退の兆候を早期に把握する手法や, 撹乱後の自然の回復状態の長期的モニタリングが必要である.

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