法制史研究
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叢説
新羅律令に対する中国律令の影響
国家秩序維持関係の法令を中心に
鄭 東俊
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2013 年 63 巻 p. 103-128

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抄録
本稿では新羅の律令における中国王朝の影響を検討するため、新羅の法令と唐以前の律令のうち、謀反罪・盗罪に対する処罰規定と官人の職務関連規定を主に取り上げ比較検討した。
「刑法としての律と行政法としての令とを区別した法典として編纂された」所謂「律令」は、「曹魏以前に追加単行法を中心に運用され未だ法典として編纂されていなかった」中国王朝の「原始律令」を含まない概念であるため、新羅に適用しがたい憾みがあった。新羅法令の時期区分については、中古期と中代の法令に性格の差異があるかどうか判断できないため、本稿ではその時期区分を保留しておいた。
新羅の法令における謀反罪・退軍罪の処罰は、曹魏までの中国律令と共通点が見られる。また、君主欺瞞罪に対する処罰は漢代の不道罪に類似している。私利取得罪・官人収賄罪の処罰は、後漢代の律令に類似している部分がある。官印の支給については、六七五年以前は漢代.魏晋南北朝の影響があったと推定される。官人の休暇関連規定については、漢律の影響も考えられるが、唐令の影響である可能性も無視できない。盗罪に対する処罰は、高句麗・百済のように定額的賠償制などの慣習法をそのまま成文化した規定もあった可能性がある。
新羅の法令に関しては、漢代の「原始律令」が主に楽浪郡を経由し、三世紀前半の中国王朝の「原始律令」が主に帯方郡を経由したうえで、前者が高句麗によって、後者が百済によって六世紀前半まで影響を及ぼして「原始律令」的性格が見られるようになったと考えられる。ただし、官印の支給と官人の休暇規定は唐から影響を受けた可能性がある。
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