2025 年 16 巻 2 号 p. 76-83
【目的】本報告の目的は,転倒恐怖感が強い左大腿骨近位部骨折術後の一症例に対して,排泄動作の自立を目指した理学療法介入と看護助手への介助技術評価・指導を行った事例について考察することである.【対象と方法】60歳代男性,移乗時に転倒し左人工骨頭置換術を施行された.以前より左片麻痺があり,入院前より排泄動作はポータブルトイレを使用して自立していた.初期評価時,排泄動作には中等度介助・転倒恐怖感は10(きわめて強く感じる),左上肢・手指・下肢はいずれもBrunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)Ⅱ,右上下肢筋力はManual Muscle Testにて4であった.介助技術の評価は,理学療法士が看護助手に対して排泄動作を対象としたテストを行い12点であった.この中でも対象者の動きに合わせて介助ができたのか,動作を妨げない位置で介助ができたのかといった評価項目が最も低い点数であった.理学療法では排泄動作の自立に向けた介入を行った.看護助手にはテスト結果に基づき介助技術を指導した.【結果】術後6日目には排泄動作は監視レベルとなった.また看護助手の排泄介助テストは30点となった.最終評価時,排泄動作はポータブルトイレを使用して自立,転倒恐怖感は0(全く感じない),左BRS・筋力は著変なかった.【結論】理学療法介入に加えて看護助手への介助技術評価・指導を行うことは,排泄動作の自立に寄与する可能性が示唆された.