保健医療学雑誌
Online ISSN : 2185-0399
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原著
  • Masaki Iwamura, Yusuke Okamoto, Yuko Oshio, Akiko Nakano, Taro Shigeki ...
    原稿種別: Original article
    2024 年 15 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    Purpose: The effectiveness of multimodal complex treatment for Parkinson's disease (PD‐MCT) has recently attracted attention. However, there are differences in the PD‐MCT content across institutions. Therefore, we aimed to elucidate the effectiveness of PD‐MCT at our hospital and contribute to determining the optimal intensity and duration of the intervention.

    Methods: This retrospective study enrolled 144 inpatients who underwent PD‐MCT at our hospital between March 2015 and June 2023. The primary endpoints were the Movement Disorder Society‐Unified Parkinson's Disease Rating Scale part III (MDS‐UPDRS part III) before and after admission to assess motor function, and the Parkinson's Disease Questionnaire‐39 summary index (PDQ‐39 SI) before admission and 1 month after discharge to assess quality of life. The PD‐MCT at our hospital was conducted during a 3‐4‐weeks hospital stay, with approximately 12 h of rehabilitation per week. After selecting participants with no missing data, 58 were selected for the MDS‐UPDRS part III comparison, and eight were selected for the PDQ‐39 comparison. The analysis was conducted using a paired t‐test for normally distributed data and a Wilcoxon signed‐rank sum test for non‐normally distributed data, with a significance level of 5%.

    Results: The total score of MDS‐UPDRS part III was 34.7±13.3 before admission and 28.6±12.3 at discharge, and the PDQ‐39 SI was 34.0±13.5 before admission and 23.9±9.9 1 month after discharge, showing significant improvement (p<0.01 and p<0.05, respectively).

    Conclusion: Motor function and quality of life significantly improved in this study. In particular, the improvement in the quality of life was sustained even 1 month after discharge. However, the study was retrospective, and many participants were excluded during the selection process, which may have caused a selection bias.

  • -Real time Tissue Elastography とファントムを用いた検討-
    山田 大智, 田中 則子, 越野 八重美, 小柳 磨毅
    原稿種別: 原著
    2024 年 15 巻 1 号 p. 8-16
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    【緒言】

     超音波診断装置のStrain elastography機能を用いたStrain ratio(SR)計測は,音響カプラと対象物のひずみ値の比率から,生体組織の剛性を非侵襲的に計測できる.しかし,SR計測における走査法の違いが計測値に及ぼす影響は明らかにされていない.本研究の目的は,Real‐time Tissue Elastographyと超音波エコー用ファントム(以下,ファントム)を用いて,走査法の違いがSRの計測値に与える影響を検証することである.

    【方法】

     ファントム内に配置した異なる剛性をもつ独立した内包物(ヤング率100kPa, 200kPa, 400kPa)を計測対象とし,走査法は長軸走査と短軸走査の2条件とした.測定誤差の評価には,変動係数(Coefficient of variation: CV)を用いた.

    【結果】

     SR,内包物ひずみ値,音響カプラひずみ値のCVは,100kPaの内包物では各条件で同程度の値を示したが,200kPaと400kPaの内包物では,長軸走査に比べて短軸走査において高値を示した.Elastography画像を確認した結果から,200kPaと400kPaの内包物では,内包物のひずみ分布が不均一であることや,短軸走査では音響カプラの弯曲に伴い中央部に限局したひずみ分布を示した.

    【結論】

     剛性が高い対象物のSR計測では,長軸走査に比べて短軸走査におけるSRの測定誤差が増加することが示された.

  • 中原 啓太, 嶋 定清, 門脇 誠一, 横井 賀津志
    原稿種別: 原著
    2024 年 15 巻 1 号 p. 17-24
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    【序論】

    回復期リハビリテーション病棟おいて地域連携をする方法の一つとして,退院前訪問指導がある.退院前訪問指導は,病院から在宅復帰する際に,病院と介護保険領域スタッフとの連携を促進するために必要な援助方法である.回復期リハビリテーション病棟に関連する職種は,計画的な退院支援をするために,退院前訪問指導を実施する対象の患者を予測し,調整する必要がある.

    【目的】

    回復期リハビリテーション病棟に入院する脳血管障害患者の入院時に得られるデータから退院前訪問指導実施を予測するモデルを開発することである.

    【方法】

    脳血管障害患者を訪問指導実施群,訪問指導非実施群の2群に分けて後ろ向き研究を実施した.分析は,ロジスティック回帰分析にて有意差が認められた変数に関してReceiver Operating Characteristic曲線をもちいて,訪問指導実施の有無のカットオフ値,感度,特異度,曲線下面積を算出した.

    【結果】

    対象者は,脳血管障害患者137名のうち退院前訪問指導実施群が59名,非実施群が78名であった.退院前訪問指導実施を予測する要因は,入院時「運動FIM」が標準化係数-0.077(オッズ比0.926, 95%信頼区間0.899~0.945)が選択された.カットオフ値は52.5(感度0.932,特異度0.397, AUC0.833)であった.

    【結論】

    本モデルは,感度と特異度に基づく基準から,訪問指導が必要となる脳血管障害患者の特定に有用であるが,訪問指導を実施しない脳血管障害患者を選択する際の有用性は限定的である.

  • -三次元動作解析における検証-
    森下 聖, 小柳 磨毅, 向井 公一, 成 俊弼, 越野 八重美, 木村 佳記
    原稿種別: 原著
    2024 年 15 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    【背景】

    三次元動作解析装置に装備されているPlug‐in Gait model(PIGM)は,股関節回旋角度の精度計測に限界があるとされる.そこで,解析ソフトウエア上の大腿骨前後軸を用いた新たな解析方法を考案し,妥当性と信頼性をPIGMと比較した.

    【方法】

    対象は健常男性5名(平均年齢21歳)とした.計測はVICON Nexus(OMG社製)とデジタルカメラを同期し,マーカーセットをPIGMとした.運動課題は,股関節屈伸0°位の内旋30°位と外旋30°位とし,各5回計測した.各肢位の股関節回旋角度を(1)画像解析ソフト(Image J)による水平面画像の下腿骨軸と矢状水平軸が成す角(二次元画像角度)を基準として,(2)PIGMの算出角度(三次元解析角度)(3)PIGMの大腿骨前後軸と矢状水平軸が成す角(大腿骨前後軸角度),を用いて評価した.項目間の相関係数を算出し,大腿骨前後軸角度の級内相関係数(ICC),標準誤差(SEM)と最小可検変化量(MDC95)を算出した.

    【結果】

    二次元画像と三次元解析の股関節回旋角度には相関を認めなかった.一方,大腿骨前後軸角度は二次元画像角度と強い正の相関関係(r=0.95~0.98)を認め,検者内と検者間のICCは,内旋位と外旋位共に高度に一致し,SEMは0.04以下,MDC95は0.12以下であった.

    【結論】

    考案した大腿骨軸前後角度は,股関節の回旋運動に対する解析手法として有用である.

  • 辻 陽子, 橋本 弘子
    原稿種別: 原著
    2024 年 15 巻 1 号 p. 32-42
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    【緒言】「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築が目指されるようになり,訪問看護の果たす役割は大きい.訪問看護支援者を対象とした調査研究において,看護師等に対する調査はあるが,作業療法士(OT)に対する調査は見当たらない.本研究の目的は,わが国における精神科訪問看護に携わっているOTの支援の現状から,OTの訪問看護においての役割について検討することである.

    【方法】対象は精神科訪問看護ステーションに常勤として5年以上従事しているOT 5名とした.インタビューは対面またはオンラインで実施し,インタビューガイドはモニタリング,服薬支援,就労支援,高齢者に対する支援,児童に対する支援とした.インタビュー内容はICレコーダーに録音し,逐語録を作成した.逐語録はOT2名によりKJ法で分類した.

    【結果】KJ法で分類した結果,支援内容と支援方法に分類できた.支援内容については,国際生活機能分類(ICF)の項目と類似していたことからICFの項目に整理した.支援方法はコミュニケーションを通した支援,活動を用いた支援,環境を調整し活用した支援に分類できた.

    【結論】OTの支援は活動に焦点をあて,活動を行う環境を調整しながら支援を行っていた.OTの役割は訪問看護の利用者が望む活動ができ,社会参加の機会が増えるように環境へ働きかけ,調整していくことであると考えられる.

  • 鈴木 真, 本多 伸行, 木村 大介
    原稿種別: 原著
    2024 年 15 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    要旨

    本研究では,介護保険分野における要介護認定者の健康寿命の延伸という観点から5 年生存率を上昇させるための要介護度の推移について,確率シミュレーション・モデルを用いて検討した.方法は,まず先行研究を参考に仮想の1 万人分の5 年間の要介護度の確率的に作成した基準群とするデータセットを作成した.これに対し,各年の死亡率を調整し5 年後の生存率が基準群よりも1%上昇するデータセットを同様の方法で作成し,これを処理群とした.以上の仮想のデータセットの作成を,不確実性による外れ値によってデータに不安定性が生ずる危険性を排除するためにそれぞれ100 回行い,その記述統計の結果を用いて基準群と処理群を比較検討した.その結果,各要介護度において5 年生存率を1%向上させるためには5 年後に各要介護度における人口を最大で約2.1%増加させる必要性が示唆された.高齢になっても安全かつ安心して生活できる社会保障制度の構築に寄与できるように,今後は年齢や性別などの予後変数を用いた予測モデルを開発し,実証検証を含めた外的妥当性について評価する必要があると考える.外的妥当性が担保されれば,具体的な介護サービスが要介護者に与える影響やその費用対効果など様々な研究に応用することができ,より良い高齢者の生活の獲得や社会保障費の抑制にも繋げることができると考える.

  • 花村 衣咲, 吉田 恵理子, 永峯 卓哉, 飛奈 卓郎, 世羅 至子
    原稿種別: 原著
    2024 年 15 巻 1 号 p. 53-61
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    【緒言】隠れ肥満(Normal weight obesity: NWO)は,BMIが正常範囲(18.5‐25.0kg/m2)であるが高体脂肪率(≥30%)を呈する状態であり,特に若年女性ではNWOの該当者が多い.しかし,どのような生活習慣因子が若年女性のNWOに関連しているのか,NWOが運動機能にもたらす影響についても明らかでない.本研究では,若年女性におけるNWOの生活習慣および運動機能との関係性を検証した.

    【方法】若年女性33名(中央値20.0歳)を対象とし,身体活動量,栄養素等摂取量,体組成,運動機能を測定した.運動機能は,椅子立ち上がり時の床反力,30秒椅子立ち上がりテストを測定した.NWOの判定は,18.5≥BMI<25.0kg/m2かつ体脂肪率≥30%に該当する者とした.

    【結果】対象者33名のうち,11名(33%)がNWOに該当した.NWO群とnon‐NWO群の比較では,BMI(p<0.001),全身筋肉量(p=0.040),体幹部筋肉量(p=0.001)がnon‐NWO群よりもNWO群において有意な高値を示した.一方,NWO群とnon‐NWO群の生活習慣および運動機能に有意な差は認めなかった.

    【結論】若年女性におけるNWOは,生活習慣および運動機能との関係性を認めなかった.しかし,NWOの長期的な併存が運動機能にもたらす影響は明らかでなく,縦断調査による今後の検討を要する.

  • 小松 寛, 松尾 貴央, 岩田 健太郎, 東別府 直紀
    原稿種別: 原著
    2024 年 15 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 2024/04/01
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー

    【目的】嚥下機能評価において近年は舌圧値が注目されているが,嚥下機能の予後との関連について明確な位置づけはない.今回我々は急性期病院における脳卒中症例を除く嚥下障害患者を対象に,舌圧値による嚥下予後の予測可能性,疾患群及び入院日数の影響なども含め予備的に検討した.【対象と方法】当院に入院された嚥下障害患者102名中,「誤嚥性肺炎群」「神経疾患群」「心臓血管術後群」の3群の舌圧値,入院日数,FOIS改善度を回帰分析にて調整し,舌圧値と嚥下予後について検討した.【結果】各疾患群の中央値(四分位範囲)は,「誤嚥性肺炎群」11名,舌圧値24.4(6.4-26.9),入院日数14(11-15),FOIS改善度0(0-0).「神経疾患群」11名,舌圧値15.3(12.6-18.4),入院日数19(11-16),FOIS改善度0(-1-0).「心臓血管術後群」17名,舌圧値23.4(20.9-28.7),入院日数28.5(20-46.3),FOIS改善度2(1-2).回帰分析の結果,疾患群間において舌圧値,入院日数,FOIS改善度で有意差を認めた.また全症例において舌圧値が高値であることとFOIS改善度に正の相関がみられた(r=0.332, p<0.05).単変量解析では舌圧値とFOIS改善度,入院日数は有意に関連したが,多変量解析では舌圧値とFOIS改善度に関連は認めず,「心臓血管術後」に有意な関連がみられた.【結論】「心臓血管術後群」において入院初期の舌圧値が高値を示す場合,退院までのFOIS値の改善に寄与する可能性が示唆された.

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