日本地方財政学会研究叢書
Online ISSN : 2436-7125
研究論文
米国ミシガン州の2011年企業課税改革
――課税ベースをめぐる議論を中心に――
松井 克明
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2018 年 25 巻 p. 79-105

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抄録

 米国では州レベルの課税は,それぞれの州に課税権限があり,独自性の強い税制が形づくられている.産業構造の転換,政策方針の転換に乗り遅れたラストベルト(鉄さび)州(Rust-belt States)とされる中西部では,税制改革を通じて事態の打開を図ろうと試みている.なかでも,以前から企業課税において先進的な取り組みをしてきたのがミシガン州である.最近でも2007年に続き,2011年に州知事の交代とともに企業課税改革が行われ,消費型付加価値税を含むミシガン事業税(Michigan Business Tax, MBT)から,法人所得税に転換することになった.

 ミシガン州では1968~1975年度も法人所得税が導入された時期があったが,法人所得税への再移行を含めた2011年の企業課税改革は,雇用創出,企業誘致を目指した中西部の州間租税競争に重点を置いた政策であり,企業課税の課税ベースは,中西部州の償却資産税の軽減による租税競争の影響を受け,償却資産課税が廃止されるなど,企業収益・所得課税と資本課税の組み合わせで議論されるようになった.また,企業への減税の一方で,年金所得への課税や移入税への課税など,消費者への税負担が増えることになった.

 州レベルでは,利益説を重視した応益原則による企業課税が行われることがあり,たとえば,隣接したオハイオ州では償却資産税に代わって,応益原則を重視した取引高税を導入している.ミシガン州の2011年企業課税改革においては,応益原則は重視されず,償却資産税は廃止され,ミシガン事業税は法人所得税に転換された.

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