言語政策
Online ISSN : 2758-500X
Print ISSN : 1880-0866
研究論文
複言語・複文化話者としてのサハリン残留日本人
─ 複言語・複文化における仲介という観点から─
佐藤 正則三代 純平
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2023 年 19 巻 1 号 p. 19_1-19_16

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抄録

 本研究は、日本に永住帰国したサハリン残留日本人2世Sさんのライフストーリーを複言語・複文化における仲介(mediation)という観点から考察することによって、Sさんの言語経験の意味を明らかにし、複言語・複文化における仲介の意義を論じる。A市に永住帰国した第2世代の一人であるSさんにライフストーリー・インタビューを行い、いかに言葉を学び使用しているかという観点で分析した。その結果、Sさんの仲介活動は「サハリンの人々と日本社会をつなげる役割」「日本語話者とロシア語話者をつなげる役割」「日本社会にサハリン残留日本人の経験と記憶を伝える役割」という役割を担っていることが分かった。また仲介はSさんのアイデンティティの更新につながったこと、それは言語や文化の境界にいるからこそ可能になることも明らかになった。以上の結果から、多文化共生社会における複言語・複文化話者の仲介活動の場作りの必要性を論じた。

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© 2023 日本言語政策学会
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