メディア・英語・コミュニケーション
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寄稿
新語研究報告
三田 弘美山内 圭
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ジャーナル オープンアクセス HTML

2026 年 16 巻 p. 83-94

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寄稿(報告)

MEDIA, ENGLISH AND COMMUNICATION, No.16   

2026 The Japan Association for Media English Studies

新語研究報告(2025年7月~2026年6月)1

三田 弘美(口語英語研究所、新語・語法研究分科会代表)、山内 圭(新見公立大学)

  

Abstract: This report examines a selection of noteworthy neologisms in English reported between July 2025 and June 2026 in the Study Group on New Words and Usages. Emerging from the interplay of psychological, social, cultural, and linguistic dynamics, neologisms articulate realities that conventional vocabulary cannot fully capture. This study identifies salient examples—including those tied to current events—and analyzes their word-formation patterns, emergence, lexical development, and usage contexts, accompanied by brief discursive observations.

By documenting these items and situating them within their sociolexical backgrounds, the paper provides a concise account of ongoing lexical developments in contemporary English.

Keywords: neologism, lexical innovation, contemporary English

1. はじめに

1.1 新語研究 "neologisms research" とは

新語は、個人の認識の変化や社会・文化の動向、さらには言語体系の変容を背景として生まれる。既存の語彙では捉えきれない概念や、新たな表現の精緻化が求められる場面では、語の創出が自然に生じる。こうした要因が相互に作用することで、新語が誕生し、言語表現の幅が更新されていく。新語研究(neologisms research)は、その構造や形成メカニズムを分析することによって、言語の変化を捉え、特定の時代に固有の社会・文化的背景を読み解く手がかりとなり、今後の語彙動態を展望する上でも重要な領域である。

本稿では、まず新語の定義および主要な造語法(混成・短縮・派生・転用など)を簡潔に概説した上で、2025年7月から2026年6月にかけて新語・語法研究分科会、東日本研究例会で報告された語のうち、時事性や語用的意義を有する語を選出し、その出現背景・語形成・語彙的広がりを記録・考察する。

分析対象は、(1)「派生しやすい語・生産性の高い語」、(2)「社会的契機・使用文脈に注目する分類」の二分類とする。

1.2 「新語(neologism)」の定義

 本稿において「新語」とは、以下のいずれかに該当し、かつ語用上で新たに顕著化した語彙項目(vocabulary item)を指す。

(1) 完全に新しく作られた言葉(新造語)

(2) 既存語を基に派生・合成された新たな語

(3) 既存語に新たな意味や用法が加わった語

(4) 新たに注目されるようになった語彙項目(特にAmerican Dialect Society の“Word of the

Year”選定基準および本研究分科会の指針に準拠して判断される)

1.3 造語法(新語形成の形式と呼称)

(1)派生(derivation)―接辞や連結形の付加

(2)複合(compounding)―2語以上の独立語を結合して意味を組み合わせる

(3)省略(abbreviation / acronym)― 頭字語やイニシャル語の形成

(4)短縮(shortening / blending)

a)混交語(blend):2語以上の語の一部(綴り・音)を融合させて新たに作られた語

b)短縮語(truncation + affixation 型):混交語のように音の重なりはないが、第一語の語幹または後半部と、第二語の前部・後部を結合して形成される語(例:coolcation = cool + vacation の語末部)

2. 新語の実例

 本章では、新語がどのような場面で用いられているかに着目し、使用実態に基づいて語を整理する。語形成の生産性や意味の転用、発生領域などを踏まえつつ、実例に即した分類を行う。

2.1 派生しやすい語・生産性の高い語

2.1.1 -cation :(____+(va)cation): 「―休暇」を表す新語

 本語群は、2000 年代後半に広まったstaycation を起点とする派生語であり、その後 workcation などが登場して生産性が高まった語形成である。近年では coolcation や stopover‑cation など新たな造語が生まれ、名詞・形容詞・複合語に “‑cation” を付ける形が旅行・働き方・ライフスタイルの領域で広く用いられている。

a) cool-cation, coolcation

和訳:クールケーション/暑さを避けて涼しい地域で過ごす休暇 

例文:“The coolcation trend is heating up—and the numbers prove it.”

Coolcations are vacations to cooler climates, as opposed to a typical sun-soaked summer break. In Europe, it signals the move away from traditional Mediterranean resorts and towards Scandinavia.

考察:地球温暖化による夏季の気温上昇を背景に、猛暑を避けて涼しい地域へ旅行する動きが広がったことから生まれた新語である。

出典:https://www.forbes.com/sites/davidnikel/2025/06/17/the-coolcation-trend-is-heating-up-and-the-numbers-prove-it/

発表者:三田弘美、発表日:2025年11月15日

b) layover-cation, stopover-cation (layover/stopover+vacation)

和訳:ストップオーバーケーション/乗り継ぎ地で過ごす休暇

例文:The “stopover-cation” is the latest travel trend that turns your stop-over into a stay-over.

考察:2024年以降、航空会社が追加料金なしでストップオーバーできるプログラムを拡充したことや、旅行者の価値観の変化を背景に生まれた語で、乗り継ぎ地での滞在を「小さな休暇」として楽しむ旅行スタイルを指す。

出典:https://travel.nine.com.au/destinations/vietnam-travel-stop-over-cation-on-route-to-europe-sami-lukis-vietnam-airlines/80d5c7f4-605c-4472-a119-abbad5682b83

発表者:三田弘美、発表日:2026年2月14日

c) micro-cation, microcation

和訳:2~4日の短い休暇 

例文:From passport privilege to overtourism and carbon cost, the boom in two- to four-day "micro-cations" reveals how modern travelers are rethinking rest.

考察:長期休暇やゆっくり滞在する休暇(slowcation)が取りにくい忙しい現代人の間で広まりつつある、新しい休暇の形と考えられる。類語として nearcation(近場での休暇)がある。

出典:https://www.bbc.com/travel/article/20260309-micro-cations-the-big-appeal-of-the-tiny-holiday

発表者:三田弘美、発表日:2026年2月14日

2.1.2 -detox, -tox(ing): ~デトックス、~を絶つ[こと]

 本語群は、本来「毒素を排出する」という医学的意味を持つ detox を起点とし、1990 年代以降「不要なものを排除する」という抽象的意味が加わり、sugar detox や alcohol detox などの用法が広まった。2000 年代には dating detox や digital detox など、「行動・習慣を断つ」という比喩的意味へと語用が拡張した後、detox が tox と再分析・短縮されることで派生語が生じた。この語形成は、SNS を中心に現在も生産的に用いられている。

a) dating detox

和訳:恋愛断ち、一定期間、意図的に恋愛活動を休止すること

例文: A dating detox helps men come back clearer, calmer, and more aligned with what they truly want.

考察: 2009 年の小説The Dating Detoxが語の初出とされ、その後 SNS やライフスタイルメディアを通じて「恋愛疲れからの回復」を目的とするセルフケアとして普及した。2025 年頃からは、マッチングアプリの普及や義務的な恋活・婚活に疲弊した人々が、アプリ削除やデートの拒否を能動的に選択し、自己回復と自己投資に集中する期間を指す語として再注目されている。単なる非恋愛期間ではなく、デジタル恋愛市場がもたらす精神的消耗を意図的に断ち切る能動的なセルフケアである点が特徴である。

出典: https://www.themodestman.com/dating-detox-benefits/

発表者:三田弘美、発表日:2025年9月28日

b) social media detox / SMD

和訳:SNS断ち

例文:‘I didn’t realise how badly it affected me until I was off it’: what it’s like to have a social media detox

考察:この概念は、広義の「digital detox(デジタルデトックス)」を、ソーシャルメディアに限定した表現で、2015年頃から使用例が増加している。特に、情報過多や、若年層のSNS疲れ(比較疲れ)からの回復やメンタルヘルスへの関心とともに広まった語である。研究論文やメタ分析でも「SMD」という略語が使われるようになり、心理的効果の検証対象にもなっている。 

出典:https://www.theguardian.com/media/2022/dec/15/i-didnt-realise-how-badly-it-affected-me-until-i-was-off-it-should-more-of-us-try-a-social-media-detox

発表者:田中満佐人、発表日: 2025年9月28日

c) man tox

和訳:男捨離

例文:1)You’re on man-tox. You're supposed to be finding yourself.

  2)I put myself on a “man-tox” for a year, which meant no dating at all.

考察:女性の自己決定や恋愛からの距離の取り方を表す語彙として、ポップカルチャーやライフスタイル文脈で使われている。

出典:1) イギリス映画『踊るアイラブユー(Walking on Sunshine)』 (C)WOS Distribution (Ireland) Limited

2)https://amendo.com/why-i-went-on-a-year-long-dating-detox-and-what-i-learned/

発表者:三田弘美、発表日:2025年9月28日(2015年9月12日)

2.1.3 -wash(ing) : ごまかし/偽装

本語群は whitewash(隠蔽)に由来し、1986年に登場した greenwashing(環境偽装)を契機に、《色名+wash》から《名詞・形容詞+wash》へと派生・拡張された。環境・健康・政治・社会運動など多様な分野に応用され、“倫理的価値を利用したイメージ戦略”を批判する造語群として機能している。なお、本学会誌15号(2023 年 2 月〜2025 年 6 月の新語報告)では、healthwashing(見せかけの健康性)、AI washing(実態と異なる AI 利用の誇張)、sanewashing(正気の偽装)などの語を対象として整理した。

a) maplewashing

和訳:メイプルウォッシング/カナダらしさの商品偽装

例文:Looking to 'Buy Canadian' at the grocery store? Beware of maple-washing 

考察:maplewashing は、2016 年に『Jacobin』誌のライター Luke Savage が、カナダの道徳的優位性を誇張する政治的・社会的イメージ戦略を批判する語として用いたのが初出であるが、2025 年には、米国による追加関税発言を契機に “Buy Canadian” 機運が高まり、カナダ産の価値が政治的・社会的に強調されたことを背景に、実際にはカナダ産ではない製品に “Packaged in Canada” やメープルリーフなどの国家シンボルを用いて原産国を誤認させる販売手法を指す語として注目された。2025 年に Canadian Word of the Year に選ばれたことからも、この「商品偽装」の意味が近年の中心的用法として社会的に定着したことがうかがえる。

出典:https://www.cbc.ca/news/marketplace/marketplace-cheat-sheet-feb-1-2025-9.7068131

https://www.canadianenglishdictionary.ca/media/2025-cwoty-release.pdf

https://languagelog.ldc.upenn.edu/nll/?p=72290

発表者:田中満佐人、発表日:2026年2月14日

b) slopwashing    

和訳:スロップウォッシング 

例文:“Slopwashing” is the practice of attempting to disguise AI slop as legitimate or human-created.

考察:本語は greenwashing(環境配慮の偽装)の slop 版にあたる造語であり、AI が大量に生

み出す低品質なコンテンツ(AI slop)を、人間が関与したように装ったり、品質が高いかのよ

うにブランディングしたりする“ごまかし”を指す。

出典: Chyrvonyi O. S (2024). From Hallucination to Slop: A Semantic Analysis of AI Devaluation. ResearchGate.

https://www.researchgate.net/publication/404169467_FROM_HALLUCINATION_TO_SLOP_A_SEMANTIC_ANALYSIS_OF_AI_DEVALUATION

発表者:三田弘美、発表日:2026年2月14日

2.2 社会的契機・使用文脈に注目する分類

2.2.1 slop(Merriam-Webster とAmerican Dialect Societyが “Word of the Year 2025”に選定)の派生語

cf.) 本学会誌15号(2023 年 2 月〜2025 年 6 月の新語報告)では “slop(AI slop)”〔AI が生成した低品質なコンテンツ〕を取り上げ、その語義変化と使用実態を整理している。

a) slopacolypse (slop+apocalypse)

和訳:スロポカリプス

例文:The “Slopacolypse” Is Coming: Why Andrej Karpathy’s 80% AI Workflow Is a Wake-Up

Call for QA

考察:Andrej Karpathy が提唱した「AI がワークフローの 80% を占める未来」への反応として、

テック系メディアや QA 業界の論考で用いられた表現である。AI 生成物(slop)が爆発的に

増加する状況を“終末”になぞらえて批判的に示す語として使われている。

出典:https://medium.com/@aslamhasankhan/the-slopacolypse-is-coming-why-andrej-karpathys-80-ai-workflow-is-a-wake-up-call-for-qa-6d6c8cc08715

発表者:三田弘美、発表日:2026年2月14日

b) slopfluencer (slop+influencer)

和訳:スロップフルエンサー

例文:Can I prove these authors didn’t write every word themselves? No. But I can tell you

this: it’s sloppy. And when your “thought leadership” is indistinguishable from a default

prompt response, you’ve become something new: a slopfluencer.

考察:デジタル経済研究者の Marek Kowalkiewicz 教授 が 2025 年12月に提唱した語である。

AI 生成の粗悪なコンテンツ(slop)を大量に発信する人物を揶揄する語として用いられる。

出典:https://marekkowal.substack.com/p/slopfluencers

発表者:三田弘美、発表日:2026年2月14日

2.2.2 生成AI・デジタル語彙 

本節では、前項の slop 派生語とは異なり、生成AIの使用実態や応答傾向に関わる語彙を取り上げる。AI の操作技法や応答の特徴を示す語が中心である。

a) (AI) Glazing

和訳:グレージング/生成AIがユーザーに対して、本質的な議論を避け、過度[過剰]に賞賛したり、協調的すぎる応答を行うこと

例文:Stop Fighting AI Glazing. Start leveraging it. Everyone’s panicking about AI “glazing.” Even if you’ve never heard the Gen-Z slang, you probably know what I’m talking about—that tendency of ChatGPT to shower you with praise, calling every mediocre idea “brilliant” and every half-baked thought “insightful.”

考察:glazing は本来 “glaze(艶を出す)” に由来する語で、Z 世代の間では 2021 年頃から SNS 上で「(誰かに)過剰に媚びる」「必要以上に褒める」といった意味のスラングとして使われていた。2025 年半ば以降、この語はメディア論や AI 倫理の分野で再解釈され、生成 AI がユーザーに対して過度に賞賛したり、お世辞を言ってご機嫌取りをする傾向を指す用語として注目され始めた。このような AI glazing は、ユーザーの判断を誤らせたり、批判的思考を弱めたりする可能性があるため、AI 倫理の観点から問題視されている。Cambridge Dictionary オンライン版では、glazing を “the tendency of AI programs to use excessive praise and flattery towards the user” と説明している。

出典:https://medium.com/@jeremyutley/stop-fighting-ai-glazing-a7cea3464659

https://dictionaryblog.cambridge.org/category/new-words/page/4/

発表者:三田弘美、発表日:2025年11月15日

b) (data) hydrate

和訳:AIアプリケーションにデータを流し込む/注入する

例文:Most of these companies today are using our product to deliver quality data to hydrate their AI and machine learning applications.

考察:原義の「水分補給をする」から転じ、AI/MLアプリケーションにデータを動的に注入し、最新かつ実用的な状態に保つ比喩的表現。ソフトウェア工学において静的なデータからオブジェクトを復元・展開する「data hydration」が語源である。一括して行う「学習(training)」とは区別され、稼働中のシステムへデータを供給する操作を指す。

出典:https://tv.nyse.com/videos/astronomer-andy-byron-on-ai-llms-data-driven-apps-more

発表者:山内圭、発表日:2025年11月15日

c) prompt repetition     

和訳:プロンプト反復

例文:Prompt Repetition Improves Non-Reasoning LLMs

考察: Google Research の研究によれば、AI に与えるプロンプト(質問や指示)をそのまま 2 回続けて入力するだけで、LLM の正答率が向上することが確認されている。これは、同じ内容を繰り返し読ませることで、モデルが指示をより正確に把握しやすくなるためと考えられる。繰り返しは指示の焦点を強調し、曖昧さを減らす働きを持つためである。特に、複雑な推論を必要としないタスク(非推論系)で効果が大きい。

出典:https://arxiv.org/abs/2512.14982

発表者:田中満佐人、発表日:2026年2月14日

2.2.3 経済・金融・政治語彙

a) Donroe Doctrine

和訳:ドンロー主義/トランプ版モンロー主義

例文:China may be the ultimate target of this “Donroe Doctrine”—Trump’s rebranding of a 19th-century doctrine that asserted Washington’s zone of influence in the Americas. But U.S. oil companies could become the unintended casualties.

考察:19 世紀のモンロー主義(米国が南北アメリカ大陸における勢力圏を主張した外交方針)を、ドナルド・トランプ大統領が自らの対外政策に重ね合わせて再解釈した造語である。初出は 2025 年 1 月 8 日、ニューヨーク・ポスト紙が一面で “The Donroe Doctrine: Trump’s vision for hemisphere” と報じ、トランプ氏のグリーンランド取得への意欲を伝えた記事に見られる。2026 年 1 月 3 日には、トランプ大統領自身がベネズエラにおける米軍作戦を説明する中で、西半球支配への決意を Donroe Doctrine と表現し、その後も継続して使用している。

cf.) 1823 年、モンロー大統領が欧州列強に対し、南北アメリカ大陸における米国の勢力圏を尊重するよう警告した外交方針。

発表者:山内圭、発表日:2026年2月14日

出典:Bousso, R. (2026, January 11). The ‘Donroe Doctrine’ could hurt U.S. oil firms. The Japan News, p.7.(原記事:Reuters オンライン版)

cf.) https://nypost.com/cover/january-8-2025/

b) Y’all Street

和訳:ユオール・ストリート

例文:1)Indeed, the city’s mayor, Eric L. Johnson, confidently predicts that “Y’all Street” will replace Wall Street as the beating heart of American business.

  2) What is Y'all Street? Get the 411 on the new Texas Stock Exchange

考察: 2025 年にテキサス証券取引所(Texas Stock Exchange, TXSE)が米証券取引委員会(SEC)の承認を受けたことを背景に、ニューヨークの Wall Street に対抗するダラスの新たな金融ハブを指して造語された語である。南部英語の “y’all(you all)” を用いることで、地域アイデンティティと経済的台頭を結びつけた社会言語学的に興味深い語形成となっている。

出典:https://news.microsoft.com/ja-jp/features/240509-ai-at-work-is-here-now-comes-the-hard-part/

  https://6amcity.com/tx/fort-worth/city/yall-street-texas-stock-exchange-explainer

発表者:山内圭、発表日:2026年2月14日

2.2.4 旅行・文化・ライフスタイル領域の語彙

a) (be) Coldplayed

和訳:浮気が露見する、浮気が公衆の面前にさらされる

例文:According to the internet (and lightly reworded by yours truly), to be Coldplayed is to be caught cheating—or behaving deceitfully—in a way that is so public, so dramatic, and so meme-worthy, it practically begs for its own documentary.

考察: 2025 年 7 月、英国バンド Coldplay のライブ中、米国 IT 企業 CEO が不倫相手と親密にしている様子が “キスカム” に大写しになり、不倫が発覚して両名が職を失った。この出来事を契機に、ネット上で “(be) Coldplayed” がスラング的に使われるようになり、公然と浮気が露呈する、あるいは人前で裏切り行為が暴かれる状況を指す語として広まった。

出典:https://gulfnews.com/entertainment/coldplayed-is-the-new-word-for-getting-publicly-cheated-heres-why-its-blowing-up-1.500205119

発表者:山内圭、発表日:2025年11月15日

b) choremance 

和訳:チョアマンス/買い物や掃除などの“日常の雑用(chores)”を一緒にこなすこと自体をデートとして楽しむ恋愛スタイル 

例文:“‘Choremances’ are about turning everyday tasks into intentional date time,” according to Michael Kaye, Dating Expert at Plenty of Fish. (Feb 5, 2026)

考察:買い物や料理など日常の雑用を共有することを“等身大のデート”として楽しむ価値観を背景に生まれた語で、コスト意識や無理をしない関係性を重視する近年の恋愛観を反映している。SNS を中心に話題化したが、特定の世代に限定されるものではなく、幅広い層で用いられている。“chore(雑用)+ romance” の構造が、日常の行為を親密さの源とみなすスタイルを象徴している。

出典:https://www.huffpost.com/entry/choremancing-mundane-romance_l_6965410ae4b0f3f37e7787be

発表者:三田弘美、発表日:2026年2月14日

c) destination dupes : destination(目的地)+ dupe(duplicateの略、似たもの・代替品)

和訳:デスティネーション・デュープス/代替観光地(人気観光地と似た雰囲気や体験ができ、より安価・混雑が少ない別の目的地)/穴場デスティネーション

例文:This year, some travelers will be swapping pricier, busier destinations for a lesser-known location with a similar vibe, like Albania instead of Italy. These are called “destination dupes” and are among this year’s travel trends.

考察:destination dupes は、2022 年頃からインフレ下で広まった dupe culture(高価なブランド品に似た手頃な代替品を肯定的に紹介する文化)が旅行分野に応用された語である。パンデミック後の旅行需要回復に伴い、世界各地でオーバーツーリズムが再び問題視される中、混雑回避・コスト削減・環境配慮といった価値観が重視され、人気観光地に代わる「似た体験ができる安価で混雑の少ない代替地」を選ぶ旅行スタイルを指す語として注目された。TikTok で若年層が火付け役となったものの、物価高の影響を受けるミレニアル世代を含む幅広い旅行者に受け入れられ、SNS を通じて急速に広まっている。

出典:https://www.marketplace.org/story/2025/06/30/destination-dupes-offer-glam-vacation-vibes-at-a-fraction-of-the-price

発表者:三田弘美、発表日:2025年11月15日

2.2.5 若者文化(TikTok・SNS 発)・恋愛関連語彙

a) the ick

和訳:(恋愛相手や状況・事象に対して)突然の嫌悪感/突然の生理的拒絶反応 

例文:1) A: I still like him. I don’t have the ick. B: Sweetie, you can’t fight the ick.

2) You’ve Got ‘The Ick.’ Is Your Relationship Doomed? Noisy eating, clapping when a plane lands — experts explain how to handle sudden feelings of disgust.

考察: the ick は、もともと “Ick!”(「おえっ!」)に見られる嫌悪を表す感嘆詞に由来する。2017 年、英国の恋愛リアリティ番組 Love Island の “When you've seen a boy, and got the ick, it doesn't go.” を契機に、恋愛相手への急激な冷めを指す語として知られるようになり、その後 TikTok などの SNS で普及した。2024 年 7 月には Cambridge Dictionary が本語を “a sudden feeling that you dislike someone or something or are no longer attracted to someone because of something they do” と定義している。

出典:1) 米国ドラマ「Nobody Wants This」S1.E6 ∙ The Ick

https://www.facebook.com/NetflixANZ/videos/nobody-wants-this-joanne-gets-the-ick-netflix/1197838321444989/

2) https://www.nytimes.com/2025/06/23/well/the-ick.html

  3) https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/ick?q=the+ick

  4) https://www.dictionary.com/culture/slang/the-ick

発表者:東海林康彦、発表日:2026年3月15日

b) skibidi

和訳:最高の[やばい]/最低の[最悪な]/意味のない言葉(としての遊び)

例文:Skibidi is defined in the dictionary as "a word that can have different meanings such as 'cool' or 'bad', or can be used with no real meaning as a joke". An example of its use is "What the skibidi are you doing?"

考察:Skibidi は、もともと 2023 年に「DaFuq!?Boom!」がYouTubeに投稿した “Skibidi Toilet” シリーズに関連して広まった語で、その後 TikTok を中心にネットミーム化したスラングである。語自体は意味を持たない遊び言葉として使われるようになり、近年では強意語(「最高」「最悪」など)や “cool(かっこいい)” の代替としても用いられる。2025 年 8 月には Cambridge Dictionary オンライン版に掲載された。

出典:https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/skibidi

  https://www.bbc.com/news/articles/ce93ygv4zzlo

発表者:東海林康彦、発表日:2026年3月15日

c) relation sipping

和訳:リレーション・シッピング(日常の小さな気づかいや“ちょっとした優しさ”を大切にする、積み重ねる恋愛スタイルのこと)

例文:Gen Z Ditches Grand Gestures for ‘Relation-Sipping,’ Pepsi Research Finds

The UK’s gen z daters are prioritising ‘Relation-sipping’ - the new love language which prioritises smaller, sweeter little “sips” and more personal moments over sweeping gestures.

考察:Pepsi UK/Irelandが2026年バレンタインデー前にデートアプリ『Thursday』と共同で実施した調査の中で提唱した造語(トレンドワード)である。もともと若者の間にあった「過度な演出よりも、日常の思いやりの方が嬉しい」という心理を、自社商品の “sip(少しずつ味わう)” に引っかけてキャッチーに言語化したもので、“sip” の比喩がゆっくり丁寧に関係を育てる恋愛観を象徴している。

出典:https://lbbonline.com/news/Pepsi-Gen-Z-Relation-Sipping

発表者:三田弘美、発表日:2026年2月14日

3. 結語

新語は社会や技術の変化とともに日々生まれ、その動向を追う作業は生成 AI の普及によって一層複雑になっている。語の定着度や使用範囲を把握するには、従来の検索調査に加え、AI を活用した分析手法も重要性を増している。本稿で扱った語群は、AI 時代の語彙変化の多様性を示す一例であり、今後も使用実態に即した観察と記録を継続していきたい。

4. 謝辞

本稿執筆の機会を賜りました編集委員の皆様に心より感謝申し上げます。また、日頃よりご指導くださる本学会および新語・語法研究分科会の皆様には、深く御礼申し上げます。さらに、田中満佐人会員、東海林康彦会員には新語のご提供をいただき、分析の契機となりましたことを、ここに深く感謝申し上げます。

1.上記内容は、上記日時に発表したレジュメ・資料をもとに、加筆・訂正したものである。

参考文献

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Chyrvonyi O. S (2024). From Hallucination to Slop: A Semantic Analysis of AI Devaluation.

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三田弘美(2025). 新語研究報告(2023 年2月〜2025 年 6 月). 『Media, English and Communication』, 15, 87–98.

書誌情報

掲載誌MEDIA, ENGLISH AND COMMUNICATION, No.16 (2026, pp. 83-94)

発行元:一般社団法人 日本メディア英語学会

表 題:新語研究報告(2025年7月~2026年6月)

著 者:三田弘美(口語英語研究所)、山内圭(新見公立大学)

要 約:新語は、個人の認識の変化や社会・文化の動向、さらには言語体系の変容が交差する中で生まれ、既存の語彙では捉えきれない現象や価値観を言語化する役割を担う。本稿は、2025年7月から2026年6月にかけて新語・語法研究分科会で報告された新語(時事語を含む)の中から、記録・分析に値する語を選出し、各語の語形成・出現背景・語彙的広がりに加え、使用文脈における簡潔な言説的考察を試みる。これにより、現代英語における新語出現の具体例を通じて、語彙動向の一端を体系的に記録・分析することを目的とする。

キーワード:新語、社会語彙・文化・時事語、生成AI・デジタル語彙、現代英語

論文カテゴリー:寄稿(報告)

CCライセンス:CC BY-NC 4.0

執筆言語:日本語

受理日:2026年6月28日

© 2026 Hiromi Sanda & Kiyoshi Yamauchi

 
© 2026 Hiromi Sanda & Kiyoshi Yamauchi

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