メディア・英語・コミュニケーション
Online ISSN : 2436-8016
Print ISSN : 2186-1420
最新号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 小林 ゆみ
    2025 年15 巻 p. 1-24
    発行日: 2025/09/22
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、日本の偏差値50前後の私立大学に通う大学生178名を対象に、英語学習における不安の要因を明らかにし、さらに不安軽減につながった要因や授業内アクティビティを検討することを目的とした。偏差値50前後の学生層は、正規分布上のボリュームゾーンに位置し、日本の大学生の平均像を把握する上で有効であり、英語教育の改善に資する知見を得られると考えられる。また、Alrabai (2015)の研究を参考に、不安軽減に有効とされる6項目の指導方法を授業に導入し、学習者の不安の変化を調査した。調査には外国語教室不安尺度(FLCAS)日本語版(Yashima et al., 2009)と自由回答記述質問紙によるミックスメソッドを採用した。主要な不安要因として「間違うこと」、「コミュニケーション」、「言語知識」、「授業理解のつまずき」、「他者との比較」等が挙げられた。一方、「授業方略」、「授業の雰囲気」、「教員の指導特性」、「教員の態度・姿勢」などが不安軽減に影響していることが明らかになった。本研究は、学習者が「間違えても大丈夫」と感じられるような雰囲気づくりが、英語教育において重要であることを示した。
  • 福本 明子, 石原 知英, 宮原 淳, 樗木 勇作
    2025 年15 巻 p. 25-40
    発行日: 2025/09/22
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、EUのAI規制法に対して日本の報道機関がどのように語っているのかを明らかにするため、9本の社説記事を対象として、批判的談話分析における正当化の文法の枠組み(フェアクラフ, 2003/2012)と、ナラティブ分析における物語批評の手法(Foss, 1996, 2009)の2つを用いた検討を行った。その結果、批判的談話分析の視点からは、AIのリスクに対応する必要がある、営利企業の自主規制では不十分であるといった合理化に加えて、欧米で規制が始まっている、社会的な不安が広がっているといった権威化と、民主主義を守る、著作権や文化を守るといった倫理的評価を組み合わせながら、「法規制をすれば安全な社会が実現できる」という神話作成によってAIの規制を正当化していることが明らかとなった。また、ナラティブ分析の視点からは、「信頼できる情報」、「権利や原則」、「規制と開発・利用のバランス」という3つのテーマが、日本国民や諸外国とIT企業を登場人物として登場させ「守られるべき『安全』」という大きな物語を醸し出すことでAIの規制を正当化していることが明らかになった。
  • 石上 文正, 越智 有紀, 仲西 恭子
    2025 年15 巻 p. 41-62
    発行日: 2025/09/22
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では映画『クレイマー、クレイマー』の時間・空間の記号論的分析を行う。映画はマルチモーダル・テクストであり、それぞれのモードがいかに統合されているかを明らかにするのが本稿の研究目的である。Kress and van Leeuwen (2021)は時間と空間の構成に関わる三つの構成原理(情報価値、フレーミング、卓越性)によってテクストが統合されると言う。また、ハリデー(2001)は主題構造もテクストの統合性を生み出しているという。私たちは分析によって、主題構造と構成原理が映画テクストの統合性をいかに生み出しているかを明らかにした。前者は映画の中の各章の始めに提示され、それに沿った具体的出来事が次々に発生し、テクストの統合性が図られる。時間的情報価値によって、各章の始めと終わりに、それぞれ主題構造と要約を設定でき、空間的情報価値は、「上=理想」、「下=現実」のように空間を価値づけ、構造化している。フレーミングに関しては、各章の終わりに、空間的記号を置き、各章の終わりを示し、章の統合性を高めている。卓越性には、ストーリー展開をある方向に導く力があり、その力によって統合性が構築される。
  • 南津 佳広, 金井 啓子, 吉田 国子, 春木 茂宏
    2025 年15 巻 p. 63-86
    発行日: 2025/09/22
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は、言語教育における翻訳(TILT)の枠組みの中で、学習者がAIツールを用いて日英字幕を作成する際、どのような認知的階層で判断を行うかを分析したものである。AIが流暢な出力を生成することは利点である一方、「客観性バイアス」を誘発し、学習者が基本的な文法・構文ミス(第1層)を見過ごす原因となり得る。日本の大学生27名を対象とした質的事例研究では、言語的正確性、関連性理論とスコポス理論に基づく語用論的機能、そしてVenutiの枠組みによる文化的適応を統合した3層認知モデルを適用した。分析の結果、低次層で失敗すると高次層の判断に悪影響を及ぼす「カスケード効果」が明らかになった。主な知見として、学習者が語用論的含意(第2層)を検出することに困難を示すことや、文化的ニュアンスが中立化されてしまう「文化的平坦化」(第3層)が生じることが挙げられる。学習者は表層的な流暢さを評価することから、より深く再文脈化することへと視点を移行させることに苦労することが多かった。本研究で提示したモデルは、AI支援翻訳における認知的課題を診断する枠組みとして機能することが示された。これらの知見は、批判的AIリテラシーを育成する上で重要な示唆を提供する。
  • 三田 弘美
    2025 年15 巻 p. 87-98
    発行日: 2025/09/22
    公開日: 2025/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    新語は、個人の心理変化、社会構造や文化の変化、言語体系の動態が交差する中で生み出され、既存の語では十分に捉えきれない現象や価値観を言語化する働きを担う。本稿は、2023年2月から2025年6月にかけて新語・語法研究分科会で報告された新語(時事語を含む)の中から、記録・分析に値する語を選出し、各語の語形成・出現背景・語彙的広がりに加え、使用文脈における簡潔な言説的考察を試みる。これにより、現代英語における新語出現の具体例を通じて、語彙動向の一端を体系的に記録・分析することを目的とする。
feedback
Top