2000 年 20 巻 4 号 p. 327-333
情報化社会の波は,医療分野でも様々な局面に押し寄せている.そこでは,従来は専門家個人や組織が保有していた情報を外部化し,共有することによる情報の流通が,医療の専門家以外にまで広がる傾向にある.このような状況で今後の医療情報の在り方を考えるには,まず市民や患者による医療情報への関心の状態(意識)を実証的に把握することが必要である.
そこで,わが国の主要なマス・メディアの一つである朝日新聞に記述されている医療情報関連記事の内容分析を行い,情報の内容,情報処理形態,発信者と受信者等がどのように意識されているかを調査した.その結果,(1) 「医療」や「情報」に比べ「医療情報」についての社会的関心が急速に高まりつつある,(2) 患者個人情報について医療従事者と患者間で,よりパーソナルなコミュニケーションが望まれている,(3) 電子メディアによる情報伝達に注目が集まっている,等を明らかにすることができた.