2003 年 23 巻 5 号 p. 383-388
近年の情報技術の発達に伴い,情報世界がコンピュータディスプレイという旧来の境界面を超えて,現実世界に直接的に影響を及ぼすことが可能になりつつある.本稿では,複合現実感,ユビキタスコンピューティング,パーベイシブコンピューティングなどの技術の適用によって,医療がどのように変化しうるのかについて論じる.複合現実感技術の導入によって,遠隔医療や内視鏡下手術などにおいて術前検討に用いた情報によるナビゲーションが可能になるとともに,臨床手技教育の新たな形態を創造することが可能になる.また,パーベイシブコンピューティングの適用により,あたかも体内に病院を埋め込んだがごとく,通常の日常生活を送りながら継続治療を受けることも可能になると考えられる.