抄録
診療所向け電子カルテが真正性・見読性・保存性を担保するために取っている具体的方法について,電子カルテベンダ26社に対して質問紙調査を行い,11社から回答を得た.その結果,痕跡を残さずにデータベースを直接書き換えられるものなど,真正性が保てず事実上診療録等の改ざん等が可能な電子カルテも存在することが明らかになった.その他,法令上定められた期間データを保存できない可能性があるなど,保存性についての問題点も残っており,早急に改善を行う必要性が示唆された.なお,改ざん等を防ぐために電子署名やタイムスタンプを用いている事例も少数ながらみられた.真正性や保存性を確保する手段としてこれらを用いるのは有効ではあるが,運用が難しく診療所に普及させるのは困難である.そのため,地域医師会など信頼できる第三者がアーカイブを設け,そこに預託できる仕組みなどを検討することも必要である.