医療情報学
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春季学術大会論文
RFIDを用いた病棟業務の定量的計測方式の研究
斎藤 勇一郎長谷川 高志鈴木 浩岡 正俊酒巻 哲夫
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2010 年 30 巻 1 号 p. 3-9

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抄録
1. 背景
RFIDの病院への応用は、医薬品管理などに有用と考えられてきたが、潜在的可能性はより高く、病院スタッフヘの適用で、病院マネジメントに有効なデータを収集、活用できると考えられる。そこで我々は医療スタッフ、病棟機器に無線タグをつけて、業務行動の範囲や回数、時間などのデータを収集、分析して、病院マネジメントに活用する手法の研究を開始した。
2. 目的
看護師を中心とした病棟スタッフ及び病棟の機器(心電計、車いす、カート等)に、RFIDによる無線タグを持たせて、業務時の位置と時刻のデータを収集して、病棟業務状況の分析、病棟運営に有用な情報の抽出の実証を研究の目的とした。
3. 方法
(1) 無線タグによる通信実験を行った。部屋への受信装置の取り付け位置と無線タグの位置の相互関係により、電波受信の可否や精度の基本的特性を調査した。この実験により、病棟内の受信装置の有効な取り付け箇所を選択した。
(2) 上記調査の結果を受けて、実験に協力いただいた群馬大学医学部附属病院循環器内科病棟で一週間の間、病棟の全看護師および重要機材に無線タグをつけて、位置・氏名(機器名)・時刻のデータ収集を行った。そのデータについて、下記の分析を行った。
① 特定時刻の病棟内の看護師所在のスナップショット
② 各病室の看護師訪問頻度・滞在時間
③ 時刻順の看護師所在位置
④ 機器の利用状況と利用箇所
4. 結果
・頻繁に活動し行動範囲も大きい看護師なので、アクティブタグと同様に扱えるZigBeeを選択した。また受信装置は一病室に一台とした。
・収集したデータを分析して、ナースステーションから近い病室ほど訪問頻度や滞在時間が大きくなることを定量的に捉えた。
・また業務時刻と位置のスナップショットも得られた。準夜帯や深夜帯など看護管理上で捉えにくかった時間帯など部屋別もしくは全部屋の巡回状況などを把握できた。
5. 考察
・従来、看護管理者が定性的に捉えていた看護実施状況を定量的に捉えることが可能になり、看護配置や看護必要度を定量的に評価することが可能になった。当然ながら、RFIDで得られる情報は、業務内容や目的などの業務特性は含まれないが、電子カルテやオーダーエントリシステムを導入している施設ならば、指示情報や看護記録などと照合が可能であり、より詳細な分析が可能となる。
・クリティカルパスや業務手順の計画に対しても、実働状況を反映できる可能性がある。さらにDPCの評価に対して、実働情報を比較対照することも期待できる。
・看護情報システムと結合すれば、時刻・位置情報と記録入力を支援するなど、看護記録の深化にも応用の可能性がある。
6. 結論
病院マネジメントにRFIDを有効活用できる可能性が示された。更にデータ収集を重ねて、分析手法の本格的開発を進めたい。
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© 2010 一般社団法人 日本医療情報学会
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