医療情報学
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原著-技術論文
GISを利用した地域包括支援センターへのインフルエンザ施設別発生状況の情報発信の試み―横浜市立中学校の学区域を利用した感染症流行情報提供システムの構築―
青野 実野﨑 直彦大久保 一郎後藤 寛
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2019 年 39 巻 3 号 p. 119-132

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抄録

 厚生労働省は,2025年問題に向けて,地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進している.その中では,医療・介護連携による,地域包括支援センターの体制の整備が挙げられている.一方で,高齢者等が共同で生活する場で,インフルエンザによる集団発生が散見されている.地域包括支援センターでも予防に向けた取り組みがされているが,各地域におけるインフルエンザの情報発信については,整備されるまでに至っていない.筆者らは,新たに横浜市立中学校の学区域を利用して,インフルエンザ感染症の流行状況を地図上に可視化する仕組みを構築した.地図化したインフルエンザの流行状況は,インフルエンザ施設別発生状況(学級閉鎖等)の情報を利用して,従来の登録システムをカスタマイズした,感染症流行情報提供システム(以下新登録システム)として構築した.この新登録システムにより,中学校区域ごとの患者数を集計することが可能となり,定点当たりの患者報告数や地域包括支援センターの情報と合わせて地図化・グラフ化することで,これらの情報を一元的に可視化したPDFを作成することができた.なお,地域包括ケアシステムの構想では,日常生活圏域を中学校学区域と想定しており,この情報を発信することで,各地域の流行状況が把握しやすくなり,感染予防の啓発に繋げられると考える.

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© 2019 一般社団法人 日本医療情報学会
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