2025 年 45 巻 4 号 p. 187-192
【セッション抄録】
日本医療情報学会医療情報技師育成部会は,2003年の発足後20余年にわたり医療情報技師は約25,000人以上,上級医療情報技師は約500人以上を認定してきた.また,日本医療情報学会も1983年に発足して以降,数々の学会員の研究や議論の場を提供してきた.それらの結果,医療情報技師や学会員の多くが在籍する中大規模病院やベンダーの電子化は一定の範囲内で平滑に進み,また2020年からのパンデミックにおいても各施設における対策に貢献してきた.これらは時代が変わっても,学術学会として揺るぎないコア活動であり続けるだろう.
一方,その間に日本ではバブル経済を経て「失われた30年」と呼ばれる長い低迷が続き,超少子高齢社会を迎えて,格差社会が生じている.東日本大震災を代表とする数々の自然災害を被り,2020年からは新型コロナのパンデミックに悩まされた.2022年からはウクライナやガザ地区で火力抗争が勃発し石油,食料,半導体などの流通に影響を及ぼしている.
情報社会においては1990年代にインターネットが勃興し,PCに続いてスマホが普及してきた.2010年代からは「ビッグデータ活用」「DX」が期待され,深層学習,特に生成AIが台頭してきた.近年は医療施設のランサムウエア被害も報告されるなど負の側面も目立つ.
そのような激動の日本社会において,医療領域では2000年代には電子カルテ,2010年代にはPHRの普及が始まり,医療DXはキーワードとなり,政府主導の医療DX政策が進められてきたが,そのいずれもが必ずしも充分な成果を上げているとは言えない.
2024年6月の第28回日本医療情報学会春季学術大会(千葉)の緊急企画「医療DX推進体制整備加算・診療録管理体制加算がもたらすインパクト」では,JAMI学会員や医療情報技師の活動の場を,従来の自施設・自企業という「点」から,地域・社会という「面」へ拡大することが提唱された.さらにこれらの人材以外にも,日本医療情報学会が関連する領域では,医療データの二次利用のための人材,医療情報規格の国際化に関する専門性を有する人材の不足が判明しており,学会が今一度人材育成に関して長期的視野を持って,行政などとも協力して戦略的に解決する必要がある.このように学会の役割も時代に応じて変化するべきであろう.
本企画ではこれらの議論を受け継ぎ,1)地域社会における医療DX政策や情報セキュリティ実装への支援,2)健康・医療領域に蓄積するリアルワールドデータの活用支援,3)日本発の医療情報規格の知財化やビジネスモデル化を軸とした国際標準規格化推進,の三軸で人材育成・活用を進めることの重要性について議論し,JAMIの役割を再考したい.