2009 年 32 巻 2 号 p. 61-66
無歯顎の上顎骨切除症例の咀嚼能力に関する報告はあるが,咀嚼混合能力に関する報告はいまだない.そこで本研究では,無歯顎の上顎骨切除症例の咀嚼混合能力について調べた.
選択基準および除外基準を満たした無歯顎の上顎骨切除患者10名が被験者として選ばれた.そして4つのグループ(アラマニー分類I,II,IV,VI)に分けられ,咀嚼混合能力試験を用いて咀嚼混合能力(MAI)の評価を行った.
結果より,分類IIのMAIは,いずれの分類よりも高値であった.分類IVにおいて,下顎残存歯数の減少に伴って,MAIの低下が認められた.分類VIにおいて,腓骨再建された被験者10のMAIは,ほかの被験者のMAIより高値であった.分類VIの症例において,遊離腓骨皮弁による再建が咀嚼混合能力の向上につながることが示唆された.
咀嚼混合能力試験を用いて無歯顎の上顎骨切除症例の咀嚼混合能力について客観的に調べることが可能であった.