抄録
本研究では,付加体中の緑色岩類から発見された中古生代の海洋域の地下微生物による岩石組織について岩石学的に検討を行った.北海道常呂帯緑色岩中の微生物による組織は2つのタイプに分けられる.一つは枕状溶岩のガラス質急冷縁部,もう一つは熱水変質作用を受けた玄武岩質ハイアロクラスタイトである.前者は粒状タイプと管状タイプに区分される.後者の熱水変質岩では,球体もしくは楕円体が連結した管状組織によって特徴付けられる. 一方,四国西部柳谷地域の緑色岩中の菌類化石は塊状玄武岩中の方解石もしくは緑泥石プール・脈中から発見された.菌類の菌糸体は弧状で,しばしば分岐している.今回,低変成度の付加体緑色岩中に微生物による組織の形態が良好に保存されていることが明らかになった.また,常呂帯の熱水変質岩中の微生物は,現在知られている生存温度限界を超える条件で生存していた可能性がある.