主催: 日本岩石鉱物鉱床学会
近年スラブ内・マントルウェッジ中における地震の発生機構として脱水不安定が有力視され、蛇紋岩の脱水反応が注目されている。蛇紋岩は一括して扱われることが多いが、実際の全岩化学組成・蛇紋石固溶体組成は幅広く、大規模地震では断層が広い化学組成を持つ領域にわたり形成されうるし、逆に蛇紋石の安定領域が断層面の伝播範囲を規定しうるかもしれない。こうした視点から地震の発生機構の詳細を検討するには,これまでの相平衡データも十分でなく、鉱物学的視点から明らかにすべき素過程は数多い。本研究では各2種類の組成を持つ天然・合成試料を用いた実験によりまず蛇紋石の安定領域が化学組成(Fe‐Mg組成比)によってどう変化するかを詳細に決定することを目的としている。ゲルを用いた実験では平衡に達するのが速く、蛇紋石を経ずに分解後の鉱物組合せを合成できるが、天然の蛇紋岩試料を用いた実験は分解生成物の組織を考察する上で重要である。