2021 年 27 巻 p. 35-48
本稿では、ネパールの海外留学で大きな役割を果たす国際教育斡旋業者と日本の日本語学校の協働関係に着目し、ネパール人の日本留学がどのような移住インフラストラクチャーによって生み出されているかを解明する。ネパールには千以上の斡旋業者があるが、日本留学を手掛けるエージェントは日本語学校を併設し、フェイスブックで集客している。日本留学希望者のリクルートのために、日本語授業を年4回ある入学時期に連動させる独自の留学システムを考案している。一方日本の日本語学校関係者による業務提携、学校説明会、入学面接のためのネパール訪問などは、自校のプロモーションや貴重な情報共有の場になっている。斡旋業者が留学希望者と教育機関を媒介するのは、日本の日本語学校のマーケティング能力が脆弱で、集客力に長けたエージェントに依存せざるを得ないと指摘されてきた。しかし、積極的な留学生獲得に乗り出すなど、日本語学校の果たす役割は想像以上に大きく、ネパール人留学生のリクルートは独自のインフラストラクチャーによって形作られていることを理解する必要がある。