2011年に海洋研究開発機構で導入された可搬式マルチチャンネル反射法地震探査(可搬式MCS)システムでは,運用を開始して以来,ストリーマーケーブルの複数のアクティブセクションに同時に現れるノイズ(等走時ノイズ)が発生している.この等走時ノイズは,スクリューの回転あるいは電源系に起因して周期的に現れる場合,およびランダムに発生する場合がある.ノイズの発生はストリーマーケーブルの電気的性質に起因すると推定されているが,現在のところ根本的な解決には至っていない.中でもランダム型の等走時ノイズは,反射波シグナルより強い振幅かつ反射波シグナルに近い周波数帯域で現れることが多いため,重合後データに対しての悪影響が大きい.可搬式MCSデータの処理においては等走時ノイズのみを抑制し,シグナルを残すようなデータ処理法を適用する必要がある.等走時ノイズの速度特質を利用し,速度フィルターの一種であるF-Kフィルター(周波数・波数領域フィルター)の適用を試みたところ,完全に除去することはできないものの,ノイズの影響を抑制することができた.