医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
原著
硝子円柱出現頻度とBNP値の相関についての検討
服部 亮輔原 美津夫守 さと子南 緑青木 信子三上 千映佐野 和三
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 64 巻 1 号 p. 7-13

詳細
抄録

尿沈渣で観察される硝子円柱は,尿細管上皮から分泌されるTamm-Horsfallムコ蛋白と少量の血漿蛋白とがゲル状に凝固沈殿した成分である。その出現は尿細管腔が一時的に閉鎖されていたことと尿の再灌流があったことを意味する1)。脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は,主として心筋から心筋張力増大に伴い分泌され,血中BNP濃度は,心不全,高血圧症,虚血性心疾患などの循環器系疾患の重症度判定,治療効果判定,生命予後推定,心疾患のスクリーニング検査として有用である2)。硝子円柱の出現は前述の通り尿細管腔が一時的に閉鎖されていたことと尿の再灌流があったことを意味するが,日常尿沈渣検査において,腎疾患を伴わない心不全に代表される循環器科患者の尿中に硝子円柱が出現する症例を多数経験している。そこで今回我々は,循環器疾患における硝子円柱出現の臨床的意義の解析を目的として検討を行った。すなわち,循環器科受診患者群において,腎疾患による硝子円柱の出現を除外するため,腎機能低下患者を除外する条件を5つ設定し,各条件における硝子円柱の出現と心不全のマーカーであるBNPとの関連性について検討を行なった。その結果,硝子円柱の出現率がBNP値により推定される循環器疾患の有無や,重症度の推定に有用と思われる所見が得られたので報告する。

著者関連情報
© 2015 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top