医学検査
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原著
  • 中村 広基
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻1 号 p. 1-9
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    病理組織標本作製工程の中で,薄切工程は重要な工程であるにもかかわらず,用手的な方法が主流である。そのため,薄切切片の厚さをコントロールする技術は病理検査技師にとって重要な要素である。しかし,切片厚を評価する方法は目視に頼っているため,判断も習熟度により差が発生する。この問題を解決するため,切片厚を測定する技術がいくつか発表されているが,高額な機器を用意する必要があるなどの問題点があり普及していない。この研究にて,ヘマトキシリン単染色を行った標本から算出したCIE L*a*b*表色系の値が,3次元空間内で直線に近似し,切片の厚さと相関を認めたことにより切片厚の比較に応用できると考えた。この比較方法は,画像から色値を抽出する必要があり,それを簡易にするため,自製の染色標本色解析アプリケーションを用いた。この方法は作業負担が少なく安価である特徴を持つため,定期的な計測が可能であり薄切厚の標準化や薄切技術向上に寄与する。

  • 細羽 恵美子, 石塚 敏, 笹野 まゆ, 小林 悠梨, 安尾 美年子, 三浦 ひとみ, 布田 伸一, 石田 英樹
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻1 号 p. 10-22
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    臓器移植においてレシピエントが産生するドナー特異的抗体(donor specific alloantibodies; DSA)は,移植後に引き起こす抗体関連型拒絶(antibody-mediated rejection; ABMR)に関与する危険因子である。DSA検出法には,リンパ球直接交叉試験(complement-dependent cytotoxicity cross-match; CDC-XM),リンパ球間接交叉試験(flow cytometry cross-match; FCXM)などがある。ドナーリンパ球を使用するCDC-XMとFCXMは,レシピエント血清中の補体活性を失活させることで補体因子の影響を受けない正確な測定結果を可能とする。本研究では,レシピエント血清中の非働化処理法の条件についてCDC-XM,FCXM,1/2.5Mayer法を使用して基礎的検討を行った。本研究の結果より56℃ 3 minまたは60℃ 2 minにおいてレシピエント血清中の非働化処理が有効であることを確認した。今後,ドナーリンパ球を使用するCDC-XM,FCXMは,本研究で得られた非働化処理法の条件に基づき,レシピエント血清を事前処理することで測定結果に影響を及ぼさない正確な検査精度が担保できると考えられる。

  • 広重 和哉, 敷地 恭子, 嶋本 早希, 堤 庸晃, 窪田 直人, 丸田 陽裕, 國宗 勇希, 西岡 光昭
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻1 号 p. 23-29
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    Mycobacterium abscessus complex(MABC)は亜種によりマクロライドに対する感受性が異なるが,薬剤感受性検査による誘導耐性の確認には14日を要するため,早期に適切な治療を実施することが困難である。本研究は,当院で分離したMABC 19株を対象に,亜種の同定,マクロライド耐性に関与する遺伝子の解析,およびクラリスロマイシン(CAM)の最小発育阻止濃度(MIC)測定を行い,早期治療介入の可能性を検討した。M. abscessus subsp. abscessusと同定された10株はすべてerm(41)の欠失を認めず,そのうち9株は14日目でCAM耐性となった。一方,CAM感性となった1株はerm(41)に28T>Cの変異を認めた。CAM耐性を示した9株中2株は,判定3日目でCAM耐性を示しており,いずれも23S rRNAをコードするrrlに点変異を認めた。M. abscessus subsp. massilienseと同定された9株では,全株でerm(41)の部分欠失を認めた。これらの株は3日目時点でCAM感性を示し,14日目でもMICは不変または1管の上昇にとどまり,すべて感性のままであった。遺伝子解析は数日で実施可能なため,薬剤感受性検査と並行することで,マクロライド耐性を早期に推定でき,より適切な治療方針の決定に寄与する可能性が示唆された。

  • 伊藤 雅貴
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻1 号 p. 30-40
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    単一クローン性免疫グロブリン(M蛋白)は,多発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症,悪性リンパ腫といった腫瘍性疾患と関連するため,診断的価値が高い。今回,精製水とリン酸緩衝生理食塩水を用いた自動分析装置によるM蛋白検出法の実証実験を試みた。対象はルーチン検査検体12,650例において,本検出法カットオフ値0.073以下と設定し,実証実験では12,650例中カットオフ値以下139例,また臨床への適用検討では12,650例中IFEの依頼があった155例について解析をした。実証実験において,Mピークあり群で多発性骨髄腫,原発性マクログロブリン血症,MGUS,化学療法が有意に高率であった。本検出法が契機となり,新たにM蛋白患者11例を拾い上げた。臨床への適用検討において,性能特性の比較では,本検出法の診断精度80.0%,陽性的中率72.0%,陰性的中率81.5%と,TP,A/G比よりも高い結果であった。TPカットオフ値9.0 g/dL以上,A/G比カットオフ値1.0以下でどちらかが陽性となった患者全員をM蛋白陽性と考えた場合,感度31.0%,特異度69.0%であった。一方,本検出法を加え同時に実施し,3項目いずれかの結果が陽性となった患者全員をM蛋白陽性と考えた場合,感度59.5%,特異度64.6%と感度が大きく向上した。本検出法1検体あたりのコストは0.003円であった。本検出法は潜在的M蛋白を検出する可能性があり,TP,A/G比に比べ高い診断精度を持つことから,初期段階のM蛋白検出として有用である。

  • 塚原 祐奈, 井川 紫帆, 有村 春菜, 柳館 佳代子, 兼松 健也, 島本 亜耶, 中村 文子
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻1 号 p. 41-46
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    動脈硬化は,心疾患や脳血管障害の要因であり早期の診断が必要である。当センターでは動脈硬化の評価にABI/baPWVを測定しているが,仰臥位を保てないなどの理由で検査を中止する場面を経験する。そこで,体位の違いがABIやbaPWVの測定値に及ぼす影響を調査し,座位で測定した値を補正する方法を検証した。健常ボランティア19名を対象に仰臥位,足曲(仰臥位で両足を約130度曲げた姿勢),座位でABI/baPWVを測定した。さらに,健常ボランティア50名を対象にbaPWVと体組成項目との関連について有意差検定を行い,仰臥位測定値の補正法を検証した。ABI/baPWVともに仰臥位と足曲に有意差はなかったが,座位は仰臥位に比べ高値であった。ABIは 座位の値に下肢血圧比(仰臥位/座位)0.818の乗算によって,全例が仰臥位値の2SD内に分布した。baPWVは,年齢と体脂肪率で有意な負の相関が認められた。仰臥位のbaPWVを目的変数,座位baPWV,体脂肪率,年齢を説明変数として重回帰分析を行った。得られた回帰式で補正すると,全例が仰臥位値の1SD内に分布した。ABIおよびbaPWVは,両検査とも足曲げ姿勢での測定が可能であることを確認した。また,座位で測定した場合でもABIは0.818係数を乗算すること,baPWVは体脂肪率,年齢により補正できる可能性が示唆された。

  • 有村 春菜, 兼松 健也, 塚原 祐奈, 関根 晴香, 井川 紫帆, 柳館 佳代子, 島本 亜耶, 中村 文子
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻1 号 p. 47-52
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    ホルター心電図検査は,日常生活の中で起こりうる心イベントの検出を目的に長時間連続して測定する。本邦の高齢化に伴い,心疾患のハイリスク群である高齢者におけるホルター心電図検査の有用性は今後さらに高まると考えられる。本研究では,高齢者におけるホルター心電図検査の所見とその発生状況,患者背景について調査し,転帰とその関連性を検証した。対象は2021年から2023年に当医療センターにおいて24時間ホルター心電図検査を実施した65歳以上,かつペースメーカー未装着の外来患者905名である。検査後に侵襲的治療に至った要因を,自覚症状や検査所見等から統計解析した。検査後に侵襲的治療を行った51例と行わなかった860例について比較したところ,侵襲的治療群では性別(男性),めまい,3秒以上の心拍停止,新規ST-T変化,最大心拍 ≥ 150/分,最小心拍 ≤ 40/分,心房細動/粗動(発作性含む),房室ブロックが有意項目であった。侵襲的治療を目的変数として多重ロジスティック解析した結果,新規ST-T変化,3秒以上の心拍停止,めまい,房室ブロックの4項目が有意項目として抽出された。めまいは高齢者の心イベントの重要所見であることが示され,他の3項も緊急度の高い所見に一致した。高齢者では症状を訴えられない患者や特異症状を示さない場面も多くなる。重大な転帰に至らないために,検査室では積極的にホルター心電図検査の有用性を示すことが肝要である。

  • 村越 大輝, 青地 祐, 久住 裕俊, 白川 るみ, 薗田 明広
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻1 号 p. 53-58
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    シグマメトリクスは,検査の精度と正確さを総合的に判断し,品質レベルをシグマ値として定量的に評価することができる。シグマ値は総許容誤差と外部精度管理評価から推定した自施設のデータとのBias,内部精度管理から算出したCVにより算出することができ,シグマ値が高いほど検査の品質が高いと評価される。筆者らは,生化学検査を対象とした研究において,過去の内部精度管理(internal quality control; IQC)測定値から算出したCVを用いて精度管理幅を設定する方法を報告した。本研究では,既報の方法を免疫学的検査に応用し,過去のIQC測定値から算出したCVを用いて管理幅を設定することを目的とし,シグマメトリクスにより精度保証の観点から妥当であるかを評価した。過去のCVを算出する集計期間を1か月間,3か月間,6か月間,9か月間,12か月間の5群に分け,F検定により比較した結果,3か月間以上で有意差を認めなかった。3か月間のCVを用いて算出したシグマ値はすべての項目で4.0以上であり,本研究の範囲内では妥当であることが確認された。本研究の手法は,免疫学的検査に限らず,他の測定系や検査項目にも展開できる可能性があり,長期的なIQCデータを活用した効率的かつ実用的な精度管理方法として,精度保証体制の構築に貢献するものと考えられる。

  • 入井 あすな, 金重 里沙, 藤岡 凜, 本木 由香里, 野島 順三
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻1 号 p. 59-65
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019; COVID-19)は,呼吸器系の炎症に加え,血栓症を引き起こすことが知られている。近年,COVID-19罹患者の多くでループスアンチコアグラントが検出され,抗リン脂質抗体の関与が示唆されている。本研究では,①COVID-19罹患者18例,②非感染者10例,③一般住人30例を対象に,抗カルジオリピン抗体(anti-cardiolipin antibodies; aCL)と,ループスアンチコアグラントの責任抗体である抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン抗体(anti-phosphatidylserine/prothrombin antibodies; aPS/PT)を測定し,COVID-19罹患者における陽性率と血栓症との関連性を検討した。その結果,陽性率は,aCLで①45%・②20%・③3%,aPS/PTで①56%・②0%・③0%であり,aPS/PTはCOVID-19罹患者に特異的に認められた。さらに①で血栓症を発症した4例はすべてaPS/PT陽性・aCL陰性であった。さらに,COVID-19の重症度指標である相対的酸化ストレス度とaPS/PT抗体価に相関が認められた(rS = 0.810)。COVID-19における血栓症発症リスク評価には,aCLよりも,aPS/PTの測定が有用と考えられる。

  • 板橋 匠美, 小坂 鎮太郎, 青木 拓也, 益田 泰蔵, 横地 常広
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻1 号 p. 66-75
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    本研究は,医療現場における臨床検査技師のタスク・シフト/シェアの現状と課題,さらに教育的支援の必要性を明らかにすることを目的として,スコーピングレビューを実施した。近年,医療技術の高度化や医師の長時間労働是正や地域医療構想の実現の必要性,高齢化による医療需要の増大を背景に,医療職間でのタスク・シフト/シェアが進められている。本レビューでは,PubMedおよび医中誌Webを用いて「臨床検査技師」および関連職種との「タスク・シフト」,「タスク・シェア」に関する文献を検索し,国内外の13件を分析対象とした。その結果,臨床検査技師が関与する業務は,病理検査補助,内視鏡・超音波検査の介助,採血,HIV検査およびカウンセリング,検査室運営支援など多岐にわたり,医師などの業務負担軽減や処理時間の短縮,患者サービスの向上に寄与していた。一方,制度的な整備の遅れや教育体制の未整備が課題として浮上し,業務の標準化,安全性の担保,技能習得を支える教育プログラムの整備が今後の持続的な推進には不可欠である。以上の結果から,臨床検査技師のタスク・シフト/シェア推進に向けた現状把握と政策立案に資する知見を得た。

  • 石田 秀和, 神戸 歩, 上野 嘉彦, 石田 真理子, 庄田 健二, 榎本 由貴子, 大倉 宏之, 菊地 良介
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻1 号 p. 76-84
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    血小板凝集能検査は血小板数低値の際,血小板同士のズリ応力が発生しにくく,血小板凝集能が過小評価となるリスクがある。そこで今回我々は,血小板凝集能検査時に血小板数を同時に評価するための血小板数推算法を開発した。当院で実施した血小板凝集能検査結果1,326検体を対象とし,測定時に得られる光学的パラメータのうち,測定開始時の多血小板血漿(PRP)および乏血小板血漿(PPP)の差(ベースラインPRP-PPP)を推定血小板数の予測因子とした。ベースラインPRP-PPPは血球計数装置で測定したPRP中の血小板数と極めて高い相関性(ρ = 0.924)を示したが,非線形近似であったため,30回ランダム分割サンプリングによる回帰式次数の決定を行った。その結果から二次式による予測モデルを構築した。本推定血小板数予測モデルにより求めた推定血小板数はPRP中の血小板数予測因子と同等の相関係数が得られ,臨床的な閾値である150 × 109/L未満を識別する性能は,AUROC = 0.99,感度70.8%,特異度99.6%と高精度であることが示された。本研究で開発した手法により,血小板数を別途測定することなく,血小板凝集能検査測定時に高精度な推定が可能となった。本法は血小板数減少の影響を考慮した的確な結果解釈を支援するとともに,検査ワークフローを効率化することが期待される。

技術論文
  • 佐瀬 正次郎, 寺田 将人, 石毛 久恵, 斎藤 陽久, 宮内 義浩, 石原 典子, 村野 武義
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻1 号 p. 85-94
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    腎排泄型薬物投与設計における推算腎機能として個別補正3項目eGFRが推奨されているが,一方で,古くからCockcroft-Gault式(CG式)によるeCCrも医療現場で用いられている。今回,eCCrの有用性について個別補正3項目eGFR,更にAlbとUNを推算式に含む個別補正5項目eGFRと比較検証した。比較対照(24CCrおよび24CCrGFR換算)との乖離比と影響因子(年齢,BMI,Alb,Cre),さらに実際の抗がん剤使用患者の推算腎機能から検証した。その結果,eCCrは,これまでの報告と同様にeGFRよりも体格や年齢の影響を受けやすく肥満患者は腎機能を過大評価し高齢者は過小評価されたが,Albも大きな影響因子となりAlb 3.0 g/dL以下の症例では腎機能が過大評価された。一方,個別補正3項目eGFRはAlbが3.0 g/dL以下の症例では腎機能が過大評価されたが,AlbとUNが計算式に含まれる個別補正5項目eGFRは影響が認められず乖離症例の割合も低かった。実際の抗がん剤(カルボプラチン)投与患者における推算腎機能の比較検証においてもほぼ同様の結果となった。腎排泄型薬物投与設計において推算腎機能を使用する場合,副作用の大きい抗がん剤などの使用に際してはeCCrと3項目eGFRは腎機能を過小および過大評価するリスクが大きいことから推算式にAlbとUNを含む5項目eGFRの使用が望まれた。

  • 安永 梨那, 戸枝 義博, 吉澤 利紀, 末原 香子, 上田 淳夫, 中村 浩司
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻1 号 p. 95-101
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    フェリチンは鉄結合蛋白質であり,生体内の鉄代謝を把握する有用な指標である。また,炎症マーカーとしての側面もあり,特にCOVID-19の流行を受けて,低値域から高値域までの精度良い測定が重要視されている。本検討では,フェリチン キャリブレーターIIを使用して測定範囲を1,000 ng/mLから2,200 ng/mLに拡張したイアトロ フェリチンの性能評価を行った。その結果,併行精度および室内再現精度はフェリチンの許容誤差限界を満たし,定量限界は5.9 ng/mLから2,308.9 ng/mLとなった。プロゾーンチェック機能も確認され,従来法との互換性も良好であった。また,算出された基準範囲は男性で41.1~346.3 ng/mL,女性で6.6~179.6 ng/mLであった。さらに,TATに関しては1,000 ng/mL超2,200 ng/mL以下の検体に対し,約15分の検査時間短縮が認められ,迅速な臨床への導入が期待できる。しかし,基準範囲は測定系毎に差異があるため,試薬導入時には注意が必要である。

  • 松本 雄貴, 高野須 広道, 金並 真吾, 溝渕 あかね, 大石 瑞季, 伊藤 優衣, 高須賀 康宣, 大澤 春彦
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻1 号 p. 102-109
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    血中アンモニア(以下,NH3)は,肝疾患などの治療効果の判定に用いられる。その測定には,NAD Synthetaseを用いた酵素サイクリング法(NADS法)やGLDH・UV法またはドライケミストリー法を原理とする試薬が用いられる。抗凝固剤は,ヘパリン塩もしくはEDTA塩が試薬添付文書などで推奨されている。我々は,測定原理にNADS法を用いた測定試薬で,EDTA採血管を使用した場合,規定採血量に満たない検体で異常低値を示す事例を経験した。そこで,NADS法にEDTA塩が与える影響および偽低値の要因について検討した。検体量の影響について検討したところEDTA-2Na採血管で,検体量不足に伴い測定値の低下を認めた。次に,測定原理別にEDTA濃度の影響を調べた。その結果,NADS法でEDTA濃度9.0 mg/mLを超えると測定値に負の影響を認めた。そこでキレート作用を考え,EDTA-2Naの影響を受けた測定検体に,MgCl2,CaCl2,ZnCl2,CuCl2,FeCl2を添加し,その影響を検討した。その結果,MgCl2を添加した試料のみで測定値の上昇を認めた。このことからNADSを測定原理とする試薬において,Mgイオンが反応系に重要であることが明らかとなった。以上より,NADSが活性化するためにはMgイオンが必要であり,このMgイオンがEDTA塩によりキレート結合されるために偽低値を示す可能性が想定された。

  • 金井 菜摘, 戸枝 義博, 吉澤 利紀, 亀田 明, 上田 淳夫, 中村 浩司, 酒井 駿, 吉弘 壮輝
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻1 号 p. 110-117
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)は,心室機能の把握,心不全の重症度の評価,治療効果の判定などに重要な指標である。2023年には日本心不全学会から『血中BNPやNT-proBNPを用いた心不全診療に関するステートメント2023年改訂版』が発刊され,BNPの測定値に基づく患者管理の重要性が提唱されている。したがって,より簡便・迅速にBNP測定が可能な体制の構築が求められている。今回,積水メディカル(株)が開発した測定時間が15分から10分へと改良され,処方見直しによる高感度化されたPOCT試薬「ラピッドチップBNP-II」の性能評価を販売前に実施した結果,正確性,併行精度は判定基準を満たし,さらに低濃度域の正確性の改善が認められた。直線性,ブランク試料の識別性,プロゾーン試験,検体種間や従来法との互換性は良好であった。一方,比較対照法との互換性では回帰式の傾きが1.01~1.99となった。BNPは方法間差が大きいことが知られている項目であるため,早期のハーモナイゼーションの実施が求められる。また本試薬は性能を考慮して使用する必要があり,検査室としては適切に情報提供が実施できる体制づくりを行うことが望ましい。

  • 本木 由香里, 金重 里沙, 内藤 竜大, 吉山 透, 野島 順三
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻1 号 p. 118-126
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    抗リン脂質抗体症候群(APS)の診断には,抗リン脂質抗体の存在を証明する必要がある。抗リン脂質抗体はリン脂質およびリン脂質と血漿蛋白の複合体に対する自己抗体であり,患者ごとに保有する抗体が異なるため,定量検査では抗カルジオリピン抗体(aCL)と抗β2グリコプロテインI抗体(aβ2GPI)のIgGならびにIgMを測定することが重要である。これら4種類の抗体をIgGまたはIgM別に同時に測定可能な試薬として,新たにバイオ・ラッド ラボラトリーズ株式会社のBioPlex® APLS IgGキットとBioPlex® APLS IgMキットが2024年に保険収載された。本研究ではBioPlex® APLSの臨床的有用性を検証した。まず,健常人208例の各抗体価を測定し,測定値の99パーセンタイル値を抗体の陽性陰性判断値に設定した。さらに,APS患者50例および非APS(膠原病)患者50例の抗体価を測定した。APSと非APSの判別において,ROC解析により得られた曲線下面積は,aCL IgGで0.90,aβ2GPI IgGでは0.92と非常に高いAPS判別能を示した。また,同一抗体を検出する既存試薬の測定値との相関は,スピアマンの順位相関係数が0.49~0.92と良好であり,抗体の陽性陰性判定は既存試薬と89~99%一致した。BioPlex® APLSは簡便な操作で4種類の抗体をIgGまたはIgM別に同時に測定でき,既存の試薬と同等の検出精度を有しており,APSの検査診断に有用である。

  • 塚原 晃, 竹本 伸幸, 飯村 将平, 野上 花歩
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻1 号 p. 127-133
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    当院の中央検査室では,尿沈渣検査を鏡検法により実施している。鏡検法は機械では検出が難しい微細な変化が識別できる点で優れている一方,検体数の増加に伴い報告時間への影響が懸念される。そこで本研究では,尿沈渣分析装置AUTION EYE AI-4510(アークレイマーケティング株式会社)と鏡検法の検査結果を比較し,業務効率化の可能性を検討した。研究期間は2024年3月19日~4月1日,および6月18日~7月5日で,中央検査室で実施された525検体の残余検体を対象とし,1)鏡検との相関性,2)2ランク以上の乖離検体の要因分析,3)運用ロジックによる検査所要時間(turn around time; TAT)シミュレーションを行った。結果として,赤血球の完全一致率は61.1%,白血球は60.0%,扁平上皮細胞は70.8%であり,全体的に ±1ランク一致率は92%以上と良好であった。乖離の要因として,赤血球や白血球の混入,酵母・結晶・細菌・塩類の影響が確認された。TATの比較では,全鏡検運用は約8.5分/検体に対し,運用モデル1は約3.7分,運用モデル2は約3.4分と業務効率化の可能性が示唆された。これらの結果より,AI-4510の導入による尿沈渣検査の自動化は医療現場における標準化に寄与し,検査精度の向上と業務負担軽減に貢献することが期待される。

  • 井ノ口 知代, 五十嵐 久喜, 服部 和哉, 北山 康彦
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻1 号 p. 134-144
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    陽性コントロール用のホルマリン固定パラフィン包埋(formalin fixed paraffin embedded; FFPE)組織を薄切する際には,面出しに起因する組織損失が不可避であり,多数の未染色標本をあらかじめ作製しておくことが望ましい。本研究では,パラフィン切片保存シート(東屋医科器械)の薄切済み未染色陽性コントロールの長期保存性の検証を行った。まず予備実験としてスライドガラスに貼付し室温および4℃保存した切片と,保存シートに貼付して4℃保存した切片について6か月後のエストロゲン受容体(estrogen receptor; ER)の染色性変化を比較した。その結果,スライドガラスに貼付して室温保存した場合,染色性は著しく減弱し,弱陽性検体では陰性化した例もあった。一方,4℃保存においてはスライドガラスと保存シートに差異は認められず,染色性の減弱は認めなかった。次に,保存シートに貼付し4℃保存をした陽性コントロールを6か月ごとにスライドガラスへ転写し,染色性の経時的変化を2年間にわたり比較した。2年後でもER以外の項目においては染色性の減弱は認めなかった。ERは染色性の軽度の減弱を認めたが,コントロールとして使用するには問題のない程度であった。本研究により,保存シートの長期保存性が実証された。薄切作業の省力化や組織面出し時の検体損失の抑制が可能であり有用性は高いと考える。

  • 髙橋 陽平, 黄江 泰晴
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻1 号 p. 145-155
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    動脈硬化性疾患のリスク評価に用いるLDL-コレステロール(LDL-C)測定は,Fridewaldの式による推算法や直接法が用いられているが,推算法では高トリグリセライド(TG)検体で偽低値傾向,直接法では脂質異常症の検体での測定精度や試薬間差などの問題があり,標準化の達成されていない項目である。近年,高TG検体へ対応した推算式が開発され(Martin式(M式)とSampson式(S式)),欧米ではLDL-C推算には新しい推算式の使用が推奨されているが,日本国内ではそれらの有用性の報告はほとんどない。今回,直接法を基準とし,3つの推算式の性能比較を行ったので報告する。当院入院および外来患者53,748名のデータを解析した結果,TG濃度の上昇に伴いF式の精度は著しく低下したが,M式とS式はTG濃度800 mg/dL以下まで直接法と良好な相関を維持し,食事の有無や血清混濁の影響も回避できていた。直接法を基準とした階層化一致率もM式,S式ともに良好であり,新しい推算式のどちらを用いても大きな問題はなく,直接法の代替となりうると考える。以上より,M式,S式はF式の問題点を解消し,より優れた性能を持つことが確認された。統一された推算式の使用は,国内だけでなく海外とのハーモナイゼーションに繋がることから,今後は新しいLDL-C推算式を用いること強く推奨したい。

資料
  • 小澤 和真, 田澤 庸子, 古畑 由紀江, 宮本 裕子, 後藤 文彦
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻1 号 p. 156-162
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    当院は血液培養ボトルに最適な血液量の接種を推進するために,BACT/ALERT® VIRTUO®を用いて,2022年1月から血液量を測定した血液培養ボトル数のうち ≥ 12 mLの血液培養ボトル数が占める割合を過剰量ボトル率として毎月モニタリングし,院内スタッフへの教育および啓発活動を実施してきた。2024年4月からは,血液量8~11 mLを適正量とした血液培養ボトルの割合に変更し,継続している。そこで2022年1月から2024年6月までの血液量を測定した血液培養ボトルを対象に,これまでの取り組みの効果を評価した。方法は,血液接種量 ≥ 12 mLのボトルを過剰量ボトル,8~11 mLのボトルを適正量ボトル,0~7 mLのボトルを不足量ボトルと定義し,月ごとに各量のボトルが占める割合を算出した。また同様に平均血液接種量および陽性ボトル率を算出した。結果は,2年半で適正量ボトル率の増加と不足量ボトル率の減少および過剰血液量ボトル率の減少が有意に認められた。平均血液量は約8 mLで推移したが,陽性ボトル率は取り組みによる影響は認められなかった。血液培養ボトルの血液量の最適化を推進するうえで,血液培養検体の採取に大きく関わる看護部との連携,QI項目としてPDCAサイクルによる管理,継続的な院内スタッフへのフィードバックが,血液培養ボトルの血液量の最適化を推進した可能性が示唆された。

  • 堤 ちあき, 加藤 千秋, 伊神 剛, 松下 正
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻1 号 p. 163-167
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    当院では病院総合情報システム更新に係る諸準備は事務部情報管理部門が担ってきたが,医療現場との連携不足が指摘されていた。そこで,医療従事者を構成員とした電子カルテ管理室を設立し,職種に適した役割を分担し合うことで,より現場要求を満たすことのできるシステム更新を目指すことになった。本報告は,医療従事者主体の電子カルテ管理室設立によるシステム更新体制の変化と,その過程における多職種連携の実際,および課題について明らかにすることを目的とする。システムの内容・種類に応じて関連する職種でワーキンググループ(WG)を構成したが,サブワーキンググループ(SWG)が予想外に増えてしまったためにメンバーならびに現場スタッフの業務負担増に繋がる結果となった。予算制約のため部門システム数やシステムの機能においてWGの要望通りとはならなかった。またWG活動の長期化によりメンバーの固定化が難しく,活動の進行にも影響があった。その結果,検討の不十分さが原因の設計不具合,設定の確認不足を起因とした問い合わせがシステム稼働後に押し寄せることになった。電子カルテ管理室構成員として病院総合情報システムの更新を経験して,現場とのコミュニケーションの重要性を認識した。次期は職種毎の知識や権限を理解した上で互いを尊重し協力し合い,ユーザーの満足度向上に貢献することを目指したい。

  • 加藤 憂朔, 石田 秀和, 石田 真理子, 神戸 歩, 安藤 穂乃実, 上野 嘉彦, 岡 有希, 菊地 良介
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻1 号 p. 168-173
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    近年,臨床検査技師の業務内容は大きく変化しており,臨床検査技師養成課程においても教育内容の充実が求められている。令和4年度のカリキュラム改訂により,臨地実習の受け入れ先となる病院においては教育体制整備が必要となった。本検討では臨地実習生教育業務の効率化を目的とし,OpenAI社が開発した大規模言語モデル(large language models; LLM)による対話型AIサービスであるChatGPTを活用した血液検査学に関する臨地実習生教育の問題作成支援について,その有用性の評価を行った。教育スライド資料を用いた問題作成として,五肢択一問題を30問作成し,その不適切問題数および割合を算出した。Reversed Clinico-pathological Conference(RCPC)用の症例教材作成として,10種類の血液関連疾患の教材を作成し,検査結果,血液像所見,症例としての情報不足の評価を行い,教材の適切性を検証した。教育スライド資料を用いた問題作成では,不適切問題数は全30問中6問(20%)であった。RCPC用の症例教材作成では,ChatGPT-4oにおいて13件の誤りを認め,OpenAI o1において16件の誤りを認めた。ChatGPTを用いた教育問題作成は,臨地実習における指導者の負担軽減に貢献する可能性がある。しかし,問題や教材の正確性を確保するためには,臨床検査技師による適切な監修が必要である。

  • 二谷 悦子, 久山 佳代
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻1 号 p. 174-183
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
    ジャーナル フリー HTML

    目的:臨床検査現場に今後求められる工程や伴う人材育成への提案へ繋ぐためAIの臨床での活用に向けた規制当局の動向や研究から実証検証,事例を紹介する。方法:米国,欧米,日本の規制当局における近年の医療機器向けAI/Machine Learning(ML)の導入に関する動向を公知情報から検索し,FDA承認リストから臨床検査に関連する技術の抽出および傾向の確認を行った。さらに具体的な技術内容について詳細を調査し,本邦における臨床検査におけるAI活用の実現に向けた動きについて調査を行った。結果:近年欧米諸国における医療機器向けのAI/ML導入ガイドラインの設定に続き,本邦においても制定の動きが始まっている。FDA承認されているAI/ML製品リストには限られたプロセスを対象にしたもののみならず,統合解釈に運用される製品も増えてきており,取り扱う医療者の基準の設定がされる製品も増えている。結論:臨床検査技師は統合解釈に向けた個別項目の精度管理情報の整理等の貢献が望まれるため,製薬企業や医療機器企業のAI活用に向けた大きな動きの中で医療に直接関係する施設・病院がそれぞれ動向や施設の方針に応じてプラットフォームを整え,積極的に技術開発の連携やプロセス設定に参画していくことが期待される。

  • 川満 紀子, 上原 亜弥, 酒田 あゆみ
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻1 号 p. 184-189
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
    ジャーナル フリー HTML

    ポドサイト(糸球体上皮細胞)は糸球体基底膜の外側を覆い,血中蛋白質の最終濾過障壁の機能を果たす細胞である。尿中に剥離したポドサイトの検出は,糸球体硬化につながる腎障害バイオマーカーとして注目されている。現在,尿沈渣においてポドサイトの形態が明らかとなり検出が可能となったが,尿沈渣検査の観察量では検出数が少なく類似した他成分もあり,検出は容易ではない。そのため,尿沈渣での検出率を高めるために,尿中ポドサイト検出症例での背景成分である尿沈渣成分を解析した。尿中ポドサイトを検出した22症例では,全ての症例で尿蛋白と尿潜血がともに陽性であった。また,顆粒円柱,赤血球円柱,白血球円柱も同時に検出され,ポドサイト検出数が多いほど,赤血球円柱と白血球円柱の数も多い傾向であった。この2つの円柱の検出は,既報の尿中ポドサイト数が糸球体腎炎の活動期と相関があることと矛盾しない結果であった。この結果より,赤血球円柱と白血球円柱が検出される糸球体腎炎活動期を示唆する尿沈渣ではポドサイトの検出も念頭に置き観察することで,より検出が高まると考えられる。また尿沈渣からポドサイトを検出することで,侵襲性の高い腎生検を実施する前段階において糸球体疾患の活動性評価や治療効果の判定に有用な情報となり得ると考える。

  • 近堂 侑子, 大家 香織, 岡本 真実, 藤原 千聡, 岸野 万伸
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻1 号 p. 190-196
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    【目的】当院の細胞診は表在性病変が主体のためシュアパスTM法を採用しており,湿固定検体のみを用いて細胞診検査を行っているが,まれにギムザ染色(Giemsa staining)を必要とする病変が採取されることがある。ギムザ染色は乾燥固定が基本であるが,今回我々は湿固定であるBDシュアパスTM液状化細胞診(liquid based cytology; LBC)検体よりギムザ染色標本を作製し,その有用性を検討した。【方法】BDシュアパスTMコレクションバイアルで固定した細胞を,BDシュアパスTM用プレコートスライドとMASコートスライドグラスに吸着させ,冷風で乾燥させた後にギムザ染色を行った。【結果】LBC検体から作製したギムザ染色標本において,腺様嚢胞癌の症例に粘液様物質の異染性が確認できた。また,LBC検体から作製したギムザ染色標本では細胞の引き伸ばしがやや認められたが,核クロマチンはLBC検体から作製したパパニコロウ染色(Papanicolaou staining;Pap染色)標本と類似しており,塗抹乾燥固定ギムザ染色標本とは異なっていた。【結論】BDシュアパスTM LBC検体から作製したギムザ染色標本は,BDシュアパスTM LBC用固定液で一度湿固定した検体の異染性の確認に有用であり,診断精度の向上に貢献できると考えられた。

症例報告
  • 芳川 拓巳, 山谷 由香里, 清重 篤志, 大井 幸子, 吉岡 豊道
    原稿種別: 症例報告
    2026 年75 巻1 号 p. 197-202
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
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    今回我々は,喀痰中にシュウ酸カルシウム結晶を認めた肺アスペルギルス症の3症例を経験した。肺アスペルギルス症の診断には菌体の直接検出が望ましいが,培養には時間を要し,診断バイオマーカーの感度の低さも課題である。症例は,呼吸器症状を主訴に来院した70代男性2例および90代女性1例であり,いずれも基礎疾患を有していた。入院時には全例で血痰を認め,喀痰塗沫標本では菌体は検出されなかったが,シュウ酸カルシウム結晶を多数認めた。その後の培養および診断バイオマーカーの結果から,Aspergillus section Nigriによる肺アスペルギルス症と診断された。肺アスペルギルス症は他の深在性真菌症と比較して死亡者数の増加が報告されており,迅速な診断と治療介入が求められる。Aspergillus属の一部はシュウ酸を産生することが知られており,喀痰中のシュウ酸カルシウム結晶の検出は臨床的に有用な所見である。本症例においても,本所見は培養や診断バイオマーカーに先行して得られており,非侵襲的かつ迅速な診断の契機となりうる。したがって,同様の所見が得られた際には,肺アスペルギルス症を鑑別に挙げ,積極的に報告すべきであると考える。

  • 山田 真以, 福田 峻, 西村 美幸, 木村 千晶, 樋口 武史
    原稿種別: 症例報告
    2026 年75 巻1 号 p. 203-209
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
    ジャーナル フリー HTML

    キサンチン結晶は,腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome; TLS)における高尿酸血症の予防目的で使用される尿酸生成抑制薬(キサンチンオキシダーゼ阻害薬)により形成され,閉塞性腎障害を引き起こす可能性がある。しかしながら報告例は少なく,臨床現場ではその存在があまり認知されていないのが現状である。今回我々は,尿沈渣中にキサンチン結晶を認め,臨床側にその意義を報告したことで,腎障害の予防に寄与したと考えられる症例を経験したので報告する。患者は70歳台,女性,急性骨髄性白血病と診断され寛解導入療法が開始された。TLS予防としてフェブキソスタットとフロセミドが投与された。入院9日目の尿沈渣で褐色の板状結晶を多数認め,加温,酢酸,塩酸に不溶,水酸化カリウムに可溶であったことから,キサンチン結晶と推定した。外部委託による結石分析でもキサンチン類似成分と報告され,同定に至った。本症例ではキサンチン結晶に類似した結晶を臨床へ報告したことにより腎機能の厳重なモニタリングが行われ,閉塞性腎障害の発症は回避された。TLS予防として尿酸生成抑制薬を使用する症例においては,尿沈渣検査によるキサンチン結晶の早期検出とその意義の周知が重要である。

  • 小宮山 謙一, 難波 大希, 多田 圭子
    原稿種別: 症例報告
    2026 年75 巻1 号 p. 210-216
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
    ジャーナル フリー HTML

    今回,血液培養で稀な菌種であるTrichosporon mucoidesの分離を経験したので報告する。患者は76歳,女性,関節リウマチの治療を受けていた。入院時に採取した血液培養より酵母様の真菌が検出されVITEK2でT. mucoidesと同定された。Trichosporonは担子菌系の酵母で自然界に広く分布しており,夏型過敏性肺炎SHP(summer-type hypersensitivity pneumonitis)のアレルゲンとして知られているが,本事例では気管吸引痰の培養では検出できなかった。また,ブレイクスルー感染として検出されるケースがあり,真菌血症を起こした場合には予後不良のことが多い。コロニーを外注先の質量分析装置(MALDI-TOF-MS)で測定した結果Trichosporon mucoides/dermatisと同定された。また,β-Dグルカンは19.8 pg/mLと正常の範囲内であった。薬剤感受性試験の結果,Micafungin(MCFG),5-flucytosine(5-FC),Caspofungin(CPFG)のminimum inhibitory concentration(MIC)が高値で,Voriconazole(VRCZ)のMICが低値を示した。患者は当初,MCFGが投与されていたが,菌種がT. mucoidesと判明してからVRCZに変更したことで,入院23日目に採取した血液培養が陰性であった。

  • 上田 かさね, 瀬筒 彩音, 河原 菜摘, 虎清 夏海, 荒木 敏造, 山口 尚子, 舛田 昭三
    原稿種別: 症例報告
    2026 年75 巻1 号 p. 217-222
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
    ジャーナル フリー HTML

    症例は70代男性。肝内結石にて複数回ERCP施行歴があった。発熱と倦怠感が持続しており,近医を受診した際,敗血症ショックの疑いで当院を紹介受診。入院時に採取した血液培養からEnterobacter cloacae complex,胆汁培養からEnterobacter cloacae complex,Escherichia coliStreptococcus sp.が検出された。TAZ/PIPCの投与により解熱したが,胆管ステント閉塞や十二指腸潰瘍などを併発し,再び発熱。その時採取された血液培養とカテーテル先端部から酵母様真菌が認められた。クロモアガーTMカンジダ培地に発育したコロニーの色調からCandida glabrataが疑われたが,VITEK2および質量分析計VITEK MSにてCandida lusitaniaeと同定された。Candida lusitaniaeは基礎疾患に悪性腫瘍を有する免疫不全患者や,化学療法を受けている患者に日和見感染を起こす。他にも,広域スペクトル抗生剤の使用や長期入院,静脈中心カテーテル,透析などが危険因子として挙げられる。これまでに尿や腹腔内膿胞からの分離例が報告されているが,報告数は少なく,検出頻度は極めて稀である。また,薬剤感受性はAmphotericin Bや5-Flucytosineに耐性を示すとの報告もあり,有意な治療につなげるためには正確な菌種同定が求められる。

  • 中森 彩乃, 橋倉 悠輝, 松浦 成美, 明利 美里, 惠 稜也, 弓削 めぐみ, 猪﨑 みさき, 梅北 邦彦
    原稿種別: 症例報告
    2026 年75 巻1 号 p. 223-227
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
    ジャーナル フリー HTML

    髄液細胞数の測定は髄膜炎や脳炎の診断,腫瘍細胞の中枢神経系への浸潤の有無,治療効果判定において非常に重要な検査である。髄液細胞数の算定は,計算盤を用いた目視算定法が主流であるが,近年では多項目自動血球分析装置を用いた自動化が進んでいる。今回,我々は細菌が検出された髄液検体において,多項目自動血球分析装置(XN-3000)の体液測定モードと計算盤法による細胞数の乖離を認めた症例を経験した。症例は70代男性。VPシャント術の術後感染症疑いにより,シャントバルブのリザーバーから採取した髄液を用いて髄液細胞数の検査が行われた。XN-3000の体液測定モードによる髄液細胞数は1,036/μLであったが,並行して実施していた計算盤法による髄液細胞数は155/μLと髄液細胞数の結果に乖離があった。XN-3000の赤血球ヒストグラムでは,30 fL以下の領域に通常は認められない異常なピークが認められ,細菌の存在が示唆された。集細胞塗抹標本を確認したところ,細菌の凝集塊が観察された。このことから,XN-3000の髄液細胞数は細菌による偽高値であることが判明した。多項目自動血球分析装置による測定は簡便かつ迅速な方法であるが,髄液中に細菌が存在する可能性がある場合には赤血球ヒストグラムの異常ピークの存在を確認することが重要であると考えられ,計算盤法での目視算定や集細胞塗抹標本の観察が必要である。

  • 渡部 加奈子, 仲田 夢人, 木村 和幸, 市川 ひとみ, 河村 浩二
    原稿種別: 症例報告
    2026 年75 巻1 号 p. 228-232
    発行日: 2026/01/25
    公開日: 2026/01/25
    ジャーナル フリー HTML

    鉄欠乏性貧血は貧血の中で最も頻度が高く,体内の鉄が不足しヘモグロビン(hemoglobin; Hgb)合成が低下することで引き起こされる。鉄欠乏性貧血は経口鉄剤による薬物療法が基本となるが,1回に高用量の鉄を投与できる静注鉄剤も選択できる。2023年3月薬価基準収載された鉄欠乏性貧血治療剤モノヴァー®静注(日本新薬株式会社)は酸化第二鉄とデルイソマルトースとの複合体であり,静注後は細網内皮系の細胞に取り込まれ,トランスフェリンと結合した鉄が骨髄に運搬されてHgb合成に利用される。副作用としては低リン血症による骨軟化症や鉄過剰症などがあり,静注鉄剤投与後は血清リン値(inorganic phosphorus; IP)の低下や貯蔵鉄の異常高値など,長い場合で4週間程度検査結果に影響を及ぼすことが報告されている。経口鉄剤とは動態が異なることから,今回モノヴァー®静注投与翌日の早朝採血で血清鉄(Fe)が異常高値を示した症例を経験したので報告する。

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