医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
最新号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
原著
  • 西脇 啓太, 山内 孝治, 鈴木 優大, 松下 加奈子, 伊藤 英史, 太田 慎次, 島戸 真司, 大嶋 剛史
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻3 号 p. 489-496
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    片側顔面けいれん(HFS)の発生機序には様々な議論があり,瞬目反射(blink reflex)検査における診断基準は確立されていない。我々はHFSにおけるblink reflexの有用性について検討した。対象はHFS 10例。Blink reflexを微小血管減圧術(MVD)の術前・術後で,異常筋反応(AMR)を術前,術中,術後に記録した。Blink reflexの記録方法は,眼窩上孔を刺激し,両側の眼輪筋(OOc)と口輪筋(OOr)で導出した。Blink reflexは術前の患側刺激OOc導出にて,全例で患側にR1,R2,健側にR2を認めた。OOr導出では患側にR1,R2を認めたが,健側で電位波形は識別できなかった。健側刺激では8例で患側のOOr導出にてR2を認めたが,2例では両側ともOOrに電位波形は識別できなかった。術後,症状が消失した8例では患側のOOrの電位波形はいずれも消失していた。症状が残存した2例では,患側および健側刺激ともにOOrのR2は消失していたが,患側刺激のOOrでR1が認められた。AMRは術前評価で波形が明瞭に導出されない例が散見された。術後症状が消失した8例において術後AMRは消失していた。術中AMRモニタリングでは責任血管操作中にリアルタイムな電位波形の変化を得ることができたが,減圧操作以外のところでAMR消失を認めることがあった。HFSにおけるblink reflexはOOr導出を組み合わせることが重要であり,病態把握や予後評価の一助になり得る可能性が示唆された。

  • 中嶋 理子, 成田 和也, 遠藤 謙太郎, 齊藤 匠吾, 畠山 裕司, 藤原 亨, 仲村 究
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻3 号 p. 497-502
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    黄色ブドウ球菌菌血症(Staphylococcus aureus bacteremia; SAB)は死亡率の高い感染症であり,分離菌がメチシリン感性か耐性であるかを早期に鑑別することは重要である。そこで,penicillin-binding protein 2’(PBP2’)を検出するイムノクロマト法試薬であるQライン極東PBP2’(以下,Qライン)を使用し,血液培養陽性から約6時間後に形成されたyoung colony 37検体(methicillin-susceptible S. aureus;MSSA 24件,methicillin-resistant S. aureus;MRSA 13件)のPBP2’判定を行い,薬剤感受性試験結果との一致率を検討した。Young colonyを用いたQライン測定結果は,感度100%,特異度95.8%であった。偽陽性の1例は,MSSAとメチシリン耐性コアグラーゼ陰性Staphylococcus sp.(MR-CNS)の同時検出例であり,MR-CNS由来のPBP2’の検出が考えられた。Young colonyを使用した本試薬の測定は良好な感度・特異度を示したが,MR-CNSの混在による偽陽性に注意して運用する必要がある。PBP2’の有無を早期に報告することで,SABにおいてより迅速かつ適切な抗菌薬選択に繋がる可能性があり,今後さらに症例数を増やしながらその有用性について検討したい。

  • 石田 秀和, 横山 隣, 市岡 里奈, 新井 隆仁, 小野 佳一, 蔵野 信, 大倉 宏之, 菊地 良介
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻3 号 p. 503-512
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    医療現場における機械学習モデルの普及を阻むデータセット依存性や個別最適の壁を克服するため,単一施設で開発した予測アルゴリズムを追加学習により他施設へ展開する手法の有効性を検証した。A病院のリアルワールドデータを用い,XGBoostによる「日次採血患者数」「時間帯別受付数」「待ち人数・時間」の3種類の基盤モデルを構築した。次に,このモデルをB病院のデータで追加学習し,その精度を検証した。評価には2025年の遡及的データと,2025年11月の前向きデータを用いた。A病院のモデルは高い予測精度を示したが,B病院に直接適用すると精度は著しく低下した(日次予測R2 = −14.074)。一方,B病院データで追加学習を行ったモデルは劇的に改善し,遡及的検証において時間帯別受付数でR2 = 0.963,待ち人数でR2 = 0.892を達成した。前向き検証でも高い精度が維持され,特に待ち人数予測ではR2 = 0.884と実用的なロバスト性が確認された。基盤モデルの共有と追加学習による適応は,施設ごとの運用差を効率的に吸収し,高精度な予測モデルを他施設へ展開するための実践的なフレームワークとなる。

  • 小林 玄, 加藤 千秋, 古村 恵理, 長井 りさ, 渡邊 友美
    原稿種別: 原著
    2026 年75 巻3 号 p. 513-519
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    【はじめに】クリオシールは,クリオシールCS-1を用いて,トロンビンとクリオプレシピテート(クリオ)を自動で調製した製剤である。クリオシールの調製を開始するにあたり,凍結融解の影響,トロンビン活性とフィブリノゲン濃度がクリオシールの品質に与える影響を検討した。【方法】クリオシール調製:クリオシールCS-1(旭化成メディカル(株))。トロンビン活性およびクリオとトロンビン混和後の凝固時間:トロンボトラック・ソロ(三光純薬(株))。フィブリノゲン濃度およびDダイマー:CN-6000(シスメックス(株))。材料は新鮮凍結血漿-LRおよびプール血漿を使用し,凍結融解の回数による変化,段階希釈したトロンビンとクリオを混和した凝固時間および強度への影響を検討した。【結果】原料血漿の凍結融解の回数は,クリオシールの品質に影響を与えなかった。トロンビン活性は30単位/mL以上で品質に影響を与えなかった。フィブリノゲン濃度は,凝固時間への影響は明確ではなかったが,血漿成分に含まれる成分との相互作用により,凝集物の観察で濃度が高い方が収縮し強固であった。【結論】品質の良いクリオシールを調製するためには,トロンビンは取扱説明書に従うことで一定品質の調製が可能であった。クリオはフィブリノゲン濃度が高い製剤を調製するために,クリオ析出後のチャンバーから余剰の血漿成分をしっかり廃棄し,濃縮させることが重要であった。

技術論文
  • 松下 知世, 出間 智行, 小野 翔平, 藤原 典, 久原 太助, 徳弘 慎治, 藤本 新平
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻3 号 p. 520-529
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は心不全診断・重症度評価に有用である一方,測定試薬間差が課題である。本研究では,富士レビオ株式会社のルミパルスプレストBNP(LP-BNP),東ソー株式会社のAIA-パックCL BNP(AIA-BNP),アボットジャパン合同会社のBNP-JP・アボット(AJ-BNP)を用い,患者検体90例,各社専用コントロール,BNPコントロールシオノギを対象に,試薬間の相関性とコントロールの妥当性を検証した。相関性試験では3機種間で良好な相関(r ≥ 0.98)を得たが,測定値には有意差を認めた(p < 0.0001)。各社専用コントロールは検体による相関傾向と一致しない結果を示した一方,BNPコントロールシオノギは検体およびBNPコントロールシオノギの試薬間関係性の評価において,ほぼ全測定が予測区間内となり,検体と同様の試薬間関係性を示す可能性が示唆された。LP-BNPおよびBNPコントロールシオノギのLOT間差は認められなかった。以上より,BNPコントロールシオノギは精度管理用試料として有用であり,試薬間差の把握とハーモナイゼーションへの貢献が期待される。

  • 佐藤 雅樹, 鈴木 圭子, 横田 晶子, 小野田 素大, 江口 康喜, 佐藤 真由美, 住友 みどり
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻3 号 p. 530-537
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    単球容積の標準偏差である単球サイズ分布幅(monocyte distribution width; MDW)について基礎的・臨床的有用性の検討を行った。測定は自動血球計数装置Unicel DxH900(ベックマン・コールター社)を使用し,当院検査科に依頼のあった検査結果を対象として解析した。MDWの再現性は,同時再現性のCVが2.09–3.61%,日差再現性のCVが1.30–3.79%と良好であった。健常人120名の結果から求めたMDW参考基準範囲は14.5–19.3であった。385例のプロカルシトニン(Pct)測定値で4群に分けて比較した各群のMDWは,Pct高値群ほど優位に上昇した。また,752例の血液培養(血培)結果について行った白血球数,C反応性蛋白およびMDWのROC(receiver operating characteristic)解析のAUC(area under the curve)は,それぞれ0.558,0.603,0.737となった。血培陽性群に対する分別能はMDWが最も優れていたが,陽性群の13.5%はMDWが基準範囲内であり,上昇の発現にはタイムラグが存在することが示唆された。一方,血培陰性群ではMDWが31.7を超える高値例を認め,ウイルス感染や血液疾患など様々な病態が観察されたため,敗血症バイオマーカーとして利用するには注意が必要であると考えられた。

  • 笹田 倫子, 佐藤 雅美, 別所 将弘, 岩垣 侑真, 中尾 隆之
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻3 号 p. 538-548
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    当院では本邦産婦人科診療ガイドライン 産科編2023に準じ,妊娠35~37週の妊婦に対してStreptococcus agalactiae(group B Streptococcus; GBS)スクリーニング検査を実施している。ガイドラインでは腟入口部ならびに肛門から検体採取を行うことが推奨されているが,当院では腟分泌物のみを検査対象としている。検体採取部位が1カ所であることや,分離困難等様々な要因によるGBS検出感度の低下を防ぐべく,2020年よりGBS選択培地(GBS選択増菌・鑑別用培地Strep B Carrot BrothTM:島津ダイアグノスティクス)を導入した。Strep B Carrot BrothTMは,GBSを増菌し,かつグラム陰性桿菌等の発育を抑制することでGBSを選択的に発育させることができる上,β溶血を呈する多くのGBS株では菌が発育した場合,選択培地中の培養液がオレンジや赤橙色に発色することによりGBS陽性の判定ができる。当院におけるGBS選択培地導入前後数年間のGBS検出率を比較した結果,導入前4年間の平均は14.1%,導入後4年間の平均は17.0%と上昇していた(χ2検定:p = 0.021)。さらにGBS陽性検体における本選択培地の発色能の確認を行った結果,本選択培地使用がGBS検出に有効であると考えられた。

  • 阿部 拓也, 戸澤 祐貴, 川村 宏樹, 渡邊 博昭, 藤井 豊
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻3 号 p. 549-556
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    Shear wave elastography(SWE)は組織弾性を定量化できる有用な手法であり,乳腺や肝疾患領域を中心に使用されている。一方で,測定値は装置条件や環境因子の影響を受けやすく,再現性の確保が課題である。本研究は,連続走査に伴う温度上昇がSWEに与える影響を,ゲルパッドを用いた実験系で検証し,温度感受性および安定化時間を定量化することを目的とした。SWEは超音波診断装置Aplio meを使用し,表在用14L5プローブで取得した。温度はゲルパッド最上面(T_top)と下面(T_bottom)を熱電対で連続計測し,線形補間によりROI温度(T_ROI)を推定した。測定条件は連続走査(Duty-High)と間欠走査(Duty-Low)の2条件とし,30分間のSWE(速度・弾性率)を取得した。その結果,T_ROIは30分で約+2.5℃上昇し,これに伴いSWE速度および弾性率は系統的に低下した。温度変化とSWEの間には強い線形関係を認め,速度感受性βc = −0.075 m/s/°C,弾性率感受性βE = −1.32 kPa/°Cを示した。また,時間微分に基づく安定化判定により,SWEは13分以降でプラトーに到達し,変動係数(CV%)は初期の4.22%から2.20%へ低下した。本研究により,連続走査に伴う温度上昇がSWEの時間的ドリフトの要因となることが明らかとなり,温度安定後の走査が正確性向上に有効であることが示唆された。

  • 久富 大樹
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻3 号 p. 557-565
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    内部精度管理では,不確かさ管理とトレーサビリティが要求されるが,キャリブレーション作業は業務負担が大きく,その効果も限定的である。本研究では,キャリブレータを再測定せず,キャリブレーションの不確かさ(calibration uncertainty; CU)の範囲内で内部精度管理の目標値に合わせて係数を調整する手法の有用性を検討した。なお,キャリブレーションの不確かさとは,キャリブレーション操作に伴う測定値のばらつきや誤差の範囲を定量化した指標である。シミュレーションデータおよび実測データの解析により,CUは標本内CV(sample CV; sCV)と強い線形関係を示し,濃度や測定回数の影響は非有意であった。ただし,測定回数がsCVに与える影響は大きく,過小および過大評価を避けるため運用面でも実施しやすい3回測定(N = 3)を推奨した。回帰分析では,CUはsCVの約70%を示し,自由度2(N = 3)の包含係数4.3を適用した場合,拡張不確かさ(expanded uncertainty; U)による調整範囲は再現性の約2–3σに相当し,日常的なシフトやトレンドに対応可能であった。さらに,目標値のバイアスは軽微であり,目標値を基準とした係数調整の妥当性が確認された。係数調整型校正法は,ISO定義に基づくトレーサビリティを維持しつつ,精度保証と業務効率化の両立に寄与する可能性がある。

  • 上杉 里枝, 大石 智洋, 仲井 富久江, 近藤 英生, 岡﨑 希美恵, 北中 明
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻3 号 p. 566-572
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    化学発光酵素免疫測定法(CLEIA)によるインフルエンザウイルス抗原検査(以下,抗原検査)を日常診療に導入した当院の診療体制について,その臨床的妥当性を定量的逆転写PCR(RT-qPCR)との比較により検証した。対象は抗原検査陽性で,残余検体でRT-qPCRを追加実施できた320例とした。抗原検査陽性例は発症初期の患者が多く,200.0 C.O.I.超過の高値例が約7割を占めた。RT-qPCRは296例が陽性で,陽性一致率は92.5%と高く,発症早期の症例が多い本検討でも高い信頼性が確認された。RT-qPCR陽性群と陰性群の比較では,陽性群は有意に低年齢で,発熱から検査までの日数は短かった。一方,抗原検査陽性・RT-qPCR陰性の不一致例24例は,平均年齢69.3歳と高齢で,発熱から検査までが平均2.9日と長い傾向にあり,悪性腫瘍などの他疾患合併例が多数を占めた。また,抗原検査10.0 C.O.I.未満の低値陽性例の解析では,C.O.I.が1.0~1.9ではRT-qPCR陰性が多い一方,2.0以上では陽性率が高く,CLEIAの測定値が臨床判断に有用であることが明らかとなった。CLEIAによる抗原検査は,極低値陽性例では臨床背景や経過に基づいた慎重な判断を要するものの,発症早期を含む多くの症例で定量的に信頼性の高い診断を可能とし,インフルエンザ診療体制の質向上に寄与することが示された。

  • 岡 有希, 上野 嘉彦, 森田 賢史, 石田 真理子, 石田 秀和, 蔵野 信, 大倉 宏之, 菊地 良介
    原稿種別: 技術論文
    2026 年75 巻3 号 p. 573-579
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    高尿糖・高蛋白尿においては,尿比重測定に影響を与えることが知られており,屈折率法では定量値に基づいた補正が望ましいとされている。今回,重量法と屈折率法,試験紙法の3法の測定を実施し,尿糖陽性時の補正係数に関する検討を主とし,併せて蛋白補正係数に関しても検討を行った。評価内容は,重量法を基準とし,屈折率法との関係をDeming回帰分析およびBland-Altman解析により評価し,試験紙法との比較にはSpearmanの順位相関係数を用いた。その結果,補正前屈折率法は重量法に対し系統誤差を示した。糖補正後,糖および蛋白補正後(以下,糖・蛋白補正後)屈折率法では比例誤差が認められ,高比重域で負の乖離を示した。一方,蛋白補正後屈折率法は重量法との一致性が最も良好であった。Bland-Altman解析では,糖補正後および糖・蛋白補正後屈折率法において95%一致限界の拡大と高比重域での負の乖離が確認され,これらすべては糖4+の症例であった。試験紙法との相関は,糖補正後および糖・蛋白補正後屈折率法で高値を示した。本検討により,屈折率法における補正は一部条件下で有用であるが,高濃度尿糖では過補正による乖離が生じる可能性がある。定量値に即した補正係数の検討が望まれ,尿比重の評価においては,測定法ごとの特性と限界を理解した上で,臨床状況に応じた解釈を行うことが重要であることが示唆された。

資料
  • 紙田 晃, 小林 知子, 石丸 美架, 岡本 憲省, 戎井 理
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻3 号 p. 580-586
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    2型糖尿病患者の下肢の神経伝導と患者背景を含めた糖尿病関連検査値との相関性を検討した。2型糖尿病入院患者127名(男女比74:53,66 ± 12歳,平均HbA1c 9.2%)を正常群もしくは異常群に分類した。脛骨神経の複合筋活動電位振幅(tibial amp)5 mV以下,腓腹神経の感覚神経活動電位振幅(sural amp)5 μV以下を異常とし,tibial amp,sural ampの正常群と異常群で糖尿病指標を群間比較した。更に,神経指標と糖尿病指標の数値データを用いて相関分析を行った。Tibial amp,sural ampの異常の割合は各々17%と54%であった。群間比較ではtibial amp,sural amp異常群ともに罹病期間が長かった。Sural amp異常群では尿中アルブミンクレアチニン比が高値であった。相関分析では,tibial ampは罹病期間,足関節/上腕血圧指数,尿中アルブミンクレアチニン比,脛骨神経の運動神経伝導速度は罹病期間,HbA1c,Cペプチド,sural ampは罹病期間,脈波伝播速度,尿中アルブミンクレアチニン比,推算糸球体濾過量,腓腹神経の感覚神経伝導速度は罹病期間と相関を認めた。2型糖尿病患者の下肢の神経障害の進展には罹病期間の長さと強い関連性が示唆された。また,下肢運動・感覚神経の軸索障害には糖尿病に伴う血管障害や腎障害との関連が示唆された。

  • 石田 真理子, 上野 嘉彦, 東 正子, 加藤 洋平, 安藤 穂乃実, 坪井 由佳里, 兼村 信宏, 菊地 良介
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻3 号 p. 587-593
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイト®」における正常対照材料の採取を臨床検査技師が積極的に担うタスクシェア体制の構築とその有用性について報告する。当院ではすでに臨床検査技師による早朝病棟採血を実施しており,この経験が臨床現場での材料採取業務拡大を円滑にした。ヘムサイト®検査においては腫瘍材料(骨髄液)と正常対照材料(口腔粘膜)の同時採取が必要である。そのため検査部が両者を一元的に管理する運用体制を整備した。診療科・病理部・検査部間で役割を明確化し,臨床検査技師が骨髄穿刺支援,正常対照材料採取,乾燥処理,搬送準備までを実施した。これにより,検体採取・処理手技の内部標準化による品質均一化が達成され,検体の迅速な提出と解析精度の安定化が可能となった。さらに,医師・看護師の負荷軽減と検査部の臨床的関与の拡大が実現し,医療現場の効率化に寄与した。今後は,口腔粘膜材料の採取をはじめとする検体採取業務の内部標準化と教育体制の整備を進め,臨床検査技師による検査前工程の品質保証とタスクシェア推進をさらに発展させることが期待される。

  • 石田 秀和, 上野 嘉彦, 宇城 研悟, 藤田 孝, 直田 健太郎, 滝野 豊, 南部 重一, 菊地 良介
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻3 号 p. 594-602
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    臨床検査室におけるITシステム停止を想定した事業継続計画(IT-BCP)の整備状況と教育・訓練の実態を明らかにするため,2025年4月に日本臨床衛生検査技師会中部圏支部6県の臨床検査室を対象にWebアンケートを実施し,120施設から回答を得た。非常用電源の確保(73%)や連絡体制の整備(72%)など初期対応・物理的準備は一定程度進んでいた一方,目標復旧時間の設定(22%)や教育・訓練の実施(41%)は不十分であった。構築方式はオンプレミス型が75%を占め,LISの約半数が外部ネットワーク接続を遮断していたが,LISでのUSBメモリなどの利用は76%で許容され,検査室区域の入退室管理を実施していない施設も58.3%に達した。以上より,IT-BCPはハード面に比べ運用面および物理的管理の整備が遅れており,多層的対策と継続的な訓練による実効性確保が課題である。今後は医療DXを踏まえ,情報セキュリティポリシーに基づく統制の下で,ゼロトラストの考え方を取り入れつつ,クラウド活用に伴う回線冗長化やベンダー連携を含むIT-BCPの具体化が重要である。

  • 市岡 里奈, 米玉利 準, 丹羽 麻由美, 小川 瑞稀, 石田 秀和, 手塚 宜行, 菊地 良介, 馬場 尚志
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻3 号 p. 603-607
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    薬剤耐性菌の蔓延は世界的な公衆衛生課題であり,特にESBL産生大腸菌は第三世代セファロスポリン耐性に加えてフルオロキノロン耐性を示すことも多く,臨床上問題となっている。本研究では,岐阜大学医学部附属病院で2012年から2022年に分離されたESBL産生大腸菌の検出動向およびフルオロキノロン感受性の推移を検討するとともに,2012年と2022年に分離されたESBL産生大腸菌101株を対象とし遺伝子型を解析した。その結果,2012年から2022年においてESBL産生大腸菌は漸増傾向で,フルオロキノロン感受性は2020年以降に緩やかな改善傾向がみられた。2012年と2022年の分離菌のCTX-M型の解析では,両年ともにCTX-M-9 groupが70%以上を占めていたが,CTX-M-9 groupでもCTX-M-1 groupでもフルオロキノロン感受性株が増加していた。これらについて抗菌薬使用状況の変化のほか,伝播株の違いが関連している可能性が考えられ,地域におけるESBL産生大腸菌の動態をより詳細かつ継続的に把握することが必要と考えられた。

  • 外山 真彦, 津久井 明子, 海野 友梨, 廣木 輝雄, 長谷川 雄一
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻3 号 p. 608-613
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    茨城県立中央病院では,輸血検査用採血管のラベル名称を従来の5種類(血液型,不規則抗体,クロスマッチ,Type & Screen[T&S],クームス)から「輸血検査」に統一し,依頼項目略称を併記する運用に変更した。移行期間を除く変更前後1年間の検査依頼状況を比較した結果,オーダー件数は1.5%,検査項目件数は5.1%増加した一方,採血管本数は5,231本,30.8%減少した。検体検索性が向上,交差適合試験用検体の保管期間も1週間から1か月に延長可能となった。また,血液型検査採血管容量を7 mLに変更したことで追加検査や精査に必要な検体量を確保でき,再採血の回避や検査の円滑な実施に寄与した。これらの結果から,ラベル名称統一と容量変更は検体管理の効率化および業務負担軽減に有効であることが示された。

  • 土田 嶺哉, 福住 悠太朗, 澤田 美雪, 井川 紫帆, 島本 亜耶, 兼松 健也, 増田 友紀, 中村 文子
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻3 号 p. 614-620
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    【目的】静脈採血は侵襲性を伴う医療行為であり,安全性と業務効率の両立が求められる。当センターでは作業の効率化と安全性の向上を目的に,翼状針をシュアシールド翼付採血セット(テルモ;TERUMO)からルアーアダプター付きセーフタッチPSVハイフロータイプ(ニプロ;NIPRO)に変更した。各翼状針の形状や流速,採血室の稼働状況,検体品質および使用感の観点から有用性を検証した。【方法】模擬血液を用いてTERUMOとNIPROの流速を測定した。また,2023年4~9月(TERUMO使用期)と2024年4~9月(NIPRO使用期)における外来採血室の待ち時間,採血所要時間,溶血や痛み・しびれの発生率を比較した。さらに,採血担当者18名を対象に使用感に関するアンケート調査を実施した。【結果】形状について,NIPROは内径が広いことが確認できた。流速はNIPRO22G,23G,TERUMO22G,23Gの順に速かった。平均採血所要時間はTERUMO使用期3分25秒に対し,NIPRO使用期は2分55秒と30秒短縮し,平均採血待ち時間も47秒短縮した。溶血率はTERUMO使用期7.5%からNIPRO使用期1.9%へ有意に低下したが,痛み・しびれの発生率に有意差はなかった。アンケートでは血液流入の速さおよび安全装置の有効性が高く評価された。【結語】NIPROへの変更は,採血時間の短縮と溶血率の低下をもたらし,採血室の効率化と安全性向上に有用であった。

  • 池田 卓也, 若杉 ひかる, 末原 有将, 永井 康平, 稲村 真由美
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻3 号 p. 621-626
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    2021年の臨床検査技師等に関する法律の改正により,医師の指示のもとでの生検介助が法整備され臨床検査技師の内視鏡検査への関与が拡大している。そこで,本研究では大阪府済生会中津病院における2014年から2021年までの内視鏡検査データをもとに,生検および内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術による検体採取率また内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術に用いられる内視鏡的粘膜切除術(以下,EMR),コールドスネアポリペクトミー(以下,CSP),コールドフォーセプスポリペクトミー(以下,CFP),ポリペクトミーの手技別内訳を集計し,現状と今後の傾向について検討した。結果は上部消化管内視鏡検査における生検検体採取率は年間約25%で推移し,下部消化管内視鏡検査では減少傾向にあった。内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術による検体採取率は年々増加し,特に2017年を境にCSPの割合が顕著に増加していた。これはCSPの安全性と有効性が認識され,小型ポリープに対する第一選択となっていることが要因と考えられる。一方で,CSPは病理学的水平断端評価が不明となりやすいため,適切な検体処理が求められる。今後,AI技術の導入や診療報酬改定により,内視鏡検査の検体採取率はさらに増加することが示唆される。増加する病理検体採取に伴い,内視鏡介助にて臨床検査技師の検体処理技術など高い専門性を活かすことは今後の内視鏡医療の発展において重要な要素となる。

  • 髙橋 俊介, 白井 健太, 金井 響平
    原稿種別: 資料
    2026 年75 巻3 号 p. 627-633
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    【はじめに】硝子円柱は早期の慢性腎臓病や心腎連関を反映する指標とされるが,日常検査において,尿比重が高い検体で硝子円柱を認めても推定糸球体ろ過量(eGFR)が低下していない症例にしばしば遭遇する。本研究では,尿比重別の硝子円柱出現とeGFRおよび心臓マーカーである脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N末端フラグメント(NT-proBNP)の関係を探索的に検討した。【対象と方法】2022年6月~9月に当院で尿沈渣検査とeGFR測定を行った864検体を対象とした。尿比重1.020を境界とし,硝子円柱出現の有無を組み合わせた4群(①比重低・円柱無,②比重高・円柱無,③比重低・円柱有,④比重高・円柱有)に分類しeGFRおよびNT-proBNP値を比較検討した。【結果】硝子円柱出現群において,尿比重が高い群ほどeGFRは高値を示す傾向があった。4群比較では,③群(比重低・円柱有)のeGFRが他群に比し有意に低値であったが(p < 0.001),④群(比重高・円柱有)は硝子円柱を認めない群と有意差がなかった。一方,NT-proBNPは④群で最も平均値が高く,①群との間に有意差を認めた(p = 0.040)。【結語】尿比重が低値での硝子円柱出現は腎機能低下を強く示唆するが,高比重尿での出現は腎機能低下よりも心負荷を反映している可能性が示唆された。両指標を組み合わせて判断することは,心腎連関の病態把握において有用な指標となることが期待される。

症例報告
  • 橋上 明菜, 河野 浩善, 難波 加代子, 池本 史織, 渡邊 隆徳, 岩田 英里子, 柳田 野乃佳, 関藤 真由美
    原稿種別: 症例報告
    2026 年75 巻3 号 p. 634-641
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    熱中症などの高体温状態では末梢血液像にて“botryoid nuclei”と呼ばれるブドウの房状を呈した白血球の放射状核が認められると報告されている。当院でも,熱中症による白血球の放射状核を認めた2症例を経験した。熱中症における白血球や血小板の形態学的変化やその機序については未だ十分に検討されていないため,今回,高体温状態を人工的に再現し,加温温度と経過時間による白血球数,血小板数及び形態学的変化について検討を行った。その結果,白血球数は加温後に減少傾向を認め,血小板数には一定の傾向を認めなかったが,加温温度及び時間依存性に血小板凝集やフィブリンの析出が確認された。白血球の放射状核の出現は,高体温の中でも40℃以上になると顕著であり短時間の加温でも核の形態異常が確認された。本検討では好中球よりも単球の方が温度による影響を受けやすく,形態変化を来しやすいことが示唆された。また,放射状核を呈する白血球は加温温度及び時間依存性に形態変化を起こし,最終的に脆弱化した細胞はスマッジ細胞の増加として確認された。今後,検討症例及び熱中症を含む高体温の臨床症例を蓄積することで高体温による形態学的変化やその機序,熱中症の病態や重症度との関連について解明されることが望まれる。

  • 毛利 新菜, 有馬 純徳, 長田 昌美, 三嶋 里恵, 森田 奈那, 荒木 猛
    原稿種別: 症例報告
    2026 年75 巻3 号 p. 642-648
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    今回,ペットとして飼育しているトカゲが感染源であると推定された小児サルモネラ菌血症を経験したので報告する。患者は生来健康な幼児期の男児で発熱,下痢,経口摂取不良を主訴に来院した。入院時の血液培養及び便培養からSalmonella O13群を分離した。O13群が爬虫類と関連している可能性があることを主治医に報告し,爬虫類との接触歴を聴取したところトカゲを飼育していることが判明した。患者家族の承諾を得て,トカゲ及び飼育環境を調査したところSalmonella O13群が分離された。パルスフィールドゲル電気泳動(pulsed-field gel electrophoresis; PFGE)にて,患者由来株とトカゲ由来株が同一パターンを示したことから,同一クローンによる感染である可能性が高いと判断された。臨床との連携により,感染源の特定及び患者生活環境改善に寄与することができ,多職種連携の重要性を再認識する機会となった。

  • 櫻木 青, 赤崎 友美, 石山 雅大, 市川 博章, 富田 泰史
    原稿種別: 症例報告
    2026 年75 巻3 号 p. 649-657
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    【はじめに】下肢閉塞性動脈疾患(lower extremity artery disease; LEAD)は,主に動脈硬化により下肢動脈が狭窄・閉塞する疾患である。間歇性跛行はLEADの代表的症状であり,客観的な重症度評価は診断や治療方針の決定において重要である。日本循環器学会2022年改訂版末梢動脈疾患ガイドラインでは,間歇性跛行の重症度評価に運動負荷ABI(ankle-brachial index)が推奨されている。【症例】60歳代女性。腹膜透析通院中に両下肢の間歇性跛行を訴えた。安静時ABIで左下肢の低下を認め,精密検査(エコー・CT angiography)で両側の浅大腿動脈(superficial femoral artery; SFA)に狭窄・閉塞を確認し,LEADと診断された。血管内治療(endovascular treatment; EVT)の適応判断のためレグローダ運動負荷ABIを実施した。負荷60回で左下肢に間歇性跛行が出現し,負荷直後のABIで20%以上の有意な低下を認めた。【経過】左SFAにEVTを施行し,負荷後ABIは改善,間歇性跛行も消失した。【結語】レグローダ運動負荷ABIが,両下肢に狭窄・閉塞を有する患者の治療方針の決定に有用であった一例を経験した。本検査法は,下肢虚血の程度を客観的に評価し,LEADの治療方針決定に有用であると考えられた。

  • 大垣 健太, 小笠原 淳, 曽山 武士, 福田 直也
    原稿種別: 症例報告
    2026 年75 巻3 号 p. 658-663
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    本来,腹水のクレアチニンは血清の値と近似している。しかし,腹腔内に尿が漏出することで生じる尿性腹膜炎では腹水の尿素窒素やクレアチニンが血清の値と比較して著明に高値となることが知られている。患者は大動脈弁閉鎖不全症のため大動脈弁置換術(aortic valve replacement; AVR)を施行され入院中の60代男性。5カ月前に膀胱全摘出回腸導管造設術の既往がある。AVR後数日より腹痛を訴え,経過観察中であったが,採血上の炎症所見高値,腹痛が持続したことから造影CT検査を施行したところ,汎発性腹膜炎が疑われた。腹水の確実なドレナージと腹膜炎の原因究明を目的として試験開腹術を施行し,回腸導管付近から採取した腹水のクレアチニンが28.54 mg/dLと著明高値であったことから尿性腹膜炎が疑われた。しかし,回腸導管からの直接的な尿の漏出は確認できず,ドレーンを留置して閉腹となった。術後はドレーン排液のクレアチニン測定を継続し,術翌日より血清クレアチニン値と近似しており,正常範囲内であった。故に,術後の腹腔内へ新たな尿の漏出は否定され,試験開腹術後2週間で退院となった。腹水のクレアチニンが高値であることから間接的に腹腔内への尿の漏出を証明できた尿性腹膜炎の1例を経験した。泌尿器科手術歴がある患者において原因不明の腹水貯留を認めた際は,腹水のクレアチニンを測定することが診断確定に有用な場合があると考えられる。

  • 上條 途夢, 根岸 達哉, 重藤 翔平, 宮﨑 あかり, 紺野 沙織, 伊波 若葉, 仁科 さやか, 松田 和之
    原稿種別: 症例報告
    2026 年75 巻3 号 p. 664-670
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    BCR::ABL1は9番染色体と22番染色体の転座によって生じる融合遺伝子であり,慢性骨髄性白血病(CML)や急性リンパ性白血病(ALL)で検出される。本症例では,骨髄穿刺液のFISHでBCRABL1BCR::ABL1融合シグナルを各1個ずつ有する細胞を76.4%に認めた。通常使用しているRT-PCRではMajor,minor,micro BCR::ABL1 mRNAは検出されなかった。しかし,ABL1遺伝子のexon 3内にプライマーが設計されたMajor BCR::ABL1 RT-PCRでは増幅が認められ,ダイレクトシーケンス解析にてe14a3 BCR::ABL1と同定された。G分染法では複雑核型であったが,フィラデルフィア染色体を疑う派生染色体を認めた。BCR::ABL1の遺伝子型は,CMLではe13a2とe14a2,ALLではe13a2,e14a2,e1a2の検出頻度が高く,その他の遺伝子型は稀である。本症例は非典型的ではあったがFISHの所見からBCR::ABL1の存在を疑い,最終的にダイレクトシーケンスでe14a3(b3a3)BCR::ABL1を同定した。稀な遺伝子型の場合,RT-PCRに使用するプライマーの設計位置によっては検出できない場合がある。RT-PCRが陰性の場合でも,FISHやG分染法などの染色体検査の結果を踏まえ,総合的に考察することが重要であると考えられた。

  • 岩田 綾子, 天野 ともみ, 松井 奈津子, 林 直樹, 伊藤 英史, 藏前 仁, 大嶋 剛史, 松本 竹久
    原稿種別: 症例報告
    2026 年75 巻3 号 p. 671-677
    発行日: 2026/07/25
    公開日: 2026/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    炭酸ガス依存性メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)による敗血症症例を経験したので報告する。患者は60歳台男性,入院時に採取された血液培養が陽性となり,Gram染色でCluster状のグラム陽性球菌を認めた。平板培地へのサブカルチャーを実施したところ,好気培養条件下では微小コロニーを認め,炭酸ガス培養では明瞭なコロニーを認めた。質量分析計でS. aureusと同定され,薬剤耐性遺伝子検査によりmecAを保有していたことから,抗菌薬はタゾバクタム/ピペラシリンからバンコマイシンに変更された。薬剤感受性試験では,好気培養では菌の発育不良により測定不能であったため,炭酸ガス培養で再検査を行い,菌の発育を確認したのちMRSAと判定し参考値として報告した。さらに,炭酸ガス依存性となる発育特性に着目し遺伝子解析を行ったところ,本菌株にmpsBのナンセンス変異を認めた。本症例は,炭酸ガス依存性MRSAによる敗血症という稀な事例に対し,発育特性を考慮した培養条件の工夫に加え,質量分析や遺伝子検査を併用したことで迅速な診断と適切な治療選択に寄与できた。微生物検査技師は,SCVsの特性を理解し,日頃よりコロニーの観察眼を鍛え,通常株と異なる発育状況に気付くことや,それらの状況を踏まえた適切な検査方法の選択が重要と考える。

feedback
Top