医学検査
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原著
  • 山田 瞳, 髙橋 祐輔, 笹 亮太, 木田 秀幸, 杉田 純一
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻3 号 p. 455-462
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    多発性骨髄腫(MM)の病期判定には改訂国際病期分類(R-ISS)が用いられ,生命予後の推定に必須である。病期はアルブミン,β2-マイクログロブリンとLDの値に加え染色体異常の有無により,stage I~IIIに分類される。しかし,染色体検査は外部委託する施設が多く,病期の判別には日数を要する。そこで我々はMM診断項目のCa,CrやHbにて,従来よりも迅速に病期判定が可能か検討した。対象は,未治療のMM患者88例とした。病期が進行するのに伴いCa,Crは高値,Hbは低値となった。Crで性差を認めたためeGFRにて同様に検討したところ,病期に相応し値は有意に低下した。また,Ca,Cr,HbとeGFRについてMMの診断に用いられるカットオフ値別に各stageの患者割合を調べた結果,90%以上のstage I症例では全項目がカットオフ値内であった。一方,stage IIとIIIでは項目別に傾向が異なり,単項目での病期判定は困難であった。そこで,各項目を組み合わせたスコアリングシステムを構築し,stage分類の妥当性を検証した。ROC解析から求めたstage IIとIIIのカットオフ値はそれぞれ2点(感度93.3%,特異度100.0%),5点(感度100.0%,特異度75.0%)であり,病期の進行につれ有意に高スコアを示した。また,R-ISSと本システムの分類一致率は78.4%と高く,特にR-ISSのstage IとIIIでは全例で本システムと合致した。以上より,MM診断項目のCa,Cr,HbおよびeGFRを用いた本システムでは,従来よりも早期にMMの病期分類が可能であることが明らかになった。

  • 谷村 満知子, 今村 眞治, 中村 広基, 山口 大, 岩井 宗男, 林 裕司, 池本 敏行
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻3 号 p. 463-471
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    目的:ホルマリン蒸気曝露による細胞診固定標本の染色性および細胞形態に及ぼす影響の検証と染色性改善法について検討した。方法:検討材料には子宮膣分泌物の直接塗抹標本と子宮膣分泌物の細胞浮遊液をすり合わせ塗抹した細胞浮遊液塗抹標本をそれぞれコーティング固定したものを用いた。これらの標本を10%中性緩衝ホルムアルデヒド水溶液(以下,ホルマリン)1 mLを浸み込ませたキムタオルとともに密閉容器内に入れ,ホルマリン蒸気に曝露させ,染色性や細胞形態への影響を検証した。我々が考案した炭酸水素ナトリウム処理法(重曹法)によって染色性および細胞形態が改善するかを検討した。成績:細胞診固定標本へのホルマリン蒸気曝露によって,パパニコロウ染色(Papanicolaou stain;Pap染色)の染色性が低下した。重曹法による染色性の回復には,浸漬温度60℃,濃度10%,処理時間3時間で染色性良好,細胞剥離が少数であり最適と考えられた。結論:細胞診固定標本においてホルマリン蒸気曝露がPap染色態度や細胞形態に影響を与えることを実証した。ホルマリン蒸気曝露の染色性改善は重曹法が有効であるが,長時間の浸漬による細胞剥離に注意する必要がある。ホルマリン蒸気曝露予防法として,細胞診標本の搬送は,病理組織検体とは別に梱包して搬送する,あるいは密閉可能なビニール袋等に入れて搬送するなどの工夫が重要である。

  • 中村 星海, 大島 由葵, 日高 愛優, 小森 麻由, 浜村 桃可, 金重 里沙, 本木 由香里, 野島 順三
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻3 号 p. 472-479
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    ループスアンチコアグラント(LA)は,個々の凝固因子活性を阻害することなく,リン脂質依存性凝固反応を阻害する免疫グロブリンと定義される。LAの検出は,抗リン脂質抗体症候群(APS)分類基準における検査所見の1つであり,活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を用いたクロスミキシングテストは,臨床検査室で一般的に行われるLA検査である。近年,直接経口抗凝固薬(DOACs)が,APTTをはじめとする凝固関連検査に影響を及ぼすことが問題視されている。本研究は,4種類のDOACs(dabigatran・rivaroxaban・edoxaban・apixaban)がAPTTクロスミキシングテストに与える影響,DOAC除去剤の有効性,およびスタクロットLAを用いた確認試験の有用性を検討した。その結果,すべてのDOACモデル療法血漿でLA疑いパターンを呈し,index判定でも約98%(63/64例)でLAおよびインヒビター疑いと判定された。DOAC除去剤で処理した血漿では,APTTの短縮は認めたものの,クロスミキシングテストの即時型パターンおよびindex判定にてLA疑いが散見された。一方,APTT系LA検査の確認試験では全例でLA陰性と正しく判定できた。本研究成果より,DOAC療法施行中の患者にLA検査を実施する際は,スタクロットLA試薬を用いた確認試験を行うことが重要であると考えられる。

  • 佐藤 浩司, 松島 充代子, 長谷川 義大, アル・ファリシィ ムハンマド・サルマン, 式田 光宏, 池田 勝秀, 加藤 千秋, 川部 勤
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻3 号 p. 480-487
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    COPDなどの慢性呼吸器疾患では,細気管支を中心とする末梢気道(内径2.0 mm以下)が病態形成に重要になる。COPDではこの部位の病変が気流閉塞に関係し,早期に病変を検出することが重要である。しかしながら,現行の肺機能検査では肺全体の機能を評価するには不十分であり,末梢気道の病変の有無,ならびに部位の特定は難しい。これまでに我々はMEMS(microelectromechanical systems)微細加工技術を用いて経気管支的に末梢気道の観察が可能な小型熱式流量センサを開発・改良してきた。本研究では,末梢気道の呼吸計測を目標として,開発した小型熱式流量センサを用いてヒトの末梢気道と同等の径であるラットの気管で呼吸計測を行った。通常呼吸,気道収縮剤投与およびCOPDモデルラットでの呼吸変化について,呼吸数,換気量や呼吸時間をもとに本センサの評価を行った。ラットの通常呼吸において,本センサにより呼吸数と一回換気量を検出した。気道収縮剤投与による呼吸時間の延長および一回換気量の低下を検出できた。さらに,COPDモデルラットの呼気時間の延長や呼気量の低下も本センサで検出できた。これらの結果より,COPDをはじめとする末梢気道の病変が重要な意味を持つ各種疾患で本センサは診断,重症度ならびに薬剤効果の判定に有用な計測機器となりうると考えられた。

  • 柴田 竜也, 匂坂 博美, 白川 るみ, 薗田 明広, 島田 俊夫
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻3 号 p. 488-495
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    適切な栄養管理を実施するためには,複数の栄養指標や臨床指標をもとにした包括的な判断が必要である。本研究では低栄養患者の適切な栄養管理を目的とし,NST介入時における血液バイオマーカーを予後予測因子として,有用性を後方視的に評価した。当院でNST介入を受けた欠損値のない患者のうち,年齢と性別を傾向スコアマッチングにて調整した176例を対象とした。目的変数を主治医が評価した退院時転帰(良好群,不良群),説明変数をNST回診前の血液バイオマーカー測定値(ALB, ChE, CRP, Hb, RBP, TC, Tf, TLC, TTR, WBC)とし多変量ロジスティック回帰分析を行った。Hb,RBP,TLC,WBCに有意差を認め,この4項目を追加する前と後でモデル間の比較を行い,IDI分析は[0.076 (95%CI: 0.036–0.116), p < 0.001]と極めて良好な結果であった。決定木分析ではTLCが低栄養患者の予後に関わる重要な因子であった。免疫能及び半減期の短い栄養アセスメントタンパクを併用することで,低栄養患者の予測精度が向上した。詳細な栄養評価に関する患者情報を用いたIDI分析および決定木分析により,視覚的な予後予測への応用が大いに期待できる。NST回診前のTLC,RBP,Hb,WBCが退院時の予後に影響を与える重要な予後予測因子であることが判明した。

  • 赤羽 あゆみ, 甲田 祐樹, 藤代 瞳, 副島 勇翔, 服部 公美, 市村 直也
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻3 号 p. 496-503
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    採血室運営において個々の採血技術を適切に評価することは重要である。当院では「採血数」と「採血交代率」の2つの指標を用いた採血技術レベル評価を導入し,技術力を4段階(SS, S, A, B)に分類している。この評価制度は,採血者の技術力を可視化し,採血交代時に適切な採血者を特定する基準として活用している。本研究では,この評価制度の効果とその実際を検証した。技術力の明確化は,採血交代依頼の迅速な実施と,交代請負回数の平準化に有効であった。技術レベルが高い採血者ほど,採血難度の高い患者の採血成功率が高く,また採血所要時間も短かった。職員へのアンケート調査では,本制度に対するポジティブな意見が約6割を占め,制度が概ね受け入れられていることが示された。一方で,ネガティブな意見が約1割存在していることから,管理者が制度を適切に維持し,職員の納得感を得ながら健全な運用を目指すことが求められる。本研究は,採血技術レベル評価が採血者の技術力を客観的かつ定量的に評価する有用な指標であることを示した。この評価制度は,職員の目標設定や再教育に活用され,採血室全体の技術力向上を促進する効果が期待された。このことは,患者の穿刺回数の減少や採血合併症の予防を通じて,患者安全の向上にも寄与する可能性がある。

技術論文
  • 三栖 徹也, 岡田 和大, 中野 桃華, 池田 美咲, 久保山 健治, 井上 賢二, 川野 祐幸, 内藤 嘉紀
    原稿種別: 技術論文
    2025 年74 巻3 号 p. 504-511
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    オートタキシン(autotaxin; ATX)は,肝線維化時には血中濃度が上昇し,従来の肝線維化マーカーよりも早期線維化の鑑別が可能な項目として期待されている。今回,我々は富士フイルム和光純薬株式会社より発売された汎用機器での運用が可能な「ATXオートワコー」の基礎的性能評価及び臨床的性能評価を実施した。測定機器はLABOSPECT 008 α(日立ハイテク)とし,基礎的検討として,精密性・直線性・定量限界・共存物質の影響,相関性(血漿および対照機器・試薬:FEIA法),検体の保存安定性を実施した。また,臨床的性能評価は肝機能が正常かつ,関節リウマチおよび担がん患者を除く240名(男性120名,女性120名)を対象とし,性別・年代別にATX活性値に差があるか検討した。基礎的性能評価は良好であり,臨床的性能評価は既存試薬同様,女性が高値と性差を認め,年代差は認められなかった。検討試薬は,汎用機器での運用が可能なことから導入に対するコスト面も良く,既存試薬と同様の評価ができる試薬と考える。

  • 渡邉 樹里, 加藤 千秋, 鈴木 孝佳, 竹腰 正広, 江村 玲香, 横山 覚, 渡邊 友美, 松下 正
    原稿種別: 技術論文
    2025 年74 巻3 号 p. 512-520
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    【はじめに】IMMUCOR NEO Iris(以下,Iris)は,直接凝集法及びIgG抗体を特異的に測定する固相法(以下,Capture法)を原理とする装置である。今回,Irisを用いて抗A/B抗体価測定の有用性評価を行った。【方法】希釈精度はOrange Gをサンプルとし,IgM抗体価測定時の希釈系列を吸光度測定して評価した。同時再現性は10重測定,日差再現性は5日間の測定で評価した。相関は検査依頼のあった残余検体64検体を用いて試験管法と比較した。試験管法はIgM抗体価では生理食塩液法を行い,IgG抗体価はIAT法(DTT処理後反応増強剤無添加37℃ 60分)を行った。【結果】Irisの希釈精度は128倍まで検討し,誤差は1管差未満であった。同時再現性及び日差再現性はいずれも2管差以内の変動であった。相関における1管差以内の一致率は,IgM抗体価では100%,IgG抗体価ではDTT未処理血漿で89%,DTT処理血漿で98%であった。ただし,IgG抗体価の相関において,特定患者で乖離を認めた。Capture法ではDTT未処理血漿とDTT処理血漿の差は1管差程度であった。【考察】Capture法はIgG抗体に対する特異性が高く,抗体価測定において必ずしも血漿のDTT処理を必要としなかった。Irisは自動希釈機能を有し,試験管法と一致率が高く,抗A/B抗体価測定において有用であった。

  • 米倉 すず, 林 秀幸, 磯崎 将博, 山本 景一, 福吉 葉子, 森 大輔, 中村 朋文, 田中 靖人
    原稿種別: 技術論文
    2025 年74 巻3 号 p. 521-529
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    VRE(vancomycin-resistant enterococci)は感染対策が必須の薬剤耐性菌である。2023年12月に迅速VREスクリーニング培地であるクロモアガーTM VRE blue(CH-blue)が発売された。今回,我々はその培地性能について,BD BBLTM VRE選択培地(BD-VRE)を対照とした比較検討を行った。検討菌株として,vanA又はvanB保有株(7株),プラスミド性耐性遺伝子非保有株(11株),臨床材料として糞便検体(98検体)を使用し,それぞれにおける菌の発育性を比較した。さらに,CH-blueに発育したプラスミド性耐性遺伝子非保有の7株を用いて,CH-blue製造後から時間的経過による発育抑制能を追加検討した。VCM ≥ 16 μg/mLのvanA又はvanB保有株は,CH-blueにおいて24時間の発育が良好かつ視認性に優れていた。VCM ≤ 8 μg/mLのvanB保有株は,BD-VREにおいて低濃度菌量で発育を認めたが,CH-blueにおいて高濃度菌量で発育を認めた。また,プラスミド性耐性遺伝子非保有株の発育抑制能は,CH-blueを用いた48時間以上の延長培養で乏しく,かつ有効期限が迫ったCH-blueで低下することが示唆された。以上の結果から,各培地の特性を理解し,判定期日や施設の状況に即した培地を選択することが重要であると考えられた。

  • 加藤 洋平, 石田 秀和, 立川 将也, 大島 康平, 西村 知, 牛丸 明香理, 大澤 徳子, 菊地 良介
    原稿種別: 技術論文
    2025 年74 巻3 号 p. 530-536
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
    ジャーナル フリー HTML

    Cペプチドは膵β細胞からのインスリン分泌能を反映し,糖尿病患者における内因性インスリン分泌能の評価,特に経時的なインスリン分泌能の変化やインスリン依存状態の目安として用いられる。今回,化学発光酵素免疫測定法を原理とした全自動免疫測定装置HISCL-5000(シスメックス株式会社)を用いて,Cペプチド測定試薬「HISCL C-ペプチド試薬」(シスメックス社)の性能評価を行った。評価内容として,再現性,分析範囲,特異性,血清検体とフッ化ナトリウム加血漿検体との比較,対照法との比較について検討を行った。再現性,分析範囲,対照法との比較において良好な結果を得ることができたが,特異性において高濃度のビオチン存在下で測定値に負の影響が認められた。血清検体とフッ化ナトリウム加血漿検体との比較において相関性は良好な結果が得られたが高値域では若干のバラツキが見られた。また,対照法との相関性については良好であったが,負の傾きが確認された。本検討により日常測定において血清のCペプチド測定試薬として十分に使用可能な性能を有していることが示唆されたが,特に高値領域では試薬間誤差が認められるため,変更を行う際には時系列の管理に注意を要することが示唆された。

  • 一ノ瀨 佑果, 宮本 直樹, 橫山 史美, 梶原 亮佑, 井上 賢二, 河原 明彦, 川野 祐幸, 内藤 嘉紀
    原稿種別: 技術論文
    2025 年74 巻3 号 p. 537-543
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    がん遺伝子パネル検査は次世代シーケンサーを用いたがん関連遺伝子の網羅的解析手法であり,一般的に組織検体を使用するが,血液中のcell-free DNA(以下,cfDNA)を検体とするリキッドバイオプシー(以下,LBx)が注目されている。LBxにおけるcfDNA分析では,採血から分析に至る手順の標準化が課題であり,採血管の種類や保存条件がcfDNAの品質に与える影響についての検証が求められている。健常人10名を対象に3種類の採血管(EDTA-2Na,EDTA-2K,セルフリーDNA抽出専用採血管)に採血を行い,血漿よりcfDNAを抽出後,総DNA濃度を蛍光法で測定し,−80℃で保存した。保存したcfDNAは7日以内,1カ月,3カ月,6カ月後に融解し,電気泳動によるバンドパターンを比較した。その結果,採血管の種類によって総DNA収量に有意差は認められず,−80℃での保存期間や採血管の違いによるcfDNAのバンドパターンの変化も確認されなかった。これらの結果から,EDTA採血管はセルフリーDNA抽出専用採血管の代替として使用でき,cfDNAは−80℃保存で6カ月間その品質を維持できることが示唆された。本研究は,LBxにおけるcfDNA分析手順の標準化に寄与する有益な知見を提供する。

  • 中田 瞳美, 阿部 正樹, 俵木 美幸, 小笠原 洋治
    原稿種別: 技術論文
    2025 年74 巻3 号 p. 544-552
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    成長ホルモン(growth hormone; GH)とインスリン様成長因子1(insulin-like growth factor 1; IGF-1)は,先端巨大症を含むGH分泌過剰疾患やGH分泌不全疾患等の診断および治療効果の判定に用いられている。今回,東ソー株式会社の全自動化学発光酵素免疫測定装置AIA®-CL1200を用い,GHとIGF-1測定試薬の基礎的性能を治療薬の測定系への影響を含めて評価した。その結果,精度,選択性,定量限界,直線性は良好であった。対照法との相関性は,GHとIGF-1ともに良好であったが,IGF-1では1例で乖離が認められた。薬剤添加試験でGH受容体拮抗薬ペグビソマントの影響を評価した結果,本法ではGH値の変動は認められなかったが,対照法でGHの偽高値が認められた。IGF-1測定では,本法と対照法共に変化はなかった。ヒト成長ホルモンアナログ製剤では,添加薬剤濃度に応じて両法共にGH値は上昇したが,IGF-1に変化はなかった。ソマトスタチンアナログ製剤,ドパミン作動薬では,両法共にGHおよびIGF-1値の変化はなかった。本法の基礎的性能は良好であり,特にGH受容体拮抗薬投与患者のGH測定において交差反応を回避できる点で優れていた。また,GHとIGF-1を同一機器で測定できるため,診察前検査を可能とし,迅速かつ適切な治療への貢献が期待される。

資料
  • 岩井 由香利, 北川 文彦, 有嶋 拓郎, 河邊 拓, 尾崎 行男, 伊藤 弘康, 垣田 彩子
    原稿種別: 資料
    2025 年74 巻3 号 p. 553-560
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    救急外来(emergency room; ER)における業務効率化は,患者利益だけでなく医師や看護師の業務負担軽減に繋がる。当院ERの心電図検査は,検査依頼入力から電子カルテによる画像参照までの手順が煩雑であるのに加え,リアルタイム画像送信に対応していなかった。今回,ERにおいてWireless Fidelity(以下,Wi-Fi)を用い,安全かつリアルタイムな画像送信の運用を構築したのでその効果を報告する。現状分析では①検査依頼入力から画像送信まで作業工程が7つあり煩雑である。②患者識別番号(以下,ID)入力間違いによるインシデント発生の可能性や,心電図画像確認作業に時間を要することが課題であった。Wi-Fi運用により①技師による心電図のシステム送信,患者属性の確認,および心電図オーダーへの紐づけ作業が不要となり,作業工程を4つに削減した。②バーコードリーダーによるID読み取りで,患者情報の誤入力防止を可能とした。③リアルタイム画像送信により,迅速な診療に対応が可能となった。④画像送信作業に要する処理時間削減効果は最大70%以上であった。Wi-Fiを用いた運用は,患者情報の誤入力防止や心電図画像のリアルタイム送信を可能とし,ERにおける業務効率向上だけでなく,安全かつ迅速な診療の提供に寄与した。また,記録後の心電図処理や送信作業などに要す時間が大幅に削減され業務負担軽減に繋がった。

  • 細谷 輝月, 横尾 晴花, 土田 嶺哉, 小倉 直也, 中村 文子
    原稿種別: 資料
    2025 年74 巻3 号 p. 561-566
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    2024年7月に発生した血液培養ボトル(バクテック)の供給制限は,本邦の検査体制に大きな影響をもたらした。当センターでは,制限期間中は現在の2セット採取率を維持するべく,1セット目はバクテック,2セット目は代替としてシグナルを使用した(439例)。陽性率は16.2%であり,このうち2セットとも陽性が45.1%,1セット目のみ陽性が42.3%,2セット目のみ陽性が12.7%であった。検出菌種は両者ほぼ同じであったが,陽性までの所要時間は2セット目が遅く,陽性の46.7%が1日以上の遅延であった。血液培養陽性は全例Infection Control Teamが介入しており,汚染と死亡を除く64例について抗菌薬変更の有無をみると,1セット陽性33例中使用抗菌薬を適正に変更したのは13例(39.4%)であった。これに対し,2セット陽性で適正に変更したのは31例中23例(74.2%)と優位に高率であり(p = 0.032),抗菌薬の変更に陽性セット数が判断基準のひとつとして影響していることが示された。従来の静置ボトルの性能は,自動検出機能や抗菌薬吸着機能を有するボトルに比べ限界があるものの,代替としての役割は果たしたと考える。診療の滞りや患者への不都合はあってはならない。今回の非常事態を教訓に,検査室はいかに精度を落とさずに検査室を運営するかを考える機会としたい。

  • 兜森 修
    原稿種別: 資料
    2025 年74 巻3 号 p. 567-573
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    赤血球の加熱初期状態における形態学的変化については明確にされていない。そこで,赤血球への接触加熱温度50℃における短時間の加熱による赤血球の加熱初期の形態学的変化について詳細に判定するため,デジタル画像解析をした。さらに,その細胞の形状,大きさ,出現頻度を算定し,形状,大きさの区分化を試みた。方法はヒトヘパリン加末梢血液6名の全血を用いて加熱血液量250 μL,500 μLの2種類を恒温槽にて加熱後に塗抹標本を作製し,May-Giemsa染色を行い出現する各種の奇形赤血球を形態学的に判定した。結果,加熱前と比較して加熱後は加熱血液量250 μL,500 μLともに奇形赤血球が著しく増加した。加熱時間60秒,90秒,120秒では,区分4の中のその他奇形の細胞が加熱血液量250 μLと500 μLともに各加熱時間の中で最も多く出現していた。細胞形態と細胞の大きさを含めた区分分けをすることは,末梢血液中の奇形赤血球の出現率と全体の分布状態の判定が可能と思われた。

  • 石田 秀和, 立川 将也, 大澤 徳子, 横堀 侑太, 西村 知, 牛丸 明香理, 菊地 良介
    原稿種別: 資料
    2025 年74 巻3 号 p. 574-580
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    臨床検査における内部精度管理(internal quality control; IQC)は,検査結果の信頼性を確保するために不可欠であるが,具体的な実施方法や使用する試料については明確な規定がなく各施設で独自に運用されている。また,ISO 15189:2022では第三者製のヒト由来成分ベース試料を用いることが推奨されている。本研究では,溶解・分注・凍結保存が必要な従来の凍結乾燥試料(旧試料)から,チューブタイプの液状凍結試料(新試料)への変更による有用性を検証した。GA09IIα,HLC-723G11,cobas 8000にて測定を行っている検査項目を対象とし,旧試料と新試料による20日間にわたるIQC運用の室内再現精度(CV%)を比較した結果,いずれの項目でも精度に大きな差は認められなかった。また,新試料では再栓冷蔵保存が可能となり小分け凍結保存や融解・混和作業が不要となった。そのため,測定前の準備時間が従来の週6時間程度から大幅に削減でき,消耗品コストも1測定あたり46円から20円に減少した。一方,新試料のプレラベルバーコードが検査システムに対応せず,ラベル貼り替えや参考値の外部取得が必要などの課題もあった。しかしながら,新試料はインターネット経由で全世界の報告値との比較が容易であり,外部精度評価の代替としても有用である。以上より,チューブタイプの液状凍結IQC試料の活用は業務効率化と精度向上に有用であることが示唆された。

症例報告
  • 梅木 俊晴, 鍋嶋 洋裕, 石隈 麻邪, 坂本 佳子, 於保 恵, 蒲原 啓司, 末岡 榮三朗
    原稿種別: 症例報告
    2025 年74 巻3 号 p. 581-589
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    症例は60代男性。IgA腎症を原疾患とする末期腎不全のために血液維持透析中である。既往歴にはC型慢性肝炎および高血圧症があり,大動脈弁右冠尖逸脱に伴う重症大動脈弁閉鎖不全症に対して生体弁(CEP Magna EASE 23 mm)を用いた大動脈弁置換術(aortic valve replacement; AVR)が施行された。術後2年で労作時の胸部違和感および透析中の血圧低下が出現し,定期外来で行われた経胸壁心エコー図検査(transthoracic echocardiography; TTE)にて生体弁の著明な石灰化と開放制限が認められ,人工弁位の最大血流速度は5.32 m/秒と著明な上昇が確認された。これにより人工弁構造的劣化(structural valve deterioration; SVD)と診断され,機械弁(ATS AP360 22 mm)への再置換手術が実施された。術後経過は良好で,術後21日目に退院した。透析患者では心血管の石灰化や動脈硬化が進行しやすく,より早期にSVDを生じることが報告されている。本症例では術後1年でのTTEにて人工弁位の最大血流速度は2.91 m/秒まで上昇し,術後2年で重症の人工弁狭窄が確認された。透析患者のAVR後には,短期間でのTTEのフォローアップが必要であると考えられた。結論として,透析患者のAVR後のSVDの早期診断には,TTEによる頻繁な経過観察とドプラ指標の変化を見逃さないことが重要である。本症例から得られた知見が,透析患者のAVR後の管理方法の改善に寄与することを期待する。

  • 小堺 智文, 桐井 靖, 原 美紀子, 岩本 拓朗, 中林 徹雄, 横山 彩子, 上條 朋美, 太田 浩良
    原稿種別: 症例報告
    2025 年74 巻3 号 p. 590-596
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    Nuclear protein in testis(NUT)癌はNUT遺伝子の再構成を伴う低分化な稀少癌であり,予後不良である。原発不明癌の状態で胸水細胞診とセルブロックを用いた免疫組織化学(immunohistochemistry; IHC)で診断し得たNUT癌の1例を報告する。患者は90歳代男性で,左上腹部疼痛を主訴として当院を受診した。コンピュータ断層撮影(computed tomography; CT)にて左の胸水貯留が認められ,胸腔ドレナージが施行された。胸水細胞診では,小型~中型の単調な円形異型細胞が散在性あるいは細胞集塊を形成して多数観察された。異型細胞の核は円形~類円形で,核小体は大型であり,細胞質は狭小であった。セルブロック標本のIHCにおいて,異型細胞はp63,p40,NUTが陽性を示し,NUT癌と診断された。胸腔ドレナージ後のCTによる全身検索では原発病変は認められなかった。患者は入院34病日目に永眠された。NUT癌は低分化な細胞像を示すため,細胞診での診断は困難であるが,本症例ではセルブロックを用いたIHCがNUT癌の診断に有用であった。

  • 吉木 理緒, 高野 智晴, 藤原 美穂, 藤原 礼子, 加藤 真由美, 周藤 豊, 中村 陽祐, 内田 靖
    原稿種別: 症例報告
    2025 年74 巻3 号 p. 597-604
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    平衡機能検査はめまいの原因を検索するのに重要であり,眼振の性状やパターンを精査観察することでめまいの原因が中枢性なのか末梢性なのかを鑑別するのに有用な検査である。特に中枢性は命にかかわることがあるため,早期診断,早期治療をすることが重要である。今回我々は,回転性のめまいで発症し,遅発性に小脳症状が出現したAICA症候群の経過を辿った左小脳梗塞の1例を経験したので報告する。症例は59歳の男性で,突如回転性のめまいがあり,当院救急外来を受診した。救急外来受診時,ふらつき,左難聴,左耳閉感,左右側方注視眼振がみられたが,明らかな中枢神経症状はなく,CT検査でも明らかな頭蓋内病変を認めなかった。また,MRI検査でも急性期の脳梗塞は否定的であった。結果,左突発性難聴が疑われ経過観察となったが,入院4日目の夜より左頬の痺れが出現し,翌朝,左顔面神経麻痺が出現した。入院5日目に再度純音聴力検査を行ったところ,入院時より難聴が進行しており,平衡機能検査では中枢性を示唆する眼振がみられた。頭部MRIの再検査で前下小脳動脈領域の小脳梗塞と診断された。脳梗塞は急性期ではMRIやCTなどの画像検査では診断できない場合があるため,難聴やめまいが先行した場合には,その後の小脳症状や平衡機能検査の所見などから総合的にめまいを診断する必要があると考えられる。

  • 戎井 智哉, 中野 かおり, 岸田 由香里, 齊藤 沙耶香, 西本 凌河, 本木 由香里, 野島 順三, 湯尻 俊昭
    原稿種別: 症例報告
    2025 年74 巻3 号 p. 605-612
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    抗リン脂質抗体を有したびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の症例を経験したので報告する。症例は80歳代男性,背部痛を主訴に近医を受診,多発骨腫瘤を指摘された。PET-CT検査でFDG高集積リンパ節腫大を認め,精査加療目的に当院紹介となった。入院時検査でAPTT:61.0 sec,IgM:1,239.3 mg/dL,sIL-2R:2,608 U/mLと異常値を認め,免疫固定法でIgMκ型とIgMλ型のM蛋白が同定された。リンパ節生検でCD5,19,20陽性の細胞集団を認め,病理検査にてDLBCLと診断された。APTT延長の精査として,クロスミキシング試験は即時型,遅延型共にインヒビターパターン,希釈ラッセル蛇毒時間法:1.27,ELISA法にてIgM型抗カルジオリピン抗体(IgM型aCL)のみ陽性であったが,血栓症の既往無く抗リン脂質抗体症候群の診断には至らなかった。入院日よりデキサメタゾン投与と局所放射線治療が開始されると症状は改善,その後リツキシマブ併用化学療法が行われた。IgM値低下と共にAPTT正常化した経過よりAPTT延長はIgM型aCLが原因であり,ELISA法の測定原理からβ2GPI非依存性aCLであったと推測された。M蛋白を有する症例では,検査結果の適切な解釈が重要である。また,IgM型M蛋白を伴ったDLBCLは予後不良との報告があり,今後の経過には注意が必要である。

  • 桜田 菜奈, 築地 秀典, 宮﨑 勢子, 百田 裕香, 松下 義照, 飯野 忠史, 吉本 五一, 久保田 寧
    原稿種別: 症例報告
    2025 年74 巻3 号 p. 613-620
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(myelodysplastic/myeloproliferative neoplasms; MDS/MPN)は,MDSとMPN双方の特徴を併せ持つ。今回,5番染色体長腕の欠失(del(5q))に加えてMPNで高頻度にみられるJAK2V617F変異を認めた2例を経験した。症例1は60歳代女性,赤血球・血小板増多で来院。血球3系統が増加し,JAK2V617F陽性であった。骨髄は過形成で,小型で低分葉核の巨核球が増加し,単独のdel(5q)を認めたが,MDSの基準に合致せず,MDS/MPNと診断した。症例2は70歳代,男性。大球性貧血で紹介されたが,軽度の血小板増多もあり,JAK2V617Fが陽性であった。骨髄は正形成で,好中球に偽Pelger核異常があり,小型で低分葉核の巨核球が増加していた。染色体検査でdel(5q)の他,複数の核型異常を認め,MDSと診断した。症例1・2とも低芽球比率と5番染色体長腕欠失を伴うMDS[MDS del(5q)]に特徴的な巨核球形態を呈し,血小板数の増加を加味するとdel(5q)の存在を疑うことは可能と考える。しかし,del(5q)以外にもJAK2V617F変異や染色体異常がある場合,末梢血所見や骨髄像がMDS del(5q)とは異なり,必ずしも定型的診断とはならない。細胞遺伝学的・分子生物学的情報の検索による適切な診断が必要である。

  • 杉江 麻真, 寺田 教彦, 野竹 重幸, 阿部 真理子, 池田 栞里, 田山 広大, 中村 浩司, 人見 重美
    原稿種別: 症例報告
    2025 年74 巻3 号 p. 621-627
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    カルバペネマーゼ(carbapenemase; CP)産生腸内細菌目細菌が産生するCPには様々な種類があり,海外では地域によって優勢な型が異なっている。今回,海外渡航歴のない高齢日本人で,ニューデリーメタロ-β-ラクタマーゼ-5(New Delhi metallo-β-lactamase-5; NDM-5)を産生し,ペニシリン結合蛋白3の変異を持つEscherichia coliによる腎盂腎炎を経験したので報告する。患者は,左腎盂尿管移行部狭窄症がある介護施設入所中の84歳男性で,発熱と腹痛のため入院した。身体所見と腹部CT検査から左閉塞性腎盂腎炎と診断し,尿管ステント留置とセフトリアキソン投与を行った。入院翌日には症状が改善したものの,入院時に採取した血液培養と尿培養からCP産生E. coliを検出したため,入院4日目より抗菌薬をホスホマイシン静注に変更し,入院18日目まで投与した。検出したE. coliは,シーケンス型がST410で,blaNDM-5遺伝子を持ちそれがIncX3型プラスミド上に存在し,ペニシリン結合蛋白3に変異(p.P333_Y334insYRIN)があった。国内で検出されるE. coliのうち,ST410に属するもの,およびペニシリン結合蛋白3に変異があるものの疫学調査はほとんど行われておらず,今後調査が必要と考える。

  • 小泉 達也, 林 亮, 中嶋 菜緒美, 小林 真二, 山崎 正明, 矢口 貴志
    原稿種別: 症例報告
    2025 年74 巻3 号 p. 628-633
    発行日: 2025/07/25
    公開日: 2025/07/25
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    Candida allociferriiStephanoascus ciferrii complexの一種として提唱された稀な酵母様真菌であり,国内における分離例は眼窩内膿瘍からの1例のみが報告されている。今回,C. allociferriiによる外耳道真菌症の1例を経験したので報告する。症例は50歳代男性。右耳の掻痒感及び耳漏を主訴に受診し,耳漏検体が提出された。培養1日目では培地上に微小なコロニーを認め,コロニーのグラム染色及び延長培養を行った。グラム染色では菌糸の片側に胞子が並列する酵母様真菌が観察され,培養5日目の培地には皺があり,めり込んだように発育するコロニーを認めた。これらのグラム染色像やコロニーの形態は主要なCandida属との鑑別点になる可能性が示唆された。生化学的性状及び質量分析法による同定では正確な菌名を得られなかったが,ITS及びD1/D2領域の塩基配列解析により,C. allociferriiと同定した。本菌の正確な菌種同定には塩基配列解析が有用と考えられた。薬剤感受性に関して,本菌はアゾール系抗真菌薬に耐性傾向を示すとの報告があり,本症例においてもfluconazoleのMICが高値となった。侵襲性カンジダ症ではfluconazoleが第一選択薬として使用されることもあり,形態的特徴や培養所見から菌種を推定し,迅速に報告することが治療の一助になると考えられる。

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