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髙松 泉, 横下 佐矢加, 矢野 風音, 藤井 さやか, 乾 淳子, 中尾 美香, 真鍋 ひでみ, 吉本 和子
原稿種別: 原著
2026 年75 巻4 号 p.
689-702
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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潜在性左室内狭窄には左室流出路狭窄(潜在性LVOT狭窄)と心室中部狭窄(潜在性MV狭窄)があり,安静時には狭窄は認めず負荷により狭窄が出現し,胸痛やめまい,意識消失症状などの原因となる。本研究は心エコー図検査データを用いて潜在性左室内狭窄の出現に関連する因子を統計学的に検討したので報告する。有意差検定,ROC解析,単変量および多変量解析,クロス集計の結果,潜在性LVOT狭窄は,LVDd,LVDs,安静時LVOT-PSV,LVOT dagger-shaped波形で有意差があり,多変量解析でもLVDdが関連した。LVDd < 37.5 mm,安静時LVOT-PSV ≥ 1.5 m/s,LVOT dagger-shaped波形の出現は潜在性LVOT狭窄の可能性を示唆した。潜在性MV狭窄は,sigmoid septum,IVSd,LVPWd,RWT,LVMI,LVH,LVESV,LVEF,LAVI,A波,Dct,E/e',Valsalva時LVOT-PSV,安静時MV-PSV,MV dagger-shaped波形で有意差があり,多変量解析ではsigmoid septum,LVPWd,LVEDVが関連した。Sigmoid septumの存在,LVPWd ≥ 11.5 mm,安静時MV-PSV ≥ 1.2 m/sは潜在性MV狭窄を示唆した。これらの特徴を認める症例では潜在性左室内狭窄の存在を積極的に評価する必要がある。
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東影 明人, 川下 隆二, 青江 伯規, 大塚 文男
原稿種別: 原著
2026 年75 巻4 号 p.
703-712
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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岡山大学病院では外来患者の多い曜日や時間帯には,院内駐車場の渋滞や院内各部署で待ち時間が長くなる傾向がある。採血室では午前8時から10台の採血台(2台は化学療法前の優先採血用)で採血を行っているが,採血開始前から100人以上が待っていることもあり,「待ち時間が長い」といったご意見が寄せられることが度々あった。このような状況を改善するために,混雑した待合いで長時間待つことなく,採血以外の検査などへ移動することで待ち時間を有効に活用できるように,スマートフォンなどで病院内外を問わずリアルタイムで採血待ち状況が確認できるYouTubeライブ配信を2022年6月20日より開始した。なお,ライブ配信に必要なStreamlabs Desktopなどのソフトウエアや機材などを職員自らが準備・設定を行い,ライブ配信の仕組みを構築することで,コストを抑えつつ,現場のニーズに即した柔軟な運用が可能となっている。YouTubeチャンネルの登録者数は,岡大病院アプリ「コンシェルジュ」(以下,岡大病院アプリ)からYouTubeライブ配信を視聴できるよう設定したこともあり2025年12月末時点で161人にとどまった。同時点における岡大病院アプリの登録者数は13,582人であり,これと比較するとYouTubeチャンネル登録者数の増加は緩やかであった。
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長岡 裕李, 遠藤 康弘, 小堺 利恵, 髙橋 伸一郎
原稿種別: 原著
2026 年75 巻4 号 p.
713-720
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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本研究では,採血室利用者における待ち時間の実態と改善ニーズを把握することを目的として,アンケート調査を実施し,クラスター分析を用いて評価傾向の分類を行った。調査は,2024年11月18日から11月29日までの10日間に,当院採血室を利用した外来患者およびその付き添いを対象に,無記名自記式アンケートにより実施した。有効回答数は1,568件であった。その結果,整理券配布までの待ち時間の平均は17.79分,整理券配布後から採血実施までの待ち時間の平均は27.14分であり,それぞれ約半数および約60%の利用者が「長い」と感じていることが明らかとなった。また,「長い」と感じる時間の目安はそれぞれ約16分および約25分であった。待ち時間短縮策としては,採血者数や採血台数の増加を求める意見が多くみられた。さらに,クラスター分析により,待ち時間を長いと評価する群と比較的許容的な群に分類され,待ち時間を長いと感じる群では改善策への要望が強い傾向が認められた。以上より,採血室における待ち時間は患者満足度に大きく影響する要因であり,クラスター分析は利用者の評価傾向を把握し,業務改善の優先順位を検討するうえで有用な手法である可能性が示唆された。
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徳永 裕介, 中川 禎己, 田中 美月, 清水 健太, 塔村 亜貴, 山下 美香, 米田 登志男
原稿種別: 原著
2026 年75 巻4 号 p.
721-728
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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尿沈渣検査においてヘモジデリン顆粒を検出することは発作性夜間血色素尿症などの血管内溶血を示唆する有用な所見となるが,自動分析装置を用いた報告は現状では認めない。全自動尿中有形成分分析装置UF-5000(以下,UF-5000)においてヘモジデリン顆粒陽性検体に特徴的な検出パターンを認めたことから,その出現を推測するパラメータの確立を目的とした検討を行った。検討内容はヘモジデリン顆粒陽性群と陰性群についてRBCヒストグラムおよびBACTスキャッタグラムにおける検出パターンの評価,2群間におけるDEBRISの比較およびreceiver operating characteristic(ROC曲線)によるカットオフ値の算出を行った。結果,ヘモジデリン顆粒陽性群の多くにRBCヒストグラムの小型領域に高く鋭いピーク,BACTスキャッタグラムのY軸に対して真っすぐのびたドットの集団を認め,この特徴的な検出パターンを呈した検体ではDEBRISが有意に高い傾向を示した。DEBRISのカットオフ値を2,471.8/μLとした場合,感度66.7%,特異度91.4%,陽性的中率89.7%,陰性的中率71.1%を得た。本検討によってUF-5000のパラメータであるRBCヒストグラム,BACTスキャッタグラム,DEBRISに着目することはヘモジデリン顆粒出現を推測できる有用な情報となることが示唆された。
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髙木 望波, 金重 里沙, 日高 愛優, 石丸 春奈, 本木 由香里, 野島 順三
原稿種別: 原著
2026 年75 巻4 号 p.
729-734
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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抗リン脂質抗体症候群(APS)は,自己抗体である抗リン脂質抗体が産生されることにより,動脈・静脈血栓症や妊娠合併症など多彩な病態を呈する自己免疫性血栓塞栓性疾患である。近年,APSの病態には獲得免疫系のみならず自然免疫,特に好中球の関与が注目されているが,抗リン脂質抗体と好中球の活性化およびアポトーシスとの関連は十分に解明されていない。本研究では,ヒト末梢血多核白血球培養系を用い,抗リン脂質抗体による好中球の活性化(細胞表面分子Mac-1の発現増加およびL-セレクチンの発現低下)およびアポトーシス誘導について検討した。その結果,IgG-抗リン脂質抗体の存在下でMac-1(CD11bおよびCD18)の発現増加およびL-セレクチン(CD62L)の発現低下が認められた。また,同一条件下で初期アポトーシス細胞比率の有意な増加を確認した。以上より,抗リン脂質抗体は好中球の活性化とアポトーシス誘導を並行して引き起こす可能性が示唆された。本研究は,抗リン脂質抗体による好中球応答を包括的に評価し,APSの病態理解に新たな知見を提供するものと考えられる。
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松木 美貴, 髙橋 涼, 川良 徳弘, 植松 杏奈
原稿種別: 原著
2026 年75 巻4 号 p.
735-742
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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心臓超音波検査は,心臓解剖の理解と正確なプローブ操作が不可欠である。初学者にとって三次元構造を超音波画像として把握することは難しく,描出技術の習得には時間を要する。本研究では,学生および初学者を対象とした心エコートレーニング用ファントムを開発し,基本断面の描出性能および教育ツールとしての有用性を検討した。開発した心臓モデルは,ヒト心臓から型取りされた心臓模型をコンピュータ断層撮影(CT)により撮影し,画像データから3Dプリンタを用いて製作した。作成したファントムの描出性能を評価するため,心エコー検査を実施している臨床検査技師5名が評価者として,各断面の描出しやすさを5段階リッカート尺度にて評価した。初期モデルの1次評価では,心臓周囲の素材量が多くプローブ操作が困難であり,特に心尖部四腔断面が斜めに描出されるとの指摘があった。これらの結果を踏まえ,心臓周囲素材の削減および形状調整を行い,改良モデルを製作して同一評価者による2次評価を実施した。その結果,心尖部四腔断面はより直線的に描出され,心尖部長軸断面および二腔断面も概ね良好に描出可能となった。一方で,乳頭筋や腱索などの構造再現に関する課題が指摘された。本ファントムは複数の基本断面を再現可能であり,反復学習を可能とすることから,心エコー検査の基本手技習得およびスキル維持に向けた教育ツールとして活用できる可能性が示唆された。
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村越 大輝, 青地 佑, 白川 るみ, 薗田 明広
原稿種別: 原著
2026 年75 巻4 号 p.
743-750
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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本研究では,生化学検査項目を対象に外部精度評価(EQA)および内部精度管理(IQC)データを用いてシグマメトリクスを算出し,選択する許容総誤差(TEa)基準および濃度域の違いが評価結果に及ぼす影響を検討した。対象は2025年度に日本臨床衛生検査技師会のEQAに参加した25項目で,各項目について低濃度域および高濃度域のBiasと変動係数(CV)を算出し,米国臨床検査改善法(CLIA)およびWestgard QCのTEaに基づきシグマ値を求めた。その結果,両基準間で全50データ中17データ(34%)にシグマ分類の不一致が認められ,採用するTEaにより品質評価が大きく変動することが示された。一方,シグマ値の相関は中等度であり(r = 0.565),濃度域におけるシグマ値の増減方向は88%で一致した。濃度域の違いについては,低濃度域でCVが高くなる傾向が認められ,同一項目でも濃度によりシグマ値が変動した。これらの結果から,シグマメトリクスを用いた分析性能評価においては,目的に応じた適切なTEaの選択と,濃度域を考慮した多面的な評価が不可欠であると考えられた。さらに,得られたシグマ値を基にIQCルールを最適化することで,過剰なIQCを回避しつつ合理的な品質管理が可能となることが示唆された。
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池田 勝秀, 福田 健太, 坂部 名奈子, 佐藤 正一
原稿種別: 原著
2026 年75 巻4 号 p.
751-760
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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本研究は,薄切技術の客観的評価方法を確立し,主観的評価に依存していた従来の技術力管理の標準化に寄与することを目的とする。共焦点レーザー顕微鏡と三次元画像解析ソフトを用いて,ヒト試料の代替として安定供給可能な市販加工食品を試料とした切片厚計測法を構築し,測定特性および各種影響因子を検討した。さらに,本手法を用いて業務経験者と未経験者の薄切技術および面出し技術の差異を数値化し,比較検証を行った。本手法による切片厚計測値のばらつきは0.205 μm,変動係数5.1%と比較的良好な再現性を示した。一方で,切片伸展操作により計測値は有意に低下し,厚い切片では大きな影響を受けた。また,レーザーの高強度化は計測値の上昇をもたらした。さらに,標本保管期間の延長に伴い計測値は上昇し,組織部位の違いによっても最大約0.95 μmの差が認められた。これらはいずれも計測値のばらつきを上回り,計測条件統一の重要性が示された。技術力評価では,経験者は一定の切片厚で安定して作製したのに対し,未経験者はばらつきが大きかった。また,面出し率は経験者で有意に高く,面出し技術の定量評価が可能であることを示した。本手法は一定条件下で実施することで高い再現性を有し,薄切および面出し技術を客観的指標として評価・管理できる有用な方法であり,内部・外部精度管理や教育評価への応用が期待される。
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河上 香織, 青山 英和, 富永 新平, 見田 久, 亀谷 良介
原稿種別: 原著
2026 年75 巻4 号 p.
761-766
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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【目的】高齢化に伴う心不全の急増により,検査リソースの限界や採血結果判明までの時間が課題となっている。2025年日本循環器学会ガイドラインでは早期発見のNT-proBNPカットオフ値が引き下げられ,スクリーニングの重要性が増している。本研究では,心音心電図AIシステム(以下,超聴診器)の判定とNT-proBNP値の相関を検証した。【方法】当院外来の225例を対象に,AI心負荷判定(5段階)とNT-proBNP値(125/300/400/900 pg/mL)の相関および診断精度を解析した。また900 pg/mL超を目的変数とし,年齢,性別,BMI,eGFR,心房細動を調整した多変量ロジスティック回帰分析を行った。【成績】AI判定とNT-proBNP値は有意に相関し(rs = 0.599, p < 0.001),段階的に上昇した(p < 0.0001)。閾値上昇に伴いAUCは0.72~0.84へ向上し,900 pg/mL基準の陰性的中率は94.9%であった。多変量解析では交絡調整後もAI判定(B以上)は独立した予測因子であった(オッズ比:9.28,95%信頼区間:3.53–24.37,p < 0.001)。【結論】超聴診器によるAI心負荷判定はNT-proBNP値と良好に相関した。本システムは,検査リソースの限られた現場等で客観的な「診断の道筋」を提示し得る,非侵襲的かつ有用なツールになる可能性がある。
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小田嶋 広和, 大西 崇文, 大澤 幸希光, 鶴山 竜昭, 中川 菊一, 相澤 里奈, 服部 学
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
767-772
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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目的:病理・細胞診検査における真菌染色のコントロール標本は臨床検体の余剰組織が用いられてきたが,組織内の不均一性や供給の不安定さ,倫理的課題が指摘されている。本研究では入手容易な市販のカマンベールチーズ(以下,チーズ)を用い,真菌に対する特殊染色の学生実習用コントロール標本の作製法を確立することを目的とした。方法:チーズを10%中性緩衝ホルマリンにて固定後,アルギン酸ナトリウム法を用いてセルブロックを作製した。得られた切片に対し,①作製直後,② 3年間の長期暗所保存後,③他施設(自動染色機を使用)の3条件下でグロコット染色およびPAS反応を実施し,染色性と保存性の評価を行った。結果:①~③の検討条件において,真菌が明瞭に染色され,過染などの判定を阻害する所見もなく,良好な形態学的観察が可能であった。これにより,本法によるコントロール標本作製法の長期保存性と施設間における再現性が実証された。結論:非臨床材料としてチーズを用いた本法は,倫理的制限がなく入手も容易であるため,実習において有用な特殊染色コントロールとなり得ることが示唆された。将来的な展望として臨床における特殊染色の手技標準化や教育現場への寄与が期待される。
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斎藤 彩香, 五十嵐 久喜, 北山 康彦
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
773-783
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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われわれは,先行特許技術(第6367741号)であるコントロール作製法を応用し,免疫染色における高信頼性コントロールを考案した。これまでの先行特許技術では,単一症例または無作為に積層した複数症例の切片を集積したコントロール作製法であった。しかし冷虚血時間や固定条件などによる検体の状態,栄養状態や細胞の分化状態,さらには遺伝的要因やHeterogeneityなどの生物学的差異によるタンパク質発現の症例間のバラつきという根本的な問題に言及していない。そこで,われわれは,正常ならびに腫瘍組織において,タンパク質発現のバラつきを標準化することを目的に,必要な組織部位のみを厳選して再集合させる部位選択性による信頼性の高い品質管理のためのコントロールを作製し,その有効性を検証した。本研究で用いるコントロールは,標的タンパク質の発現多様性を意図的に反映したものであり,具体的には,複数症例から標的領域(腫瘍)の選択を必須とする特異的なサンプリングデザインを考案することで,症例間における自然な発現のバラつきを包括的(網羅的)にとらえることを重視した。これにより,統計解析の信頼性が向上するのに加え,免疫染色の定量化や異なる実験間および施設間での比較においてきわめて有用なベンチマークとして機能すると考える。
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黒田 志保, 佐藤 政季, 杉江 昌男, 山﨑 啓介, 上村 のり子, 久留島 幸路
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
784-789
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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Staphylococcus属菌ではClindamycin(CLDM)がErythromycin(EM)と交差耐性を示すことがあり,CLDM誘導耐性試験による確認が必要である。当院では微生物感受性分析装置IA60Fによる微量液体希釈法(18時間培養)を採用していたが,精度管理調査においてStaphylococcus属菌CLDM誘導耐性偽陰性を経験したため微量液体希釈法とD-zone testの比較検証を行った。対象は2023年11月~2024年6月に臨床分離されたStaphylococcus属菌557株のうち,微量液体希釈法(18時間培養)でEM耐性,CLDM感性または中間,かつCLDM誘導耐性試験陰性の35株とした。35株中8株がD-zone test陽性であり,偽陰性率は22.9%であった。微量液体希釈法の培養時間を24時間へ延長すると偽陰性率は2.9%まで改善した。偽陰性の一因として,誘導耐性の成立遅延によりCLDMの作用で一時的に菌の増殖が抑制された可能性が示唆された。また,24時間培養でも偽陰性となった1株では,EM/CLDM併用ウェルのEM濃度を4 μg/mLから8 μg/mL相当に増量することで誘導耐性が確認された。微量液体希釈法では誘導耐性を見逃す場合があり,陰性判定時には培養時間延長またはD-zone testの併用が有用であると考えられた。
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玉井 佑弥, 兵頭 直樹, 和田 裕貴, 尾崎 萌, 渡邉 拓, 石丸 美架, 亀岡 千映子, 木藤 克己
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
790-802
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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免疫組織化学染色(IHC)は病理組織診断およびコンパニオン診断に不可欠な手法であるが,検査依頼ごとに陽性コントロールを薄切する運用では,作業効率の低下や貴重な試料の過剰消費が問題となるため,本研究においてIHC工程のターンアラウンドタイム(TAT)短縮と陽性コントロールの消費量削減を目的に,あらかじめ陽性コントロール切片を貼付した未染色スライドを使用し,パラフィンコーティング(PC)の有無,保存環境(−80℃,4℃,室温,室温+UV-C照射),および保存期間(薄切後1日,1か月,3か月)がIHCの陽性率に及ぼす影響について検討した。その結果,未染色スライドの長期保存には紫外線の影響を避けるために遮光が必須であるが,遮光および温湿度が適切に管理された条件下では,PCの有無が抗原性に及ぼす影響は極めて限定的であることが明らかとなった。また,薄切3か月後でも陽性コントロールとして使用可能な条件は抗体によって異なり,抗Ki-67抗体では「PCあり・−80℃保存」の1条件のみであったのに対し,抗p53抗体ではPCの有無にかかわらず「−80℃,4℃,室温保存」の3条件で良好な結果が得られた。本研究の結果より,PCの有無や保存条件がIHCの染色性に与える影響が明らかとなった。今後は対象抗体を拡充し各抗体特性に応じた保存条件の最適化を図ることで,標本提出までのTAT短縮と陽性コントロールのさらなる節約が可能と考える。
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興梠 陸人, 川上 洋子, 赤田 憲太郎, 中園 朱実, 山口 絢子
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
803-810
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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脂質好性菌であるMalassezia属菌やCorynebacterium属菌は,カテーテル関連血流感染症などの原因菌となるが,通常の培地では発育が不良である。本研究では,界面活性剤Tween 80の添加がこれらの菌の発育に及ぼす影響を検討した。羊血液寒天培地およびGAM半流動高層培地を用い,Tween 80添加量(未添加,1滴,2滴)による発育能を比較した。試験菌はStaphylococcus aureus,Escherichia coli,Pseudomonas aeruginosa,Candida parapsilosis(以下,一般細菌・真菌),およびCorynebacterium kroppenstedtii,Corynebacterium macginleyi,Malassezia furfur(以下,脂質好性菌)とした。評価はミスラ法,増菌培養後の発育能および形態学的特徴の観察で行った。一般細菌・真菌4菌種において,Tween 80添加による発育能やコロニー形態への影響は認められなかった。一方,脂質好性菌では添加群で明らかな発育促進を認めた。特にM. furfurは,増菌培地中の微量脂質で増殖したものの,平板培地でのコロニー形成にはTween 80の直接添加(1滴:約20 μL)が不可欠であった。Tween 80添加法は,既存の検査系を阻害することなく脂質好性菌の検出向上と検査期間短縮を可能にする。増菌過程から平板培地への接種に至る一連の工程に本法を導入することは,臨床検査において有用である。
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安岐 優伽, 鈴木 敦夫, 城田 紗希, 鷹羽 美穂, 桂木 裕実, 加藤 千秋, 松下 正
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
811-819
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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クロスミキシングテスト(cross mixing test; CMT)は,凝固時間延長の原因検索に有用な2次スクリーニング検査である。名古屋大学医学部附属病院においてAPTT測定試薬をトロンボチェックAPTT-SLA(TC)からレボヘムAPTT SLA(Rev)(シスメックス株式会社)へ変更したところ検査件数が増加したためその詳細について後方視的解析を行った。CMT判定の内訳は,TC群では凝固因子欠乏型が35例(62.5%),インヒビター型が19例(33.9%),遅延型インヒビター型が2例(3.6%)であった。一方,Rev群では凝固因子欠乏型が31例(34.4%),インヒビター型が57例(63.3%),遅延型インヒビター型が2例(2.2%)であり,相対的にインヒビター型と判定された症例が増大の主群と示唆された。一方で,判定が追加検査所見と一致しない症例も認められ,特にRev群では凝固因子欠乏型と判定されたものの,ループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant; LA)が陽性であった症例が5例認められた。これらの症例の多くは凝固時間の延長が比較的軽度であった。CMT依頼件数の増加は,LA陽性検体の検出頻度が上昇したことが原因と推察された。Rev群では判定が他の検査所見と乖離する症例が相対的に多く,判定を過信せず慎重に結果を解釈する必要があると考えられた。
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立川 将也, 石田 秀和, 神戸 歩, 横堀 侑太, 牛丸 明香理, 吉沢 颯真, 白上 洋平, 菊地 良介
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
820-828
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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臨床検査における内部精度管理において,測定系の潜在的バイアスを検出するためメーカーから独立した第三者管理物質の導入が推奨されている。本研究では第三者管理物質の有用性を,患者データに基づくeven check法より算出されるR値(患者R値)を客観的指標としてメーカー専用管理物質と比較検証した。cobas 8000 e801を用い,FT4,FT3,CEA,PSA,フェリチンなど計8項目について,第三者管理物質と専用管理物質を同タイミングで並行測定し,特定イベント前後のシフトおよびトレンド評価期間における推移を解析した。FT4,FT3,CEAにおいて,第三者管理物質は専用管理物質と同等の感度で測定系のシフトを検出し,患者R値と概ね良好な一致を示した。PSAでは両管理物質が一致した有意な上昇トレンドを示し,患者R値に影響が現れる前に測定系の変動を早期に検知した。フェリチンでは患者R値および専用管理物質が安定する中,第三者管理物質のみに特異的な上昇トレンドを観察し,当該トレンドを契機に試薬交換を実施したところ,トレンドは改善した。第三者管理物質は鋭敏な検出能力を持つ早期警戒ツールとして臨床的に有用となり得るが,その検出感度の高さゆえに真の試薬変化とマトリックス効果との判別が困難になる場合があるため,患者データを用いたリアルタイム精度管理との並列運用による多角的な検証が推奨される。
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箕浦 直人, 岡田 悠生, 鈴木 誠也, 阪田 菜穂, 神藤 洋次, 松岡 孝昭
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
829-833
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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【目的】当院においてトロンビン・アンチトロンビン複合体(TAT)測定時に,初回値と希釈再検値で大きな乖離を示す偽高値事例が散発した。本検討では,当院で発生したTAT測定における偽高値事例について,発生要因をプレアナリティカルおよび測定系の両面から系統的に検証し,原因を特定するとともに,再発防止策を構築することを目的とした。【方法】全自動血液凝固測定装置CN-6000を用い,偽高値が発生した事象に対して,機器の同時再現性試験,キャリーオーバー(コンタミネーション)試験,回避洗浄設定の検討,および採血管キャップの状態(開栓・リキャップ)による影響を検証した。【結果】プール血漿の同時再現性(CV 5%以下)およびキャリーオーバー(コンタミネーション)試験では異常を認めなかった。しかし,採血管キャップを開栓して測定したところ偽高値が解消され,再度リキャップして測定すると偽高値が再現された。【結論】偽高値の主因は,採血管キャップ外側に付着した残存血液がピアッシング時に検体内に混入したことであった。対策として,キャップ残血の除去確認,ピアッシング回数の制限,および必要に応じた開栓測定の実施が有効である。
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藤岡 莉子, 阿部 公一, 藤田 由紀, 宮川 慧大, 郡 健一朗
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
834-844
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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希少疾患診断において遺伝子検査は重要であり,臨床では病原性変異の迅速かつ正確な同定が求められる。従来のサンガーシークエンスは標的領域ごとの個別増幅が必要であり,ショートリード型次世代シークエンスではライブラリ調製など前処理が複雑で,多数検体の同時解析に伴う工程管理が課題となる。本研究では,基本的に常染色体潜性遺伝である家族性地中海熱の原因遺伝子であるMEFV遺伝子をモデルとし,単一遺伝子解析におけるOxford Nanopore Technologies社ロングリードシークエンス技術の有用性を検証した。全遺伝子領域を含む約15.2 kbをPCR増幅し,Flongleフローセルでマルチプレックスアンプリコンシークエンスを実施した結果,前処理から解析までの工程が大幅に簡略化され,3日で解析が完了し,少数サンプルでも効率的に運用できた。同一リード内で複数変異を捉え,cis/transのフェージングも可能であった。ヒト標準ゲノムを用いた精度評価では,DeepVariantでCDS領域におけるF1スコアが1.0を示した。また,サンガーシークエンスとの比較で,同一サンプルのSNV検出結果は完全に一致した。MEFV遺伝子エクソン10の病原性変異についても,ホモ・ヘテロ接合体とも正確に検出された。以上より,本手法における技術的妥当性と臨床応用への有用性が示唆された。
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福田 誠, 西山 雄亮, 熊谷 明香里, 生田 和史
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
845-851
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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Epstein-Barr virus(EBV)DNA量の測定は疾患評価に有用だが,施設間で標準物質が統一されていないため比較可能性に課題がある。WHO EBV核酸一次標準品とAkata細胞(二次標準)にトレーサブルなBALF5標的PCRの半定量・定量系を提示し,精度管理の実装性を検証する。コンベンショナルPCRでプライマー濃度(5/10 μM)とアニーリング温度(55–64℃)を最適化し,ImageJでバンド強度を半定量した。増幅産物をダイレクトシークエンスしBLASTで特異性を確認した。SYBR GreenリアルタイムPCRで直線性と融解曲線を評価した。10 μM・61℃で単一強陽性バンド(90 bp)を得た。一次標準と二次標準のバンド強度は相対的に整合した(457 vs 471)。配列は参照(B95-8, Akata)の90 bp領域と完全一致した。リアルタイムPCRでは,二次標準物質1–50 ngの範囲において濃度依存的な増幅が認められ,標準曲線の決定係数はR2 = 0.981を示した。また,融解曲線解析ではTm = 83.15℃の単一ピークが確認された。以上より,一次・二次標準物質のトレーサビリティに基づくBALF5標的PCRを構築し,一般検査室で実装可能な半定量・定量および精度管理手順を提示した。本研究は,EBV DNA定量の標準化に寄与し得る重要な知見であることが示された。
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石川 裕介, 有馬 武史, 黒田 烈志, 奥村 由依, 安岐 優伽, 鈴木 敦夫, 徳永 哲士, 松下 正
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
852-859
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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タクロリムスならびにシクロスポリンは血中薬物濃度モニタリングが必要な免疫抑制剤であるが,その血球への移行特性から,血中濃度測定は全血を試料とし,用手法による除タンパク処理が必要である。今回,自動検体前処理技術を適用した「ルミパルスプレストiTACTタクロリムス」および「ルミパルスプレストiTACTシクロスポリン」の基礎的性能評価を行うとともに既存試薬2種類(ECLIA法およびCLIA法)との比較検討を行った。基礎的性能評価として併行精度,室内再現精度および検者間差の再現性を評価したところ,精度管理試料ならびに患者プール血液において,いずれの試薬も変動係数(CV)が5%以下と良好な結果を示した。感度試験における定量限界(許容CV10%)は,タクロリムスで0.21 ng/mL,シクロスポリンで13.01 ng/mLであった。また,凍結融解の影響,希釈性能試験においても良好な結果を示した。既存試薬との相関性についてはタクロリムスでECLIA法とは相関係数r = 0.994,CLIA法とは相関係数r = 0.993であった。シクロスポリンでECLIA法とは相関係数r = 0.992,CLIA法とは相関係数r = 0.994であり概ね良好な結果が得られた。iTACT法は既存試薬と同等の性能を有し,前処理業務負担の軽減や業務効率の向上に寄与する可能性が示唆された。
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竹中 佑太, 小林 延行, 佐藤 多嘉之, 佐渡 正敏, 齊藤 江里香, 坂本 央
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
860-865
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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2023年1月から2024年3月までの期間にClostridioides difficile感染症(CDI)診断目的で提出された便検体のうち,イムノクロマト(IC)法でC. difficile特異抗原(GDH)陽性と判定された80検体を用いて,ジーンキューブ® C. difficile(東洋紡株式会社)の性能評価を行った。Toxigenic culture(TC)法を基準としてGENECUBE法(ジーンキューブ® C. difficile)およびIC法のtoxin検出感度,特異度,陽性一致率を算出すると,GENECUBE法におけるtoxin B遺伝子(tcdB)の検出感度はBristol Stool Scale(BSS)5以上の初回提出検体で90.3%であった。3症例ではTC法でtoxin陽性,GENECUBE法でtoxin陰性と判定されたため,菌株のPCR-based ORF Typing(POT)を実施した。その結果,すべての菌株でtoxin A遺伝子およびtoxin B遺伝子が検出された。C. difficileは感染対策上注意すべき細菌であるため,迅速にtoxin産生の有無を評価することは非常に重要であるが,TC法は報告に2日以上を要する。GENECUBE法は高感度かつ迅速にtcdBを検出可能であるため,早期診断と適切な感染対策の実施に貢献できる。
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足立 紗世, 佐藤 望裕, 鍛治 蒼真, 月野 友歌, 藤社 果林, 中村 竜也
原稿種別: 技術論文
2026 年75 巻4 号 p.
866-872
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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目的:感染症診療において,迅速かつ正確な薬剤感受性試験は抗菌薬の適正使用に不可欠であり,表現型から薬剤耐性機構を推定可能な自動分析装置は臨床現場で注目されている。そこで,NMIC-479パネルを用いたBDフェニックスM50による薬剤耐性機構推定機能について評価した。方法:カルバペネマーゼを含む薬剤耐性機構が確定している本学保存の腸内細菌目細菌50株を対象とした。BDフェニックスM50による表現型推定結果と遺伝子学的検査結果との一致率を算出した。また,ertapenem(ETP)の薬剤感受性結果を用いたカルバペネマーゼ検出能について評価した。結果:薬剤耐性機構の推定一致率は,基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌,AmpC β-ラクタマーゼ産生菌およびカルバペネマーゼ非産生カルバペネム耐性腸内細菌目細菌で100%,カルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌で96%であった。ETP感受性結果を用いたカルバペネマーゼ検出の陽性一致率は100%,陰性一致率は60%,陽性的中率は71.4%,陰性的中率は100%であった。結論:本検討により,NMIC-479パネルはβ-ラクタマーゼ産生菌の推定に有用な補助情報を提供し得る一方,Ambler分類の推定には限界が認められた。また,ETP単独によるカルバペネマーゼ検出は高い陰性的中率を示したものの,特異度に課題を有することが示唆された。
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高嶋 浩一, 星野 隼也, 土谷 幸平
原稿種別: 資料
2026 年75 巻4 号 p.
873-879
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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術中神経モニタリング(intraoperative neurophysiological monitoring; IONM)に伴う針刺し事故は,神経機能温存に不可欠な針電極の使用と,医療従事者の安全確保という課題を併せ持つ。本研究では,2018年5月から2025年12月までに当院でIONMを実施した2,003例を対象とし,感染対策委員会などに報告されたIONM関連針刺し事故事例3件を後方視的に検討した。事故発生時の職種,作業場面,作業内容について,人的要因,環境要因,作業工程要因の観点から質的分析を行った。その結果,3件はいずれも術後患者整理に関連する場面で発生し,頭部固定解除中,下肢清拭中,体位変換時に認められた。事故発生には,注意分散,視野の限定,作業空間の制約,針電極回収手順の不明確さ,情報共有不足など,複数の要因が重なって関与していた。以上より,本研究の3事例は,IONMに伴う針刺し事故が,個人の不注意のみならず,周術期の作業工程や安全管理体制とも関係しうることを示唆した。作業工程の可視化,声かけを含む情報共有,体位変換前の針電極回収の標準化などの安全対策が有用である可能性が示唆された。
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横山 颯大, 石田 秀和, 米玉利 準, 丹羽 麻由美, 小川 瑞稀, 市岡 里奈, 手塚 宜行, 菊地 良介
原稿種別: 資料
2026 年75 巻4 号 p.
880-887
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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菌血症は敗血症へ進行し得る重篤な感染症であり,その早期診断は患者予後の改善に直結する。特にグラム陰性桿菌感染では,外膜由来のエンドトキシン(lipopolysaccharide; LPS)を定量することで補助的診断が可能とされているが,標準化されたカットオフ値はいまだ確立されていない。本研究では,当院における血中エンドトキシン測定結果を基に,菌血症診断における最適なカットオフ値を再評価した。2023年1月から12月の間に血中エンドトキシン検査と血液培養検査を実施した265検体を対象とし,血液培養でグラム陰性桿菌(gram-negative bacilli; GNR)が検出された症例をGNR菌血症群とした。GNR菌血症群の血中エンドトキシン濃度は非GNR菌血症群に比べ有意に高値を示し(p < 0.0001),GNR菌血症の独立した予測因子の可能性が示唆された。さらに,1.0,3.0,5.0 pg/mLの各カットオフ値で診断精度を算出した結果,ROC解析により最適カットオフ値は1.0 pg/mL(AUC = 0.764,感度61.1%,特異度90.7%)であり,Youden indexは0.518と最も高値を示した。これらの結果から,血中エンドトキシン濃度1.0 pg/mLは菌血症スクリーニングにおいて有用な基準値であり,検査室から臨床現場への迅速な情報提供や初期治療支援に寄与する可能性が示唆された。
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濵田 文香, 戸田 聡江, 杉本 昌美, 外山 美香, 浅沼 浩子
原稿種別: 資料
2026 年75 巻4 号 p.
888-894
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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輸血におけるインフォームド・コンセント(IC)には輸血療法同意書(以下,同意書)の取得が必須であるが,当院で同意書取得漏れインシデント事例が異なる部署において2か月連続で1件ずつ発生した。当院の輸血依頼が伝票運用であることから確認作業はすべて手作業となる。輸血に関わる各職種の意識向上のため次のようなインシデント対策を行った。まず,輸血指示医に対しては血液製剤注文書作成画面の変更により同意書取得漏れを気づき易くした。次に,臨床検査技師に対して行った「輸血同意」に関する意識調査において,輸血のICについて正しく認識している臨床検査技師が66%であったため「輸血同意」に関する勉強会を行った。臨床検査技師全員が正しい認識を持ったことを確認後に,血液製剤注文書受領時に同意書取得の有無を確認する運用を開始した。また,輸血に関わる全職員が同意書取得漏れを意識できるように輸血実施までのフローチャートを作成した。対策実施以降1年半の経過観察中に同意書取得漏れ事例は発生しておらず,対策は有効であると考えられた。一方で対策開始1年後に実施した輸血同意に関する意識調査では,輸血のICについて正しく認識している臨床検査技師は77%であり,全員の正しい認識を維持できていないことが分かった。継続的な教育活動が必要であることを再認識した。
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木村 賴知, 奥村 敬太, 原 千夏, 金山 幸貴, 田中 千晴, 加藤 萌香, 山田 幸司, 稲葉 亨
原稿種別: 資料
2026 年75 巻4 号 p.
895-901
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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ドライアイスで検体を保冷する際,検体保存容器の密閉が不十分な場合はドライアイス由来のCO2が検体中に溶け込むことで検体のpHが低下し,一部の検査項目の測定結果に影響を及ぼすことが知られている。今回,当院と契約中の外部委託検査会社2社(A社,B社)への検体提出時に使用している検体保存容器および当院の検体分注搬送装置で使用中の検体保存容器について,保冷条件の違いが検体中のpCO2およびpHに及ぼす影響を検討した。マイナス20℃の冷凍庫内に保冷した検体を対照とした場合,A社の容器を使用してビニール袋で被覆せずにドライアイス保冷した場合のみpCO2の増加およびpHの低下を認めた。また,これらの検体は解凍から2時間経過後もpCO2およびpHは保存前の数値に戻らなかった。一方,ビニール袋で検体を被覆した場合,いずれの容器で保冷してもpCO2増加やpH低下を認めなかった。以上より,ドライアイスを用いた検体保存および搬送時のCO2溶け込みによると思われる検体中のpH変化を防止するためには,検体保存容器をビニール袋等で被覆しドライアイスとの直接的な接触を遮断することが検体管理上重要と考えられた。
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水谷 里佳, 及川 加奈, 小鹿 真吾, 沖林 薫, 宮澤 翔吾, 舟橋 恵二, 西村 直子, 尾崎 隆男
原稿種別: 資料
2026 年75 巻4 号 p.
902-909
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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2024年の1年間に当院小児科受診患者から分離されたHaemophilus influenzae(Hi)223株について,莢膜血清型,9種薬剤のMICおよびβ-lactamase産生を調査し,過去4回の調査成績(1999年,2005年,2009年,2016年)と比較した。MIC値からCLSIの基準に従ってS,I,Rを判定し,S以外を薬剤耐性として検討した。莢膜血清型は222株が無莢膜型であり,莢膜型はe型1株(0.4%)のみであった。9種薬剤(ABPC, AMPC/CVA, CTX, CTRX, CFPM, MEPM, CAM, AZM, LVFX)に対し,それぞれ65.9%,43.5%,0.4%,0%,0.4%,4.0%,17.5%,0.4%,0.9%の株が耐性であり,ABPC耐性の内訳はBLNAR 44.4%,BLPAR 19.3%,BLPACR 2.2%であった。b型の分離率はHibワクチン定期接種開始(2013年)前の9.5%から,開始後には0.2%に著しく低下した。b型以外の莢膜型も18.7%から1.3%に大きく低下しており,ワクチンによる血清型置換は認められなかった。上昇傾向にあったABPC耐性率が2016年の74.8%から65.9%に低下した一方,2016年まで10%以下で推移していたBLPAR率は19.3%に上昇した。Hiにおける莢膜血清型と薬剤感受性の今後の動向に注視が必要である。
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松岡 拓也, 山本 琴美, 岩永 祐季, 吉田 賢太, 上島 さやか, 田上 圭二
原稿種別: 資料
2026 年75 巻4 号 p.
910-916
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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日常検査において,尿培養実施の必要性に疑問を感じる透明尿が提出されることが少なくない。那覇市立病院における先行研究に着想を得て,当院の診療環境において同様の運用が可能か検討し,尿培養省略化の導入を行った。検証1:2020年4月から9月に,同日に尿一般検査と尿培養の依頼があった1,471件を対象に,尿培養結果が推定陰性となる尿一般検査結果の条件を検索した。UF-5000の測定項目である酵母様真菌を含め,省略条件を「白血球 < 5/HPF,細菌 ≤(±),酵母様真菌 < 10/μL」と設定した。検証2:2023年2月から9月に,同日・同一検体で尿一般検査と尿培養依頼が実施された200件を対象に,検証1で設定した省略条件を検証した。その結果,設定した条件で105 CFU/mL以上となった症例はなく,105 CFU/mL未満で臨床的に尿路感染症と診断された症例も認められなかった。5つの省略条件(尿沈渣結果が白血球 < 5/HPFかつ細菌 ≤(±)かつ酵母様真菌 < 10/μL,検体の種類が自然尿またはカテーテル尿,尿一般検査と尿培養が同一検体,検査依頼に抗酸菌検査がない,入院患者である)をすべて満たした場合に検査室側で尿培養を省略する運用を開始した結果,1年間で521件の尿培養を省略でき,陽性率は平均37.0%から47.8%に上昇した。削減業務時間は年間約71時間,削減した経費は年間約93,000円と推定された。
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木村 依利愛, 河野 克海, 栁 政希, 山田 明輝, 緒方 良一, 猪﨑 みさき, 唐澤 賢祥, 梅北 邦彦
原稿種別: 症例報告
2026 年75 巻4 号 p.
917-922
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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過粘稠度症候群は血液粘稠度の上昇により出血傾向や視覚障害を呈し,検査値に影響を及ぼすことがある。今回,血清粘稠度の上昇により生化学自動分析装置でサンプル吸引エラーを生じた症例を経験したので報告する。症例は80歳代男性。持続する口腔内出血のため入院し,初回生化学検査で再遠心後も吸引エラーが反復したがフィブリン析出は認めなかった。検体観察で血清の粘稠性を認めたため主治医と協議しNa,K,Cl以外の項目で生理食塩水による希釈測定を行ったところ,測定可能となった。大部分の項目では2倍および4倍希釈で直線性の確認を行い,高値であったIgAは8倍希釈で測定して報告した。一方,血球数算定検査および凝固検査では吸引エラーを認めなかった。高蛋白血症とIgG,IgAの著明な増加を認めシェーグレン症候群と診断され,免疫グロブリン増加による過粘稠度が吸引エラーの原因と考えられた。治療として血漿交換療法が施行され,総蛋白および免疫グロブリン値の低下とともに臨床症状が改善した。このことから,本症例における血清粘稠度の上昇は免疫グロブリンの増加に関連していたと考えられた。サンプル吸引エラー発生時にはフィブリン析出のみならず検体粘稠度の異常を考慮し,検体観察と希釈測定を行うことが重要である。
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藤尾 友水, 坪佐 朱莉, 室木 魁人, 西川 裕子, 岩﨑 由恵, 寺田 信行, 中塚 伸一
原稿種別: 症例報告
2026 年75 巻4 号 p.
923-928
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
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原発不明肺悪性黒色腫は極めて稀であり,肺に悪性黒色腫を認めた場合には原発巣の検索が重要である。今回,多発肺病変を契機に発見され,FDG-PET/CTによる全身検索により側頭部色素性病変が検出された悪性黒色腫の1例を経験した。患者はCT検査にて多発肺結節を指摘され,診断確定のため胸腔鏡下肺部分切除術が施行された。病理組織学的検討ではメラニン色素を含む異型細胞の増殖を認めた。免疫染色ではHMB-45,Melan-A,SOX10およびS-100が陽性を示し,悪性黒色腫と診断した。その後のFDG-PET/CTによる全身検索において,左側頭部にFDG異常集積を伴う黒褐色色素性病変が認められた。さらに同部位周囲には皮下結節が触知された。病理学的確認は行われていないものの,これらの所見から同病変が原発巣である可能性が考えられた。本症例は,FDG-PET/CTが悪性黒色腫症例における全身検索の一助となり,臨床的に見落とされていた病変の検出に寄与し得る場合もあることを示した症例である。
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中野 侑子, 小林 弘典, 仲本 賢太郎, 池田 美奈, 花田 美帆, 山﨑 章子
原稿種別: 症例報告
2026 年75 巻4 号 p.
929-934
発行日: 2026/10/25
公開日: 2026/10/25
ジャーナル
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クジラ複殖門条虫は,1片節内に2組の雌雄生殖器を有することが日本海裂頭条虫との主な鑑別点である。今回,10%中性緩衝ホルマリン固定により生殖器が黒変し,肉眼的な種同定が容易となった症例を経験したので報告する。50歳代男性。排便時の紐状物排出を主訴に来院した。肛門より排出されていた幅約1 cm,全長約110 cmおよび120 cmの虫体様構造物を回収した。虫体を10%中性緩衝ホルマリン溶液で固定したところ,生殖器が選択的に黒変し,1片節あたり2組存在することを肉眼的に容易に確認できた。無染色標本にて,黒変部は子宮内に密集して存在する虫卵に相当することを確認した。ヘマトキシリン・エオジン染色による組織標本でも,1片節内に2組の雌雄生殖器を認め,クジラ複殖門条虫と同定した。プラジカンテル単回投与後,1ヶ月後および3ヶ月後の糞便検査で虫卵陰性を確認し,治癒と判定した。本種において10%中性緩衝ホルマリン固定による生殖器の黒変現象は,特殊な技術を要さず迅速な同定を可能とする有用な所見であった。一方で,虫体を全て固定したため,遺伝子検査用の未固定試料を確保できなかった点が課題であった。形態学的同定が困難な症例に備え,虫体の一部はエチルアルコール固定または冷凍保存することを標準手順とすべきである。寄生虫検査経験のある技師が減少する中,このような簡便かつ実践的な知識の継承が肝要である。
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