医学検査
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原著
  • 川嵜 奈央, 有馬 由美子, 上田 舞衣子, 村谷 哲郎
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻4 号 p. 645-651
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    Campylobacter属菌の代表的な菌種としてはCampylobacter jejuniCampylobacter coliCampylobacter fetusがある。今回,発熱を伴う基礎疾患のない下痢症患者の便の42℃微好気培養から,C. fetusを検出したことを契機に,Campylobacter属菌66株を用いてPCR,25℃と42℃の発育試験,馬尿酸塩加水分解試験,酢酸インドキシル加水分解試験を実施し,同定方法を検討した。発育試験にて,42℃では全株発育し,25℃で発育したのはC. fetus 6株のみであった。馬尿酸塩加水分解試験については判定時間を添付文書に記載の15分と,60分まで延長した場合で実施したが,感度はそれぞれ55.6%(20/36),88.9%(32/36)となった。また,60分まで延長しても偽陽性はなく,少なくとも60分まで延長する必要があると考えられた。酢酸インドキシル加水分解試験についても偽陽性はなく,感度は98.3%(59/60)であった。馬尿酸塩加水分解試験(判定時間60分)を用いた全66株のPCRとの同定一致率は93.9%(62/66)であった。Campylobacter属菌の同定において,C. fetusの多くが42℃で発育可能であること,馬尿酸塩加水分解試験の判定時間延長の必要性,補助試験としての酢酸インドキシル加水分解試験の有用性が示された。

  • 則松 良明, 清徳 美玖, 細川 翔, 祇󠄁園 由佳, 入野 了士, 西川 武, 佐賀 良子, 前田 宣延
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻4 号 p. 652-661
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    LSIL判定での核形態異常の原因として,HPV感染による核ラミナの分布異常が一因となる可能性を推定し,核ラミナでの免疫化学的評価を行った。対象は子宮頸部細胞診においてLSIL判定され,組織診診断CIN1であった20例とした。検討項目は,①細胞形態異常7項目(核しわ/溝,核辺縁不整,核立体不整,多核,核クロマチン粗凝集,スマッジ状クロマチン,コイロサイトーシス)の頻度。②ラミンA/C抗体を用いた免疫細胞化学染色(ICC)および免疫組織化学(IHC)での核膜ライン「有無」の頻度を調査した。その結果,①細胞形態異常所見の頻度は,しわ/溝(18.0%),辺縁不整(4.2%),立体不整(28.4%),多核(12.8%),クロマチン粗凝集(84.9%)/スマッジ(7.3%),コイロサイトーシス(42.3%)であった。核立体不整は核辺縁不整,多核,スマッジ状クロマチンと比較してそれぞれ有意に高値を示した。②ラミンA/C-ICC染色の頻度で,核膜ライン「なし」(84.8%)は「あり」(15.2%)よりも高頻度であった。ラミンA/C-IHC染色の頻度で,核膜ライン「なし」(85.3%)は「あり」(14.7%)よりも高頻度であった。以上より,核の立体不整はLSIL判定の新しい判定基準になり得る。また,HPV感染が核ラミナの異常に関与し,それが種々の核形態異常の一因になる可能性が示唆された。

  • 西川 佳佑, 野口 依子, 松本 久幸, 今西 孝充, 矢野 嘉彦, 山口 智美, 西尾 久英
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻4 号 p. 662-669
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    5q-脊髄性筋萎縮症(5q-SMA)は遺伝性運動ニューロン疾患の一つである。本疾患患者の95%はSMN1遺伝子欠失のホモ接合体であり,残りの5%はSMN1遺伝子欠失とSMN1遺伝子内バリアントの複合ヘテロ接合体である。神戸大学医学部附属病院検査部では2021年以降,5q-SMAの遺伝学的検査に取り組んでおり,我々はこれまでに,SMN1を残存する5q-SMA疑い患者14名を対象にDNAシーケンス解析を実施した。患者1名でフレームシフト変異c.691dup,2名でSMN1/SMN2ハイブリッド遺伝子,全員で同義置換c.462A>Gが同定された。c.462A>Gの検出頻度が非常に高かったため,Clinvarで「Likely-benign」と登録されている本バリアントの病原性を再評価した。mRNA解析やin silico解析により,c.462A>Gはスプライシングパターンに影響を与えず病原性はない,つまり5q-SMAの発症とは関連がないと結論した。さらに病原性評価の過程で,参照するデータベースが少数集団の配列である可能性や相同遺伝子により健常人の遺伝子配列データベースが欠如し,検出したバリアントの病原性評価が困難になる可能性があることが明らかとなった。バリアントの病原性を評価する際は,その遺伝子の特徴や選択する参照配列に留意する必要がある。

  • 久住 裕俊, 青地 祐, 村越 大輝, 白川 るみ
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻4 号 p. 670-679
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    Automated insulin delivery(AID)療法は,リアルタイム持続血糖モニタリング(rtCGM)と連動してインスリンを自動注入する治療法である。本邦では,基礎インスリンの自動注入(hybrid closed loop; HCL)と補正インスリンの自動注入(advanced hybrid closed loop; AHCL)が可能なインスリンポンプが認可されている。本研究では,2022年1月から2024年6月の期間に当院に通院し,ミニメド770Gおよび780Gシステムインスリンポンプを使用した1型糖尿病患者22名を対象に,AID療法導入前後の血糖変動を解析した。本研究におけるAID(HCL/AHCL)療法のglucose management indicator(GMI)は,それぞれ7.0%および6.8~7.0%,time in range(TIR)は,69.2~70.4%および70.7~72.8%,time above range(TAR)は,26.8~28.9%および24.6~26.7%,time below range(TBR)は,1.9~3.0%および2.5~2.6%であり,CGMにおける血糖コントロール指針の目標値を概ね達成していた。AID療法は,SAP療法と比較して低血糖イベントを増加させることなく安全に高血糖を是正できる非常に有効な治療法であることが示された。

  • 金重 里沙, 瀬分 望月, 本木 由香里, 野島 順三
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻4 号 p. 680-686
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome; APS)は,血中に抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibody; aPL)が出現し,動・静脈血栓症や習慣流産などの合併症を発症する自己免疫疾患である。本邦のAPSの約半数は膠原病に合併する2次性APSであり,なかでも全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus; SLE)に併発するAPS(SLE/APS)は,重篤で多彩な血栓症を発症することが知られているが,その病態機序は未だ解明されていない。近年,好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps; NETs)の過剰形成が,APSおよびSLE/APSにおける血栓形成の主要なメカニズムの1つであることが示唆されている。本研究では,aPLがNETs形成に与える影響を解明するため,ヒト末梢血顆粒球をSLE/APS患者血清およびaPL IgGで刺激し,NETs形成が惹起されるか検討した。その結果,aPL IgGにより顆粒球中のSYTOX® Green陽性細胞比率,培養上清中の好中球エラスターゼ活性,活性酸素種産生細胞比率の増加が引き起こされる可能性を明らかにした。本研究成果より,aPLによって誘導される細胞死はNETsに関連し,APSではaPLがNETsを介して血栓形成作用を促進する可能性が示唆された。

  • 播磨 晋太郎, 大宮 卓, 伊藤 真理子, 太田 玲子, 松林 聡, 西村 秀一
    原稿種別: 原著
    2025 年74 巻4 号 p. 687-694
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    ある感染症に対する集団免疫の状態を知ることは,当該感染症の流行の今後を予測する上での大きな手掛かりとなる。本研究では,一病院職員におけるcoronavirus disease 2019(COVID-19)の浸淫状況を把握することを目的として,当該病院に勤務する職員を対象に,severe acute respiratory syndrome coronavirus 2(SARS-CoV-2)のN蛋白質抗原に対する抗体獲得状況を定量的に調査した。その結果,2024年6月までに職員の約7割がSARS-CoV-2に感染していたことが分かった。さらに病院への感染の届け出記録と対象職員へのアンケート調査を組み合わせることで不顕性感染率も調べた。その結果,抗N抗体陽性率は71.7%であり,その3割が不顕性感染であった。一方で何らかの自覚症状があっても医療機関を受診せずにいた職員も全体の7.5%いたことが判明した。これらの事実は,今後の病院における感染管理の上で,院内で職員が気軽に検査を受けられるような態勢をとるなどの具体的対策を講じる必要があることを認識させるものであった。ウイルス学的には,顕性感染と不顕性感染の間で感染によって獲得する抗N抗体価に統計学的有意差はなかった。また,ワクチンの接種回数で顕性感染と不顕性感染の出現率に差は認められなかった。これにより感染の事実を知る獲得抗体価を考えるとき,少なくとも抗N抗体に関する限り顕性感染と不顕性感染を特段区別する必要がないことが示唆された。

技術論文
  • 中村 華菜, 馬場 康次, 福田 峻, 今坂 久美, 樋口 武史
    原稿種別: 技術論文
    2025 年74 巻4 号 p. 695-700
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    今回我々は,当院が考案した血液培養陽性ボトル前処理方法を用いたQライン極東®PBP2’の感度向上について検討したので報告する。対象は,当院各診療科より提出された血液培養陽性ボトルのうち,VITEK MSによる直接同定でStaphylococcus spp.の菌名が得られた150検体とした。本キットは添付文書に従い実施し,血液培養陽性ボトルからサブカルチャー後にコロニーを用いる方法を基準法とし,血液培養陽性ボトルから直接実施する方法(Q直接法)と,当院が考案したスプタザイムによる前処理方法を用いた方法(当院法)を比較検討した。菌種の内訳は,Staphylococcus aureus 84株(MSSA 48, MRSA 36),coagulase-negative staphylococci(CNS)66株(MSCNS 30, MRCNS 36)である。結果としては,S. aureusではQ直接法の感度97.2%,特異度100%,一致率98.8%,kappa係数0.98,当院法100%,100%,100%,1であった。CNSではQ直接法52.8%,100%,74.2%,0.50,当院法94.4%,100%,97.0%,0.94であった。当院の血液培養前処理方法を用いることでS. aureusのみならずCNSも基準法と同等の一致率で迅速にPBP2’の検出が可能であることが示唆された。

  • 松本 大志, 福島 紘子, 藤村 建午, 髙畑 智宏, 鐘築 由香, 大野 一彦, 市村 直也, 東田 修二
    原稿種別: 技術論文
    2025 年74 巻4 号 p. 701-709
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー HTML

    可溶性インターロイキン2受容体(sIL-2R)は,非Hodgkinリンパ腫やATLで著明な高値を示し,それらの疾患の優れた指標として測定される。sIL-2Rの日常測定法には,化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法),酵素免疫測定法(ELISA法)と,ラテックス免疫比濁法(LTIA法)があるが,LTIA法はCLEIA法,ELISA法に比べて非特異反応が多いとされる。今回,積水メディカル株式会社より非特異反応を抑制した改良試薬「(Nタイプ)ナノピアIL-2R」(LTIA法)が発売されたことに伴い,本試薬の基礎的性能および改良効果を評価した。対象試薬は改良前の従来試薬とCLEIA法を原理とした測定試薬である。改良試薬の基礎的性能は良好であり,CLEIA法との相関が従来試薬に比べて向上した。乖離検体の免疫グロブリン吸収試験により,主にIgGに起因する非特異反応に対して,改良効果を認めた。本検証より,改良試薬は日常使用には十分な性能を有しており,また,従来試薬と比較して,非特異反応に対する抑制効果を示した。

  • 木村 和幸, 仲田 夢人, 市川 ひとみ, 河村 浩二
    原稿種別: 技術論文
    2025 年74 巻4 号 p. 710-716
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー HTML

    メトトレキサートは,造血器悪性疾患や関節リウマチに使用される薬剤である。その作用機序は,核酸合成等に必須な酵素であるジヒドロ葉酸還元酵素(dihydrofolate reductase; DHFR)の活性を抑制し,還元型葉酸を枯渇させ腫瘍細胞の増殖を阻止することである。悪性リンパ腫の中枢神経系浸潤時や骨肉腫などの治療においてメトトレキサートを大量に投与するメトトレキサート・ロイコボリン救援療法では,投与開始後24時間,48時間,72時間後の血中濃度測定は必須である。今回,ルミパルスL2400(富士レビオ株式会社)で測定可能な「ルミパルスプレストメトトレキサート」(富士レビオ株式会社)が開発され,試薬導入に向けての基礎的検討を行った。併行精度,室内精度,希釈直線性,検出限界,定量限界は良好な結果が認められ,共存物質や保存条件の影響は認められなかった。当院の現行試薬である「アーキテクト・メトトレキサート」(アボットジャパン合同会社),および血清検体との相関係数はそれぞれ0.993,0.999と高く,回帰式はそれぞれy = 1.139x − 0.019,y = 1.014x − 0.004であり,乖離検体も認められなかった。以上の結果より,基礎的検討の結果は良好であり,試薬の導入は可能であることが示唆された。今回検討した試薬は,測定範囲が現行試薬よりも広いことが大きな特徴で,再検率の低下,結果報告までの所要時間(turn-around time; TAT)の短縮が期待され,臨床に貢献できると思われる。

  • 松尾 枝里子, 清祐 麻紀子, 北川 真喜, 高野 慎也, 西田 留梨子, 山下 有加, 酒田 あゆみ, 國﨑 祐哉
    原稿種別: 技術論文
    2025 年74 巻4 号 p. 717-723
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー HTML

    国内の酵母様真菌薬剤感受性検査はClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)の旧ドキュメントM27-A3,M27-S3(A3/S3)に準拠した測定キットが多く用いられるが,最新ドキュメントはM27 Fourth Edition,M27M44S-Ed3(Ed4/M44S-Ed3)である。両者の主な相違点は判定時間と判定基準で,採用するEditionにより測定結果が乖離する可能性がある。今回,酵母真菌薬剤感受性キットASTY(極東製薬工業)を用い,標準菌株2株とCandida属の臨床分離株92株を添付文書通りA3/S3に準じ測定した場合と最新Ed4/M44S-Ed3に準じ測定した場合で比較し,精度管理評価とMIC値一致率,感性率を評価した。標準菌株のMIC値は両基準精度管理範囲内であった。全体のMIC値一致率は2管差以内が92.6%であった。感性率不一致は33株あり,M44S-Ed3基準でカテゴリーを比較した結果,VME 4株(Candida glabrataCandida kruseiのCPFG各2株),mE 29株を認めた。本検討より新旧ドキュメントに準拠し測定した場合の傾向と影響が明らかになった。最新基準では判定時間24時間への統一による利点もある。今後,薬剤耐性株を含む十分な株数で最新基準によるMIC値を用いた臨床的評価を検証する必要がある。

資料
  • 福元 達也, 菊地 玲, 瀧 圭介, 松山 彩花, 早坂 かすみ, 山下 直樹, 後藤 秀樹, 豊嶋 崇徳
    原稿種別: 資料
    2025 年74 巻4 号 p. 724-731
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    黄色ブドウ球菌菌血症(Staphylococcus aureus bacteremia; SAB)においてmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)か否かが即座に判明すれば,最適な抗菌薬使用に繋がる。当院では2020年11月より自動遺伝子解析装置GeneXpert(ベックマン・コールター)専用試薬Xpert MRSA/SA BC「セフィエド」(以下,GX)を導入し,血液培養陽転時に質量分析装置による菌名に加えてメチシリン耐性の有無を報告している。本検討では当院におけるSAB症例をGX導入前後に分け,有用性の評価を後方視的に調査した。GX導入後,methicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA)群で陽性報告日のセファゾリン(CEZ)の使用割合が増加し(p = 0.004),抗MRSA薬の使用が抑えられた(p = 0.001)。一方,MRSA群ではCEZの使用割合が減少し(p = 0.04),抗MRSA薬の使用が増加した(p = 0.004)。解熱(37.0℃)までの日数が短縮し(p = 0.005),在院日数短縮に繋がった(p = 0.007)。GX導入することでMSSA症例での抗MRSA薬使用削減,MRSA症例での抗MRSA薬の早期投与が可能となり,薬価の削減,解熱までの日数の短縮に繋げることでアウトカム早期改善に貢献できた。

  • 小柳 紀人, 伊藤 裕司, 鈴木 健之, 後藤 宏次, 佐藤 直樹, 鈴木 涼太, 西尾 信一郎
    原稿種別: 資料
    2025 年74 巻4 号 p. 732-737
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    菌量依存性にセファゾリン(CEZ)のMICが変化するcefazolin inoculum effect(CzIE)を持つmethicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA)が予後に影響する可能性が報告されているが,全株で高濃度菌液(high inocula; HI)を作成してCzIEを評価することは難しい。本研究では,既存の微生物学的検査がMSSAにおけるCzIEスクリーニングに有用かを検討した。2013年5月~2023年1月に中東遠総合医療センターで血液培養から検出されたMSSA 179株を対象として,CEZのMICが標準濃度菌液(standard inocula; SI)≤ 8 μg/mLかつHI ≥ 16 μg/mLの場合にCzIEと判定した。9株(5.0%)がCzIEと判定され,SIのMIC ≤ 0.5 μg/mLで0/128株(0.0%),1 μg/mL 7/48株(14.6%),2 μg/mL 2/3株(66.7%)が該当した。β-ラクタマーゼ試験陰性株ではCzIEを認めなかった。SIのCEZ MIC ≤ 0.5 μg/mLあるいはβ-ラクタマーゼ試験陰性のMSSAを除外することで,HI作成対象から128株(72%)を削減できた。上記除外基準により,CzIEの見逃しなく追加検査数を絞り込み,効率的なスクリーニングが可能となることが示された。

  • 李 相太, 大沼 健一郎, 仁木 誠, 岡本 琴音, 川 健司, 安川 美久, 龍見 重信, 森嶋 良一
    原稿種別: 資料
    2025 年74 巻4 号 p. 738-745
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    本研究は,臨床検査技師による寄生虫の虫卵・虫体検査(O&P)の実施状況と分子診断に対する認識を明らかにすることを目的とし,2025年1月30日~3月8日にオンライン調査を実施した。調査には137名が参加し,O&P経験者は65名であった。1か月あたりのO&P検査件数が1件以下と回答した者は87.7%,年間検査件数でも半数近くが同様であり,現場での実施経験が著しく希薄であることが示された。さらに,検査結果の陽性率が「ほとんどない」または「全くない」とする回答が89.2%を占め,経験した寄生虫種も限られていた。一方,分子診断は,形態学的同定が困難な症例における補完手段として期待されるものの,検査性能や費用対効果への評価が重要視されていた。また,経験年数により,検査依頼の少なさや指導体制の不足が技能の習得に影響を及ぼしている現状が浮き彫りとなった。本研究は,O&Pの縮小と分子診断の限定的導入の背景を踏まえ,教育・研修体制の充実や両技術の相補的運用の必要性を示唆するとともに,今後の寄生虫検査体制の改善に向けた基礎資料となり得る。

  • 志村 拓也, 三瓶 祐也, 今村 尚貴, 比嘉 良瑚, 萩田 万喜, 富永 景子, 増成 紗弓, 高野 通彰
    原稿種別: 資料
    2025 年74 巻4 号 p. 746-751
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    KL-6はMUC1由来の高分子糖タンパクで,肺胞II型上皮細胞や中皮細胞から産生され,間質性肺炎の活動性指標として利用される。一方,腫瘍マーカーとしての報告もあるが,非腫瘍性疾患でも上昇するため特異性に課題がある。本研究では,胸水中KL-6(PE-KL6)とCEA(PE-CEA)を測定し,悪性胸水の診断補助としての有用性を比較検討した。対象は胸水検体57例で,疾患分類は良性35例,腺癌14例,胸膜中皮腫4例などであった。PE-KL6は腺癌で有意に高値を示し,腺癌に対するAUCは0.941,腺癌+胸膜中皮腫に対しては0.981であった。PE-CEAは腺癌に特異的だったが,胸膜中皮腫には低感度であった。両者の併用により診断能の向上が期待される結果となった。

症例報告
  • 加藤 幸子, 小野澤 裕也, 押田 好美, 河島 江美, 鈴木 淳子, 内田 一弘
    原稿種別: 症例報告
    2025 年74 巻4 号 p. 752-757
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease; CJD)は異常プリオン蛋白が中枢神経に蓄積することで発症する致死的疾患で,多くは全身衰弱・呼吸不全・肺炎などで死亡する。CJD診断後は有効な治療法が無いことから脳波を継続して記録することは少ない。今回CJD患者の脳波検査を長期に亘り観察することができたので報告する。短期間に急速に進行する記銘力低下,左同名半盲,歩行障害を認め当院受診。頭部MRI拡散強調画像で広範囲に高信号域を認め,脳波検査において全般性周期性放電(generalized periodic discharges; GPDs)が出現,鋭波は後頭優位に約1秒周期で出現していた。その後GPDsは後頭優位から後頭・頭頂優位そして広汎性へと出現する範囲を広げながら,発症から3ヶ月が経過した頃,もっとも高振幅となった。その後,鋭波は低振幅となり,出現率が減少しながらも約1秒周期でGPDsが認められた。CJD末期はGPDsが消失し,脳波は平坦化すると報告されているが,本症例では発症から2年6ヶ月経過してもGPDsが確認された。

  • 見手倉 久治, 須賀原 亮, 木村 美咲, 小林 美紀, 黄江 泰晴, 北中 明
    原稿種別: 症例報告
    2025 年74 巻4 号 p. 758-763
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    HbA1cをHPLC法で測定した場合に出力される異常値メッセージによって変異ヘモグロビンが強く疑われた2例を経験した。2例ともHbA1cを測定した主目的は検査前や受診時のスクリーニング検査であった。当院において,機器による異常値メッセージ発生実績は0.1~0.2%(30~50検体/年,重複例を含む)となっていた。内訳として,そのほとんどが「HbA0異常低値」と「HbF異常高値」が占めており,「#C異常高値」,「重複ピークあり」,「HbA1cテール異常」といった変異ヘモグロビンの存在が否定できない異常値メッセージは1年に3~5回の頻度で発生していた。変異ヘモグロビンは,酸素との親和性に異常を示すものがあり,その結果として溶血性疾患や多血症およびチアノーゼといった疾患を伴う場合がある。しかし,変異ヘモグロビンを保有していても無症状で,血液学的検査所見にも異常を認めない場合がある。測定機器からの異常値メッセージを検出した場合,その原因を確認して,必要に応じて臨床にHbA1c結果への影響とともにグリコアルブミンなど他の血糖コントロール指標となる検査項目の説明を行うことが重要である。外国人労働者の増加や各種イベントによる様々な人種が国内で生活する現代において,変異ヘモグロビンの検出と報告は今以上に必要不可欠な検査になると考える。

  • 富岡 菜々子, 近藤 英生, 今田 昌秀, 大倉 尚子, 山本 絵梨, 小川 千紘, 北中 明
    原稿種別: 症例報告
    2025 年74 巻4 号 p. 764-771
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    クロスミキシングテスト(Cross Mixing Test; CMT)は,活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time; APTT)の延長を認める場合に,その延長原因の精査として用いられる。今回我々は,CMTの即時反応は基線近似パターン,遅延反応は下に凸のパターンを示したループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant; LA)陽性(軽症)血友病Aを経験した。症例は70歳代男性,腹部大動脈瘤の手術前後にペグ化遺伝子組換え血液凝固第VIII因子製剤(アディノベイト)を投与し手術が行われた。アディノベイト投与翌日のCMTの即時反応・遅延反応はともに基線近似パターンであった。一方,アディノベイト投与前の第VIII因子活性は,加温により0.4%未満と低値を示した。これにより,患者血漿100%の凝固時間が著明に延長し,即時反応とは異なるパターンを示したと考えられた。凝固因子低下とLAが共存するサンプルでのCMTの解釈は,患者血漿100%の即時反応と遅延反応の差に着目することが重要と考えられた。また,数値判定法はアディノベイト投与前後においてすべての指標で判定結果はインヒビターであり,用いる指標の性能特性に寄与すると考えられた。そのため,CMTの波形パターンが不明瞭な場合や,視覚判定法と数値判定法の結果が異なる場合は,追加検査を行い鑑別する必要がある。

  • 野中 将太朗, 井上 梨奈, 福田 香織, 塚原 涼, 奥藤 由紀子, 古川 泰司
    原稿種別: 症例報告
    2025 年74 巻4 号 p. 772-781
    発行日: 2025/10/25
    公開日: 2025/10/25
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    ホスホリパーゼDを用いた酵素法によるカルシウム測定において,偽低値を呈した症例を経験した。反応タイムコースに異常はみられなかったが,希釈再現性が得られなかったことから検討を実施した。患者は胆汁うっ滞がみられており,リン脂質および遊離コレステロールが高値であった。沈殿法によるリポ蛋白X(Lp-X)確認試験により,Lp-Xの存在が示唆された。試薬の測定原理からLp-Xに多く含まれるリン脂質による非特異反応を疑い,リン脂質としてレシチンを用いた再現試験を実施した。その結果,ホスホリパーゼDは発色基質だけでなく,リン脂質にも作用していた。また,リン脂質の共存の影響試験では,リン脂質濃度依存的にカルシウムの測定値が低下した。以上より,高濃度のリン脂質は発色基質と競合することで,ホスホリパーゼD酵素法によるカルシウム測定に負の影響を与えると考えられた。

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