適切な栄養管理を実施するためには,複数の栄養指標や臨床指標をもとにした包括的な判断が必要である。本研究では低栄養患者の適切な栄養管理を目的とし,NST介入時における血液バイオマーカーを予後予測因子として,有用性を後方視的に評価した。当院でNST介入を受けた欠損値のない患者のうち,年齢と性別を傾向スコアマッチングにて調整した176例を対象とした。目的変数を主治医が評価した退院時転帰(良好群,不良群),説明変数をNST回診前の血液バイオマーカー測定値(ALB, ChE, CRP, Hb, RBP, TC, Tf, TLC, TTR, WBC)とし多変量ロジスティック回帰分析を行った。Hb,RBP,TLC,WBCに有意差を認め,この4項目を追加する前と後でモデル間の比較を行い,IDI分析は[0.076 (95%CI: 0.036–0.116), p < 0.001]と極めて良好な結果であった。決定木分析ではTLCが低栄養患者の予後に関わる重要な因子であった。免疫能及び半減期の短い栄養アセスメントタンパクを併用することで,低栄養患者の予測精度が向上した。詳細な栄養評価に関する患者情報を用いたIDI分析および決定木分析により,視覚的な予後予測への応用が大いに期待できる。NST回診前のTLC,RBP,Hb,WBCが退院時の予後に影響を与える重要な予後予測因子であることが判明した。
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