ベセスダシステムは,atypical squamous cells(ASC)やatypical glandular cells(AGC)のカテゴリーを採用することで,判定困難な細胞症例における臨床的対応を明確にした。しかし,それでもASC,AGCの何れに判定すればよいのか苦慮する異型を伴う化生細胞症例が存在する。これらの細胞について,判定者間の判定のばらつきについて調査し,問題点を明らかにした。近隣5施設に所属する細胞診専門医4名,細胞検査士20名に異型化生細胞の写真18問を提示し,ベセスダシステムのカテゴリーでの判定を依頼した。その結果,異型化生細胞の評価に関する判定者間の一致率は極めて低く(κ値 −0.17~0.39),経験年数や細胞診専門医・細胞検査士別でも一致する傾向はみられなかった。異型を伴う化生細胞は,現在のベセスダシステムのカテゴリーを用いた評価では,判定者間でほとんど一致しないことが明らかとなった。近年,異型未熟化生細胞の一部にハイリスクHPV感染が関わることが明らかとなっており,このような細胞の判断基準,取り扱いについて新たな検討が必要と考えられた。