2022 年 71 巻 2 号 p. 250-256
目的と方法:抗原定量検査(LUMIPULSE SARS-CoV-2 Ag)は,SARS-CoV-2の検査において無症候性患者のスクリーニング検査,および退院時の陰性確認検査として使用することが可能である。今回,我々はCOVID-19と診断された入院患者のうち,同時に2本の鼻咽頭ぬぐい液検体が採取された患者(n = 156)を対象に,抗原定量検査とRT-PCRを比較し,抗原量による陰性確認と感染力の推測について検討を行った。結果:抗原定量検査の陽性一致率は97.4%(111/114),陰性一致率は42.9%(18/42),全体一致率は82.7%(129/156)であった。陰性確認では,RT-PCR陰性に相当する抗原量のカットオフ値は8.82 pg/mLであった。感染力の推測では,Ct値35以上に相当する抗原量のカットオフ値は89.73 pg/mLであった。考察:COVID-19患者の陰性確認における抗原定量検査のカットオフ値は8.82 pg/mLであり,メーカーが推奨しているカットオフ値1.34 pg/mLよりも高い結果であった。そのため,COVID-19患者の陰性確認において,1.34 pg/mLをカットオフ値とした場合,抗原定量検査はRT-PCRと比較して陰性になるまで時間を要する可能性が示唆された。また,ウイルスの感染力の推測では,Ct値35以上に相当する抗原量のカットオフ値は89.73 pg/mLであった。抗原量による感染力の推測においては今後,ウイルス培養を含めたさらなる検討が必要であると考える。
Purpose and method: We determined whether the quantitative antigen test (LUMIPULSE SARS-CoV-2 antigen test) can be used as a screening test for asymptomatic patients and as a negative confirmation test at discharge. In this study, we compared the quantitative antigen and RT-PCR tests in hospitalized patients diagnosed as having COVID-19 from whom two nasopharyngeal swabs were collected at the same time (n = 156). We also examined the negative confirmation and estimation of infectivity based on the amount of antigen. Results: The positive agreement rate of the quantitative antigen test was 97.4% (111/114), the negative agreement rate was 42.9% (18/42), and the overall agreement rate was 82.7% (129/156). In the negative confirmation, the cut-off value of the amount of antigen corresponding to a negative finding by the RT-PCR test was 8.82 pg/mL. In the estimation of infectivity, the cut-off value of the amount of antigen corresponding to the Ct value of ≥ 35 was 89.73 pg/mL. Discussion: The cut-off value of the amount of antigen determined by the quantitative antigen test in the negative confirmation of COVID-19 patients was 8.82 pg/mL, which was higher than the cut-off value of 1.34 pg/mL recommended by the manufacturer. Therefore, if 1.34 pg/mL is used as the cut-off value for negative confirmation in COVID-19 patients, the quantitative antigen test may take longer to show a negative result than the RT-PCR test. In addition, the cut-off value of the amount of antigen corresponding to the Ct value of ≥ 35 was 89.73 pg/mL in the estimation of the infectivity of the virus. In estimating the infectivity based on the amount of antigen, further studies including virus culture are necessary.
2019年中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は収束する気配もなく全世界に脅威を与え続けている。我が国においても2022年2月時点で感染者数は400万人を超えている1)。政府は感染拡大を防ぐため,現在に至るまで度重なる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を行ってきたが,新たな変異株であるオミクロン株の流行もあり,いまだ収束の目途はついていない状況である。病原体検査によるCOVID-19の診断は,核酸検出検査,抗原検査(定性,定量)が実施されている。しかし,感度・特異度の問題から現段階で症状の有無に関係なく検査が可能とされているのは核酸検出検査と抗原定量検査である。病原体診断では核酸検出検査がゴールドスタンダードとされているが,検査時間が長いことや,熟練した人材が必要とされていることから,導入するにあたって様々な課題が懸念される2)。一方で抗原定量検査は特異度が高く,感度も簡易な核酸検出検査(LAMP法等)と同等であるとされている3)。また,特殊な手技を必要とせず,検査時間も30分程度であり,短時間で多検体を処理することが可能であるため,当院のような中小規模の市中病院検査室においても導入が可能である。また,抗原定量検査はCOVID-19の診断だけでなく,退院における陰性確認にも使用することが可能となっており,診断における検査だけでなく,ベッドコントロールの判断の基準としても使用することができるため,その有用性は大きい。本邦においても,抗原定量検査とRT-PCR検査を比較した報告は数例確認されているが,これらの報告は主に感染者と非感染者を含めたスクリーニング検査における抗原定量検査の評価を目的とした検討である4)~6)。本検討がこれらの検討と異なる点はCOVID-19患者を対象とし,抗原定量検査とRT-PCRの結果を比較した点である。これらの比較により,抗原量の経時的な変化と抗原定量検査による陰性確認または感染力の推測について,若干の知見と傾向を得ることができたので報告する。
COVID-19と診断された入院患者を対象患者とした。2021年1月21日~2021年4月30日の期間に提出された対象患者の鼻咽頭ぬぐい液検体のうち,同時に抗原定量検査とRT-PCRのオーダーがあった検体(54名 延べ156件)を対象とした。検体の採取に使用した綿棒は綿球の綿棒(ニプロスポンジスワブ)を使用した。なお,同時に採取した2本の鼻咽頭ぬぐい液検体における,採取の順番と検査方法の割り当てに規則性はなく,すべてランダムに割り当てたものとした。本検討は大森赤十字病院倫理委員会の承認を得た上で行った(承認番号20-34番)。
2. 検査方法1) 抗原定量検査「ルミパルスSARS-CoV-2 Ag」SARSコロナウイルス抗原キット「ルミパルスSARS-CoV-2 Ag」を用い,全自動化学発光酵素免疫システム「ルミパルスG600II」(試薬・測定システム共に富士レビオ)にて検査を行った。測定試料は検体処理液セット(SARS-CoV-2 & Ful)のスクイズチューブに検体処理液を500 μL分注し,鼻咽頭ぬぐい液の綿球部分を指で挟み押さえ,絞るようにして綿球部分から採取検体を抽出し,滴下チップをはめ込み5分間静置後,泡立てないように試料液を全量滴下し検査を行った。すべての検体は検体到着後,約1時間以内に上記の方法で処理を行った。結果判定はメーカー推奨のカットオフ値を用い,1.34 pg/mL以上を陽性と判定した7)。なお,今回使用した測定データはすべて遠心処理をしていないものである。また,抗原濃度が5,000.00 pg/mLを超えた検体は,希釈による再測定は行わなかった。
2) 核酸検出検査「Takara SARS-CoV-2ダイレクトPCR検出キット(以下,RT-PCR)」測定システムはApplied Biosystems 7500 Real-Time PCR Systemを用い,外部委託(SRL)にて検査を行った。外部委託検査機関に提出する検体は滅菌生理食塩水等を添加せず滅菌スピッツに入れ4℃で保存した。本試薬は蛍光プローブを組み合わせたRT-PCR法により,生体試料に含まれるSARS-CoV-2(N遺伝子)を検出するキットである。SARS-CoV-2のN遺伝子の検出には,アメリカ疾病予防管理センター(CDC)発行「2019-Novel Coronavirus (2019-nCoV) Real-time rRT-PCR Panel Primers and Probes」(Effective: 24 Jan 2020)に記載されたプライマー・プローブを使用している。測定結果の判定は,Threshold Cycle値(以下,Ct値)40以下を陽性(+),40より大きい場合または不検出の場合は陰性(−)とした8)。また,本検討において陽性となった検体のCt値も同時に記録した。
3. 検討方法1) 抗原定量検査とRT-PCRの判定一致率両法の判定一致率においては,RT-PCRに対する抗原定量検査の,陽性一致率(感度),陰性一致率(特異度),全体一致率,さらに統計学的に偶然によらない一致率の指標であるκ係数9)を算出した。
2) 比較項目と有意差判定検体採取時の年齢,性別,検体採取時の患者病日,抗原量を比較項目とした。無症状患者の発症日は抗原定量検査またはRT-PCRにより陽性が判明した日とした。結果群は抗原定量検査とRT-PCRの陽性一致群・結果不一致群・陰性一致群の3群に分け,統計学的解析は陽性一致群と結果不一致群で比較を行った。名義変数(性別)に関する解析はFisherの正確確率検定,連続変数(年齢,検体採取時の患者病日,抗原量)に関する解析はMann-Whitney U検定を用い,有意水準はp < 0.05とした。
3) 抗原量とCt値の相関抗原量は対数変換した値を用い,抗原量とCt値の相関関係はPearsonの積率相関係数(Microsoft Excel 2013)にて求めた。
4) 陰性確認における抗原量のカットオフ値陰性確認における抗原量のカットオフ値は,抗原定量検査と同時に採取したRT-PCRの結果を陽性群と陰性群に分類し,ROC解析により座標左上隅に最も近づく閾値をカットオフ値とした。
5) 感染力の推測における抗原量のカットオフ値Ct値を用いて感染力の推測を行った報告は複数あるが,本検討においてはSinganayagamら10)の報告を参考に,Ct値35以上を感染力無しとして定義した。感染力の推測における抗原量のカットオフ値は,抗原定量検査と同時に採取したRT-PCRのうち,Ct値35以上を感染力無し,Ct値35未満を感染力有りに分類し,ROC解析により座標左上隅に最も近づく閾値をカットオフ値とした。
上記検討方法で用いた統計解析は統計解析ソフトEZR(Ver. 1.53)を用いて算出した。EZRはRおよびRコマンダーの機能を拡張した統計ソフトウェアである11)。
結果をTable 1に示す。RT-PCRに対する抗原定量検査の陽性一致率(感度)は97.4%(111/114),陰性一致率(特異度)は42.9%(18/42),全体一致率は82.7%(129/156)であった。κ係数による一致度の評価ではκ = 0.478で,中程度の一致度(moderate agreement)であった。
RT-PCR | ||||
---|---|---|---|---|
(+) | (−) | total | ||
Quantitative antigen test (LUMIPULSE SARS-CoV2 Ag) | (+) | 111 | 24 | 135 |
(−) | 3 | 18 | 21 | |
total | 114 | 42 | 156 |
Positive agreement rate 97.4% (111/114)
Negative agreement rate 42.9% (18/42)
Overall agreement rate 82.7% (129/156)
Kappa coefficient 0.478 (moderate agreement)
結果をTable 2に示す。各比較項目を陽性一致群と結果不一致群で比較したところ,検体採取時の患者病日(p = 0.036)と抗原量(p < 0.001)に有意差が認められ,その他の項目に有意差は認められなかった。
p-value** | Positive agreement group n = 111 | Disagreement group n = 27 | Negative agreement group n = 18 | |
---|---|---|---|---|
Age* | 0.19 | 84 (15) [33–94] | 78 (14) [40–98] | 81 (13) [57–98] |
Sex (male/female) | 1 | 62/49 | 15/12 | 10/8 |
Days from the onset of symptoms* | 0.036 | 12 (7) [0–45] | 15 (8) [0–29] | 17 (7) [7–46] |
Antigen level (pg/mL)* | < 0.001 | 224.90 (4,251.37) [1.56–5,000.00] | 7.47 (25.27) [0.60–1,398.09] | 0.60 (0.03) [0.60–1.32] |
*Median (Interquartile range) [All range]
**Significant difference between positive agreement group and disagreement group
相関図をFigure 1に示す。Pearsonの積率相関係数はr = −0.767,R2 = 0.5887となり,抗原量とCt値には強い相関関係が認められた。
The correlation coefficient between antigen level and Ct value was −0.767 and the coefficient of determination was 0.5887, indicating a strong correlation.
結果をFigure 2に示す。ROC解析で得られた抗原量のカットオフ値は8.82 pg/mL(感度81.6% 特異度69.0%),AUCは0.849(95%Cl: 0.784~0.913)という結果であり,メーカーで推奨されているカットオフ値1.34 pg/mLよりも高い値となった。
The cut-off value for the antigen level corresponding to RT-PCR negative was 8.82 pg/mL (Sensitivity: 81.6% Specificity: 69.0% AUC: 0.849).
結果をFigure 3に示す。ROC解析で得られた抗原量のカットオフ値は89.73 pg/mL(感度81.7% 特異度87.1%),AUCは0.915(95%Cl: 0.873~0.958)であった。
The cut-off value for the antigen level corresponding to a Ct value of ≥ 35 was 89.73 pg/mL (Sensitivity: 81.7% Specificity: 87.1% AUC: 0.915).
COVID-19患者の陰性確認において,RT-PCRを基準とした抗原定量検査の結果の一致率は陽性一致率(感度)97.4%,陰性一致率(特異度)42.9%であり,抗原定量検査の擬陽性率は57.1%と高い結果となった。陽性一致群と結果不一致群の比較において,抗原量(p = 0.036)と検体採取時の患者病日(p < 0.001)に有意差が認められた。陽性一致群の抗原量と検体採取日の患者病日の中央値は224.90 pg/mLと12日であり,結果不一致群の抗原量と検体採取日の患者病日の中央値は7.47 pg/mLと15日であったことから,抗原定量検査の結果が不一致となる要因として,発症から日数の経過したウイルス量(抗原量)の少ない患者検体において結果が不一致となる傾向であることが示唆された。冒頭に述べた通り,抗原定量検査とRT-PCRの比較は複数報告されている。まず,Hirotsuら5)の報告において,RT-PCRと比較して抗原定量検査の感度は92.5%,特異度は100%であった。また,同様にAokiら6)の報告においても,抗原定量検査の感度は91.7%,特異度は98.5%であり,本検討との結果と比較して,特異度に大きな差が見られた。
特異度において上記の報告と異なる要因について以下のことが考えられる。第一に,検討方法が異なる点が挙げられる。上記の報告では1本の鼻咽頭ぬぐい液検体をウイルス培養液等で凍結保存し,その保存液を使用して抗原定量検査を行っている。本検討においては2本の鼻咽頭ぬぐい液検体をRT-PCR検査用と抗原定量検査用に採取している。また,抗原定量検査を行う際には専用の検体処理液で処理をしたものを試料として検査を行った。第二に,対象とする患者の違いが挙げられる。本検討では,COVID-19確定患者から採取された検体のみを対象としており,スクリーニング検査目的の患者から採取した検体は含まれていない。これらの点を考慮した上で,本検討において,抗原定量検査の偽陽性が多い結果について,以下のことが考えられる。まずRNAと比較して蛋白質は安定性が高いことから,蛋白質の分解はRNAの分解よりも遅く,プロテオミクス解析への影響は小さいと報告されている12)。また,コロナウイルスにおいて,RNAを認識する宿主の免疫応答を逃れるため,ウイルスのエンドヌクレアーゼが周囲のウイルスRNAを分解していることが報告されており,ウイルスRNAが少ない場合には,エンドヌクレアーゼによる分解の影響で,RNA検出が困難になる可能性が考えられる13)。以上のことから,感染後期のウイルス量が少ない患者において,ヌクレオカプシド蛋白を標的とする抗原定量検査はウイルスRNAを標的とするRT-PCRと比較して高感度であり,擬陽性という結果になった可能性が考えられる。飯田ら14)の報告ではスクリーニング検査においてRT-PCRよりも抗原定量検査の感度が高かった要因について,蛋白の安定性とエンドヌクレアーゼによる影響に加え,コロナウイルスの構造蛋白質として最も多量であるヌクレオカプシド蛋白が感染初期から多量に生産されることにより,RNAよりも検出しやすい可能性について推察をしており,感染初期のウイルス量が少ない患者においても同様の傾向があることが考えられる。
本検討において,RT-PCR陰性に相当する抗原定量検査のカットオフ値は8.82 pg/mLであり,メーカーが推奨しているカットオフ値である1.34 pg/mLよりも高い値となっている。COVID-19患者の陰性確認に抗原定量検査を行う際,1.34 pg/mLのカットオフ値を用いた場合はRT-PCRと比較して,陰転化に時間を要する可能性が示唆されたことから,メーカーの推奨しているカットオフ値は,COVID-19患者の陰性確認の際には感度が高すぎる可能性が考えられる。Aokiら6)の報告においてもRT-PCR陰性,抗原定量検査陽性となった8検体はすべてCOVID-19の既往歴を持つ患者検体であった。これらの結果は残存したSARS-CoV-2のヌクレオカプシド蛋白を検出したものであると推察する。よって,陰性確認に抗原定量検査を用いる場合はこのような傾向があることを考慮した上で,結果の解釈を行う必要性が考えられる。現状においては病床のひっ迫を防ぐためにも,主に退院の判断は発症後の経過時間と症状軽快後の経過時間を参考とした基準(symptom-based strategy)により行っていくことが望ましいと考える。また,スクリーニング検査と陰性確認の様に,検査の目的によってカットオフ値を変更する必要性ついては,今後さらなる検討を加え追及していく必要性があると考える。
SARS-CoV-2の感染力については,Ct値や発症からの日数に関係していることが明らかになってきている。Singanayagamら10)によると,培養可能なウイルスはCt値35以上では全体の約8%,患者病日では10日以降で全体の6%でしか培養できなかったと報告している。同様にScolaら15)はCt値33~34においてウイルス培養が出来なかったといった報告をしている。これらの報告から,COVID-19患者における病原体検査による陰性確認は,ウイルスの感染力の有無に注目するべきであり,検査結果の解釈は定性的ではなくウイルス量を反映するCt値のように定量的な観点で見ていく必要性があると考える。ウイルス量(Ct値)と抗原量には強い相関性があることが確認されており4)~6),今回得られたデータについても同様に強い相関性が確認されている。そのため,Ct値と同様に抗原量においても,定量的な観点による感染力の推測は可能であると考える。本検討で得られたデータから,抗原定量検査におけるSARS-CoV-2の感染力の推測では,Ct値35以上の感染力に相当する抗原量のカットオフ値は89.73 pg/mLであった。感染力の推測についてはあくまでCt値と比較した傾向であり,実際にウイルス培養による確認は行っていないため,抗原量と感染力の関係性についてはウイルス培養を含めたさらなる検討が必要であると考える。最後に本検討におけるリミテーションとして考慮しなければいけない点を挙げる。第一に,今回使用した検体は,採取の順番とオーダーの割り当てに規則性はなく,すべてランダムに割り当てたものであり,1本目と2本目で採取されたウイルス量に差がでてしまう可能性がある。第二に,抗原定量検査の試料作製の段階で遠心処理を行っていないため,粘調性検体による影響を排除できていない。第三にRT-PCR検体は外部委託の検査であるため,採取から検査までにタイムラグが生じており,検体の乾燥などによる影響を排除できていない。これらの因子がどの程度結果に影響しているかについては定かではないが本検討の限界として記しておく。
本検討では,COVID-19患者の陰性確認における抗原定量検査のカットオフ値は8.82 pg/mLであり,メーカーの推奨しているカットオフ値である1.34 pg/mLよりも高い結果となった。そのため,COVID-19患者の陰性確認において,1.34 pg/mLのカットオフ値を用いた場合,抗原定量検査はRT-PCRと比較して陰転化に時間を要する可能性が示唆された。また,抗原定量検査におけるSARS-CoV-2の感染力の推測では,Ct値35以上の感染力に相当する抗原量のカットオフ値は89.73 pg/mLであった。抗原量による感染力の推測については今後,ウイルス培養を含めたさらなる検討が必要であると考える。
本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。