医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
症例報告
初診時に強皮症性腎クリーゼを呈した抗RNAポリメラーゼIII抗体陽性全身性強皮症の一例
内田 浩紀花見 恭太子安 貴良鈴木 星也小林 政司藤野 節山﨑 一人
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2024 年 73 巻 4 号 p. 850-856

詳細
Abstract

強皮症性腎クリーゼ(scleroderma renal crisis; SRC)は全身性強皮症(systemic sclerosis; SSc)に随伴する予後不良な腎傷害で,臨床的には急速に進行する腎不全を特徴とし,しばしば微小血管障害性溶血性貧血(MAHA)を伴う。本稿では全身性強皮症の診断時にSRCを示したSScの1例を報告する。症例は78才,男性。20XX年Y月1日,心窩部痛と全身倦怠感を主訴に近医を受診し,腎機能障害と胸部食道がんを指摘され,同月14日当院を紹介受診し入院となった。血液検査で高血圧,両側胸水,貧血,血小板減少,腎機能障害を認め,末梢血塗抹標本では破砕赤血球が観察された。診断を確定する目的で腎生検を行い,細動脈の多層同心円状壁肥厚と内腔の狭小化,糸球体係蹄の虚脱と毛細血管内皮細胞傷害を認めた。modified Rodnan total skin thickness score(m-Rodnan TSS)mRSS 27点の皮膚硬化と抗RNAポリメラーゼIII(RNAP 3)抗体陽性を認めたことから,SRCを伴うびまん性皮膚硬化型全身性強皮症(diffuse cutaneous SSc; dcSSc)と診断した。抗RNAP 3抗体陽性dcSScではしばしば診断時にSRCを伴い悪性腫瘍を合併する。速やかな診断と適切な治療介入が不可欠と考える。

Translated Abstract

Scleroderma renal crisis (SRC) is a life-threatening complication of systemic sclerosis (SSc), characterized by new-onset progressive acute renal failure, often with associated microangiopathic hemolytic anemia (MAHA). Here, we report a patient who developed SRC prior to being diagnosed with SSc. A 78-year-old man consulted a family doctor with complaints of general fatigue and epigastralgia. Medical examination revealed progressive renal damage and thoracic esophageal cancer, and he was referred to our hospital. On admission, hypertension, bilateral pleural effusion, anemia, thrombocytopenia, and acute kidney damage were evident. A peripheral blood smear showed schistocytes with evidence of MAHA. Renal biopsy to clarify the diagnosis revealed marked edematous intimal expansion of the interlobular arteries and ischemic change with endothelial damage of the glomeruli, suggesting SRC. Subsequent systemic examination revealed a modified Rodman total skin thickness score (mRSS) of 27 points and positivity for anti-RNA polymerase III (RNAP 3) antibody. On this basis, a diagnosis of anti-RNAP-positive diffuse cutaneous SSc accompanied by SRC was made. Patients with anti-RNAP 3-positive SSc frequently develop SRC and are complicated by malignancies prior to diagnosis of SSc. Prompt diagnosis and appropriate treatment intervention are essential for this disease.

I  緒言

全身性強皮症(systemic sclerosis; SSc)は皮膚硬化を特徴とする原因不明の自己免疫疾患で,皮膚硬化の分布により,四肢末梢と顔面のみが侵される限局皮膚硬化型(limited cutaneous SSc; lcSSc)と,体幹部も侵されるびまん性皮膚硬化型(diffuse cutaneous SSc; dcSSc)の2型に分けられ,両病型が移行することはない1)。SScは皮膚および臓器の線維化を基本病理として全身の小血管の閉塞,免疫系の活性化を呈し,皮膚の他に腎・肺・消化管・心循環系などの臓器が侵される。SScに伴う臓器障害の中で最も重篤なものが強皮症性腎クリーゼ(scleroderma renal crisis; SRC)で,発症は30~60歳台に多く,女性の頻度が高い2)。SRCは全SScの経過中約4~5%に発症するとされており,型別の発症頻度はdcSScが4.2%,lcSScが1.1%と,dcSScにおいて高率である1)。われわれは食道癌と合併した原因不明の腎障害に対し腎生検を実施し,病理所見からSRCを推定し得た抗RNAポリメラーゼIII(RNAP 3)抗体陽性dcSScの一例を経験したので報告する。

II  症例

症例:78歳,男性。

主訴:心窩部痛,全身倦怠感,労作時呼吸困難。

既往歴:高血圧・胸心症・心房細動(11年前より内服加療中),胃潰瘍術後(50年前)。

家族歴:膠原病疾患なし。

嗜好:アルコール歴 焼酎3合/日,喫煙歴 10本/日(20~78歳)。

現病歴:近医にて高血圧・胸心症・心房細動の内服加療中(ベニジピン4 mg/日,カルベジロール5 mg/日,アスピリン100 mg/日)であった。20XX年Y月1日,心窩部痛と全身倦怠感を主訴に受診した。前医の血液・生化学検査では,血清クレアチニン値が3ヶ月で0.99 mg/dLから3.08 mg/dLと急激な上昇を認めていた。また,上部消化管内視鏡検査では胸部下部食道に半周性の腫瘤を認め,同部の生検検体の病理組織診断は扁平上皮癌であった。腎機能障害の精査加療が急務と考えられたため,同月14日に当院内科に紹介入院となった。

入院時現症:身長174.1 cm,体重50.5 kg,血圧154/96 mmHg,脈拍88回/分,体温36.1℃,呼吸数16回/分,経皮的動脈血酸素飽和度95%(安静時室内気)。両側下肺野で呼吸音の減弱を聴取。両側の手指,および,前腕より中枢側の皮膚硬化あり。頭頸部,腹部に異常所見なし。

入院時検査所見:赤血球数292 × 104/μL,Hb 10.3 g/dLと貧血を認め,血小板数も6.3 × 104/μLと減少していた。末梢血塗抹標本には破砕赤血球を認めた(Figure 1)。血清検査では総蛋白6.3 g/L,アルブミン4.0 g/L,BUN 62.3 mg/dL,血清クレアチニン6.33 mg/dL,eGFR 7.4と著明な腎機能の低下を認めた。LDH 556 U/L(LDH1アイソザイム35%)と高値であったが,間接ビリルビン値は0.6 mg/dLと基準範囲内であった。凝固能はPT 11.7秒,APTT 27.1秒,フィブリノゲン283 mg/dLはいずれも基準範囲内であったが,FDP 24.5 μg/mL,Dダイマー13.3 μg/mLと上昇を認めた。尿所見では,尿沈渣赤血球30–49/HPF,尿蛋白1.4 g/gCrと異常を認めた(Table 1)。

Figure 1  末梢血塗抹所見

破砕赤血球を認める(矢印)。

Table 1 入院時検査所見

生化学検査 血液検査 尿定性検査
TP 6.3 g/L 抗核抗体 ×160(speckled) WBC 53 × 102/μL 蛋白 2+
Alb 3.6 g/L 抗Scl-70抗体 陰性 RBC 292 × 104/μL 潜血 3+
T-Bil 1.0 mg/dL 抗セントロメア抗体 陰性 Hb 10.3 g/dL 尿定量検査
I-Bil 0.6 mg/dL MPO-ANCA 陰性 Plt 6.3 × 104/μL 蛋白 87 mg/dL
AST 28 U/L PR3-ANCA 陰性 凝固検査 Cr 63.7 mg/dL
ALT 11 U/L 抗GBM抗体 陰性 PT 11.7秒 尿沈渣
LDH 556 U/L LDHアイソザイム APTT 27.1秒 RBC 30–49/HPF
BUN 62.3 mg/dL LDH1 35% フィブリノゲン 283 mg/dL WBC 1–4/HPF
Cr 6.33 mg/dL LDH2 33% FDP 24.5 μg/mL 硝子円柱 3+
UA 9.7 mg/dL LDH3 17% Dダイマー 13.3 μg/mL 顆粒円柱 4+
eGFR 7.4 mL/分/1.73 m2 LDH4 7%
CRP 0.30 > mg/dL LDH5 8%

画像所見:胸部X線写真,体幹部CTでは両側下肺野に胸水の貯留を認め,明らかな網粒状影,浸潤影は確認できなかった。上部消化管内視鏡検査では下部食道に15 mm径の表層不整な扁平隆起を認め,同部からの粘膜生検にて扁平上皮癌と診断された(Figure 2)。腹部超音波検査では,両腎は10 cm大で左右差なく,皮質エコーレベルは正常で輪郭整,実質の厚みは正常であった。心臓超音波検査では中等度以上の弁膜症はみられず,駆出率は約50%と左室機能は比較的保たれていた。

Figure 2  上部消化管内視鏡画像

15 mm径の表層不整な扁平隆起を認める(矢印)(左:通常観察,右:NBI観察)。

入院後経過:心12誘導検査で心房細動を認めたため,抗凝固療法としてヘパリン10,000単位/日の持続点滴を行った。入院第9病日に血小板数が13.8 × 104/μL,血清ハプトグロビン値が10 mg/dL未満と正常化を認めたため,診断を確定する目的で腎生検を実施した。

腎生検病理組織所見:ヘマトキシリン・エオジン染色(Hematoxylin-Eosin staining; HE)では14個の糸球体が観察され,全節性硬化や分節性硬化を示すものは認めなかった(Figure 3A)。これらの糸球体には種々の程度に係蹄の収縮・虚脱がみられ,管内細胞増多は認めなかったものの,毛細血管内腔は狭小化していた。いずれの糸球体にも血栓は確認されなかった(Figure 3B)。過ヨウ素酸メセナミン銀染色(periodicacid-methenamine-silver staining; PAM)では収縮の強い係蹄においては基底膜のしわ状の変化(wrinkling)を認め,乏血性の変化が疑われた(Figure 3C, D)。虚脱の目立つ糸球体周囲の間質には局所性に炎症細胞の浸潤と線維化を認め,尿細管は萎縮していた。これらの変化に加えて,細動脈には種々の段階の硬化像が観察され,内腔は著しく狭小化していた。急性期の細動脈病変においては内膜に高度な浮腫状の肥厚がみられ,マッソン・トリクローム染色(Masson-trichrome staining; MT)で薄い青色に染まるムチン様基質の沈着が目立ち,myointimal cellの分布は比較的疎であった(Figure 4A)。慢性期の細動脈病変においては壁に同心円状(タマネギ状)の多層線維化とmyointimal cellの増生がみられ,内弾性板は不明瞭化していた(Figure 4B)。いずれの血管にもフィブリノイド変性は認めなかった。蛍光抗体法では糸球体への有意な免疫グロブリンや補体の沈着は認めなかった。腎生検電子顕微鏡所見では糸球体係蹄基底膜の蛇行,および,wrinklingが確認され(Figure 5A),糸球体係蹄には顕著な内皮細胞の膨化・変性,内皮下腔の開大(内皮下浮腫)を認めた(Figure 5B)。メサンギウム領域,上皮下,内皮下,基底膜内のいずれにも沈着物を認めなかった。

Figure 3  糸球体病理組織所見

全節性球状硬化や分節性巣状硬化を示す糸球体は認めない(A:HE染色 ×40)。種々の程度に係蹄の収縮・虚脱がみられ,毛細血管内腔は狭小化している(B:HE染色 ×400)。係蹄基底膜にしわ状の変化(wrinkling)を認める(C:×100,D:×400ともにPAM染色)

Figure 4  細動脈病理組織所見

急性期の細動脈病変。内膜は浮腫状に肥厚し,内腔は著しく狭小化する。肥厚した内膜にはMT染色で薄青色に染まるムチン様基質の沈着がみられ,myointimal cellの分布は比較的疎である(A:MT染色 ×200)。慢性期の細動脈病変。動脈壁に同心円状(タマネギ状)の多層線維化とmyointimal cellの増生がみられ,内弾性板は不明瞭化する。内腔は著しく狭小化する(B:PAM染色 ×400)。

Figure 5  電子顕微鏡所見

糸球体係蹄基底膜の蛇行およびwrinklingを認める。血管内皮細胞は膨化し,血管内腔が狭小化している(A:×6,000)。基底膜と血管内皮細胞の間の内皮下腔の開大(内皮下浮腫)がみられ,血漿成分の浸み出しを認める(矢印)(B:×10,000)。

GBM: glomerular basement membrane, EC: endothelial cell, VL: vascular lumen, SE: subendothelial edema

これらの所見より,糸球体毛細血管に血栓は確認されなかったが糸球体係蹄の虚脱と広範な内皮障害がみられ,細小動脈に特徴的な内膜肥厚がみられたことからSRCが示唆された。

腎生検後にあらためて皮膚の状態を確認したところ,全身の皮膚に中等度の硬化が見られ,modified Rodnan’s total skin thickness score(mRSS)は27点であった。免疫血清学的検査では,CRP 0.30 mg/dL,抗核抗体160倍(speckled pattern),抗RNAポリメラーゼIII(RNAP 3)抗体が63.4 Indexと陽性,抗scl-70抗体陰性,抗セントロメア抗体陰性,MPO-ANCA陰性,PR3-ANCA陰性,抗基底膜抗体陰性であった。全身性強皮症の診断基準・重症度分類・診療ガイドライン(2016)に基づきdcSScと診断した1)。経過中に両側胸水は消失したものの,血清クレアチニン値は7.67 mg/dLと増悪を認めたためSRCと食道癌の治療を並行して行う必要があり,患者本人の希望もあってがん治療専門施設に転院となった。

III  考察

初診時に急速な血小板減少と腎機能障害の進行を認め,腎生検においてSRCに特異的な病理組織所見が確認された抗RNAP 3抗体陽性dcSScの一例を報告した。dcSScの症例では短期間のうちに血管病変に基づく腎障害が起こりうる可能性があるとされているが,亜急性,もしくは慢性に進行した細小動脈内腔の狭小化を背景として,血栓形成などによって糸球体毛細血管への血流が途絶するものと推察される。

SRCの診断において腎生検は推奨される検査ではあるが,必須な検査ではない。しかしながら本例では初診時において皮膚硬化と腎機能異常を結びつけることができず,腎生検の結果からSRCを推定することとなった。SScでは皮膚の硬化や肺線維症などの線維化・硬化病変がクローズアップされることが多いが,血管病変の程度も病態の把握にも重要であり,皮膚硬化を示す患者の診療においては顕在化していない腎機能障害の存在の可能性を常に念頭に置くべきと考える。

以前の欧米の調査ではSRCはSSc例の10~19%に発生すると報告されていたが3),4),近年の国際的な調査によれば,SRCの合併はdcSScでは4.2%,lcSScでは1.1%とされており,比較的稀な合併症である5)。SRCは臨床的に急性あるいは亜急性に腎機能障害が進行し,血漿中レニン活性が上昇し高血圧症を合併するもので,その病態の基盤は血管内皮細胞障害による微小血栓症であり,病理学的に,急性期には弓状動脈から小葉間動脈の内膜が浮腫状に膨張し,ムチン様物質が蓄積することが特異的な所見として知られている。慢性期には細動脈内膜の層状の線維性肥厚(onion skin lesion)と内腔の狭小化・閉塞がみられ,糸球体係蹄は乏血性の虚脱を示す6)。われわれの経験した症例においても細小動脈の血管内膜の浮腫状の肥厚に加えて,タマネギ状の内膜肥厚と内腔の狭小化・閉塞,および,糸球体における係蹄の虚脱と基底膜wrinklingを認め,これらの所見は間質の細小動脈の亜急性,もしくは慢性的な障害とそれに起因する糸球体の虚血性変化の結果と考えられた。タマネギ状の内膜肥厚は悪性高血圧にしばしばみられる所見であるため,これのみでSRCと鑑別することは難しいと思われる。しかしながら,Figure 4Aでみられた細動脈内膜におけるムチン様基質の沈着を伴う浮腫,および,myointimal cellの疎な増生はSRCに比較的特徴的な所見と考えられる7)

腎生検検体の病理診断にはHE染色に加えて各種の特殊染色が用いられる。本例においても浮腫状に肥厚した血管内膜はMT染色で薄い青色に染色されており,ムチン様基質の沈着とmyointimal cellの疎な増生による内膜肥厚が確認できた。また,虚血に伴う糸球体基底膜wrinklingはPAM染色で明らかであった。

また,SRCでは細動脈や毛細血管での内皮細胞障害による微小血栓の形成がみられることも知られているが,われわれの症例においては血栓の存在を確認できなかった。これは図らずも心房細動に対するヘパリンの投与が微小血栓に対する抗血栓療法として奏功し,経過中に血栓が消失したためと推察される。しかしながら,血小板数の有意な減少,末梢血の塗抹標本における破砕赤血球の出現,LDH1アイソザイムの上昇は血栓症を示唆するもので,電子顕微鏡像で確認された広範な係蹄内皮細胞障害は糸球体における微小血栓症を反映していたものと考えられる。SRCにおける電顕での特徴的な所見はあまり知られていないが,SRCでは糸球体は血管閉塞に伴う二次的な係蹄内皮細胞障害を認めることが言われており,電顕で糸球体係蹄のwrinklingや内皮下浮腫を確認することは診断の一助となり得ると考える。

わが国のSSc患者では抗Scl-70(トポイソメラーゼI)抗体陽性例,抗セントロメア抗体陽性例がそれぞれ30~40%と大勢を占める。SScにおける抗RNAP 3抗体の陽性率は,人種や国によって大きく異なり(0~41%)8),日本人における出現頻度は6.0~10.7%と報告されている9),10)。本抗体の出現はSScに特異的で,強皮症以外の疾患で陽性となることはほとんどないとされている。本抗体陽性SSc例の臨床的特徴としては,i)皮膚硬化が広範囲に及び,かつ比較的急速に進行する,ii)強い皮膚硬化のため,手指の屈曲拘縮をきたしやすい,iii)間質性肺疾患の合併率が低く,かつ軽度である,iv)手指潰瘍や指尖部の虫喰状瘢痕が少なく,末梢循環障害は比較的軽症である,v)強皮症腎クリーゼの発症頻度が他の抗体陽性例に比べて高い,といった点が挙げられており9),11),いずれも本例に合致する所見であった。

また,本例では受診を契機に食道扁平上皮癌が発見された。抗RNAP 3抗体陽性SScでは非常に重要な知見として,悪性腫瘍の合併率が全経過中で約30%と高頻度で,そのうちの半分はSScの診断時に悪性腫瘍が検出されると報告されている12)。本抗体陽性例に合併した悪性腫瘍では,RNAP 3複合体サブユニットであるPRC1をコードする遺伝子に高頻度に変異が認められることも報告されており,変異型RNAP 3蛋白に対する自己免疫が強皮症の発症のトリガーとなっている可能性が提唱されている13)

抗RNAP 3抗体陽性SScにおけるSRCの発症頻度は日本人では10%程度と言われている。SRCは発症早期を乗り切ればその後は無治療でも重篤な障害を認めることは少ないことが知られている。初期治療においてはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の投与が有効とされており,ガイドラインにおいても第一選択薬として推奨されている1)。本例においてはより早い時点でACE阻害薬の投与が開始されるべきであったと考える。

IV  結語

本例の様に抗RNAP 3抗体陽性の強皮症患者では高頻度にSRCを合併し,致死的転帰となることがあるため,速やかな診断と適切な治療介入が不可欠と考える。

本例の要旨は第72回医学検査学会で報告した。

COI開示

本論文に関連し,開示すべきCOI 状態にある企業等はありません。

文献
 
© 2024 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
feedback
Top