日本看護管理学会誌
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報告
中堅看護師の能力開発における「ナラティブを用いた内省プログラム」の構築に関する基礎研究
小山田 恭子
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ジャーナル オープンアクセス

2007 年 11 巻 1 号 p. 13-19

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抄録

中堅看護師の能力開発は重要視されながらも,それを促進する環境は乏しく,効果が証明されている能力開発の手法も少ない.本研究の目的は,看護師の実践をナラティブに記述し,それを他者と共有することを通じて内省するというプロセスを有するキャリア開発ラダーの参加者の経験を記述し,ナラティブを用いた内省が効果的な能力開発となるための条件を考察することである.14名の看護師から半構成的面接法によりデータ収集し,グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき分析した.その結果,12のカテゴリー,38のサブカテゴリーを抽出した.本論文では,中核カテゴリーである【自己像の拡大】と,その前提条件となる【看護実践の意識化】,【学びを生む体験】について詳述した.対象者はナラティブの記述などの準備過程で自己を内省し,【看護実践の意識化】を経験した.また,評価会における他者とのさまざまな相互行為を通して【学びを生む体験】を得ていた.それにより〔自己肯定感の高まり〕や〔視野の拡大〕〔自己像の更新〕を経験し,【自己像の拡大】が起こっていた.しかし,学びが実践の変化につながらないと考える対象者もいた.理由として,自己の前提や価値観を問い直す過程を経験せず,〔自己像の更新〕が不十分であったことが考えられた.ナラティブを用いた内省を効果的なプログラムとするためには,看護師が自己の前提や価値観を問い直すことや,その場を共有する他者との信頼関係を促進する条件整備が必要である.

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© 2007 一般社団法人 日本看護管理学会
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