看護師が関与した医療事故後の対応において,看護師長は様々な困難に直面することになるが,看護師長の体験に焦点をあてた研究は少ない.本研究は,看護師が関与した医療事故後の対応において,看護師長が体験している困難さを明らかにすることを目的とする.1施設に所属する13名の看護師長が研究参加者となった.3回のフォーカス・グループ・インタビューを実施し,得られたデータは,質的帰納的に分析した.分析の結果,1)錯綜するコミュニケーション,2)医師との協働をめぐるジレンマ,3)傷つき葛藤を抱えたスタッフ支援,4)コントロールを越えた要求に直面,の4つのカテゴリーとそれぞれのサブカテゴリーが抽出された.看護師長が体験している困難さは,事故後対応における組織の課題を反映したものであり,危機管理にむけたコミュニケーションの質を高めること,事故後の患者や家族への倫理的対応,看護師長を側面から支える支援体制づくりの必要性が示唆された.