2009 年 13 巻 2 号 p. 81-88
看護の役割に関して考えていく上で,医療を享受し,かつ医療に参加し共にそれを形成する存在である患者を含めて議論することが必要であり,今の患者が医療や看護に何を求め期待しているかを知ることは看護に携わる者にとって重要である.そこで,日本の病院における看護に対する患者の期待に関するこれまでの研究の動向と知見を整理するために文献レビューを行った.
医中誌Webで1983年以降2008年までの,患者の期待を調査した文献を検索し43編の文献を得た.近年の文献が大半を占め,看護の特定のケアや行為に焦点を合わせたものや,特定の属性の患者集団を対象としたといった,限定された範囲での看護の期待に関するものが,31編と多数であった.また,多くの調査はリッカート尺度型の選択肢を用いていたが,何がより重要であるかは明らかになっていなかった.
より全般的な看護についての期待に関する調査を抽出し,選定基準を満たした4編を中心に患者期待の内容を検討した結果,論じられている要素は専門的要素に関わるものと人間関係に纏わるものとに大別された.しかし,何が専門性とされているかの議論は乏しく,今後の看護教育やキャリア開発に活かすには,このことを具体的にする調査が必要であると考えられた.また,集団としての看護師の実践や,病院システムの中での看護師の機能に関する言及はなく,異なる研究アプローチの必要性が示唆された.