2012 年 16 巻 1 号 p. 5-12
本研究は,3つの下位概念から構成される新卒看護師の職業コミットメントの入職前後における変動を記述すること,新卒看護師の職業コミットメントと職業継続意欲との関連性を明らかにすることを目的とした.新卒看護師138名を対象とし,入職前(T1),入職後3ヶ月(T2),入職後1年(T3)の3時点における縦断調査を実施した結果,以下の2点が明らかになった.
第一に,情緒的職業コミットメントはT1からT2にかけて低下し(p < .001),T2からT3へかけて上昇した(p < .001).計算的職業コミットメントはT1からT2にかけて(p<.001),T2からT3へかけて(p=.012)それぞれ有意に上昇した.規範的職業コミットメントはT1からT2にかけては有意な変動はみられず,T2からT3へかけて低下した(p<.001).第二に,T3の職業継続意欲には,T3の情緒的職業コミットメント(p<.001),T3の計算的職業コミットメント(p=.010),T3の規範的職業コミットメント(p=.045)が関連した.さらに,情緒的職業コミットメントのT1からT2(p=.001),T2からT3(<.001)への上昇,計算的職業コミットメントのT2からT3への上昇(p=.022)もまた有意な関連性を示した.以上のことから,新卒看護師支援に際して,職業コミットメントの一時点の状態だけではなく,入職前後における形成状況を考慮する重要性が示唆された.