日本看護管理学会誌
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原著
訪問看護師のワーク・ファミリー・コンフリクトが主観的健康感と訪問看護就業継続意志に与える影響
山口 善子
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2012 年 16 巻 2 号 p. 111-118

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抄録

ワーク・ファミリー・コンフリクト(Work Family Conflict:以下WFC)とは,仕事と家庭の両領域での役割を持つ個人が双方の役割を遂行する上で感じる心理的葛藤である.WFCは「仕事のために家庭役割が果たせない葛藤」(work interference family:WIF)と「家庭役割のため,仕事が思うように出来ない葛藤」(family interference work:FIW)の2つの下位概念で構成され,WIF とFIW は精神的健康や職務・家庭満足に対しそれぞれ異なる影響を及ぼすといわれる.本研究では訪問看護師の主観的健康感と訪問看護就業継続意志に対するWIF とFIW の影響を明らかにすることを目的とした.A 県下の全訪問看護ステーション57か所のうち承諾を得られた56か所に勤務する訪問看護師345人を対象としWork Family ConflictScale 日本語版を用いた質問紙調査を行った.質問紙調査票の回収は255人(回収率72.0%)で,回答に不備の無い者236人を分析対象とした.結果, 主観的健康感にはFIW よりもWIF が負の影響を及ぼしていた.訪問看護就業継続意志にはFIW よりもWIF が負の影響を及ぼしていた.本研究対象者の主観的健康感と訪問看護就業継続意志には,職務内容等の職務環境が家庭での責任と役割よりも影響する事が示唆された.訪問看護師が良好な健康感を維持し訪問看護を継続する意志を持つためには,訪問看護事業所が職務内容等を調整する事,そしてファミリー・フレンドリー施策等に取り組むことが有効ではないかと考えられた.

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© 2012 一般社団法人 日本看護管理学会
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