2020 年 24 巻 1 号 p. 154-163
本研究は中堅看護師がエンパワメント構造に接触した際,キャリアデザインの違いが精神的エンパワメントに対してどのように影響するか明らかにすることを目的とした.首都圏下7施設の病院に勤務し,経験年数5~15年を有する看護師529名を対象に,基本属性,Conditions of Work Effectiveness Questionnaire-Ⅱ,Psychological Empowerment Scale,看護職のキャリアデザイン尺度からなる無記名自記式質問紙調査を実施した.回収数は223名(回収率42.2%),有効回答は216名(40.8%)であった.精神的エンパワメントを従属変数とし,他の変数を独立変数とした二元配置分散分析を行った.その結果,エンパワメント構造への接触(F(1, 212)=7.51, p<.01)とキャリアデザイン(F(1, 212)=29.00, p<.001)に主効果がみられ,どちらも高群は低群より精神的エンパワメントが高かった.また,エンパワメント構造への接触と,キャリアデザインの構成要素のうち「看護師生活の岐路の自覚」では交互作用がみられた(F(1, 212)=7.85,p<.001).これらにより中堅看護師は,エンパワメント構造への接触やキャリアデザインの程度の違いが精神的エンパワメントに影響することが示された.また,エンパワメント構造へ接触した中堅看護師は,「看護師生活の岐路の自覚」を介して精神的エンパワメントに影響することが確認されたが,因子の信頼性に課題が残っており,今後さらに検討する必要がある.