目的:複雑な看護実践に負担なく手指衛生を組み入れる教育に資するために,臨床看護実践状況における看護師の手指衛生の認識を明らかにした.
方法:急性期病棟に所属する卒後3年目以上の看護師10名を対象に,半構造化面接を行い質的に分析した.
結果:臨床看護実践における手指衛生の状況には4つの状況があった.①同僚との相互作用でエンパワメントされる状況では,【病院全体で手指衛生を学んできた】【自分が感染の媒介者になりたくない】【手指衛生をしていない人と思われたくない】を背景に【見られていると思う】【習慣として行う】,②個人の衛生習慣からくる自己防衛的な動機が影響する状況では,【医療者と患者は違う】【排泄物は汚い物】などを背景に【手が汚染した/汚染したかもしれない】,③知識や臨床経験から手指衛生の必要性を判断する状況では,【感染を起こすと患者も自分達も大変になる】【感染経路をイメージできる】などを背景に【手指衛生が絶対必要】と判断する一方,【これぐらいでは感染しないだろう】の判断もあった.④手指衛生を考える余裕がない状況は,【仕事を滞りなく遂行したい】【手指衛生は皆も徹底できていない】【常に手指衛生のことを考えていない】などを背景に手指衛生は【時間的に無理!】,【脳裏にな(い)】かった.
考察:臨床看護実践に手指衛生を組み入れるための教育では,今回明らかになった認識を考慮した教育が重要である.