日本看護管理学会誌
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精神科看護師の自尊感情の関連要因
─道徳的感受性を視野に入れた検討─
松浦 利江子
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2020 年 24 巻 1 号 p. 186-198

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抄録

目的:精神科看護師の自尊感情の関連要因を道徳的感受性の視点も含めて明らかにし,看護師支援策を検討すること.

方法:1私立病院の看護師122名(有効回答率61.00%)を分析対象として,基本的属性,職場環境要因,患者に対する陰性感情経験(松浦,鈴木,2014),道徳的感受性(前田ら,2019),自尊感情(Rosenberg, 1965;山本ら,1982)に関する質問紙調査を行い,自尊感情尺度合計得点を従属変数とした階層的重回帰分析を行なった.

結果:回答者の平均年齢は48.16歳(SD=15.24),平均経験年数は23.14年(SD=15.21)であった.自由度調整済み決定係数は0.68であった.異動希望,道徳的感受性,超過勤務時間,患者に対して陰性感情をもちながらケアした経験,職場での悩みの相談相手,最終学歴と自尊感情との関連が認められた.正の関連がみとめられた要因のうち,「道徳的強さ」が最も強い影響力を示していた.「道徳的気づき」とは負の関連がみとめられた.

結論:看護師の自尊感情維持のために,看護倫理研修会などに際して,「道徳的強さ」の育成に留意すると共に「道徳的気づき」の能力だけが強化されることのないように工夫する支援,適度な超過勤務時間になるための支援,所属する職場や職業への帰属意識を高める支援,上司が相談にのる支援,受けた基礎看護教育の違いによる格差意識が生じることのないように卒後教育の機会を十分に設ける支援が効果的であると推測された.

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