組織学習は個人の学習とは区別され,組織が新しい情報や知識を獲得してから,その知識をルーティーンに変化させ,組織の潜在的行動範囲を変えるプロセス,と定義される.組織学習によって,組織全体で複雑な状況や変化に対応することができると考えられる.
本研究は,企業の組織学習を測定する尺度としてFloresら(2012)によって開発された組織学習サブプロセス測定尺度(The Measurement Scale for the Organizational Learning Subprocesses)を原作者の許可を得た後に日本語版として翻訳し,原作者による逆翻訳版の確認を経た後,信頼性・妥当性を検証することを目的として医療施設の看護職を対象とした無記名自記式質問紙調査を実施した.2018年8月~9月に国内1病院9部署266名の看護職に調査票を配布し,239名から回答を得た.原版と同じ【情報獲得】【情報分配】【情報解釈】【情報統合】【組織記憶】の5因子23項目の因子構造で確証的因子分析を実施し,構成概念妥当性を確認した.クロンバックのα信頼性係数は全ての下位因子において0.7以上であった.基準関連妥当性,弁別的妥当性,時間的安定性も確認されたことから,作成した尺度は日本語版の組織学習サブプロセス測定尺度として使用可能なことが示された.