日本看護管理学会誌
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実践報告
熊本地震で被災し入院機能を喪失した自治体病院に勤務する看護師長の4ヵ月間の役割遂行に対する思い
吉村 圭子 生田 まちよ
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2020 年 24 巻 1 号 p. 72-81

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抄録

研究の目的は,熊本地震で被災した自治体病院の看護師長の発災から4ヵ月間の思いと,役割と認識したことを明らかにして,看護師長への支援への示唆を得ることであった.5名の看護師長に半構成的面接調査を行い質的帰納的に分析した.その結果,188のコードから29のサブカテゴリーが得られ,【自身の被災の中での業務を行う環境の辛い思い】【市職員としての自覚と制約の狭間での憂慮】【発災後から看護師長として心砕いた役割】【病院再建に向けて期待と不安が揺れ動く思い】【被災経験が与える看護師長の役割への躊躇】【災害を経験し気づいた今後の災害対策の課題】【看護師長として役割遂行のために行う切り替え作業】【病院再建までの空白の時間は看護師長にとっての憂い】【看護師長を導く力強く包容力のある看護部の存在】の9つのカテゴリーが抽出された.

発災から4ヵ月間は,看護師長として市職員として不安や失望とで,前に進みたい思いの中で揺れ動きながら切り替え作業を行う時期であった.看護師長は,多くの役割を認識していたが,それが果たせていないとの思いがあった.看護部長は,看護師長が思いを表出できる場を提供し,災害の経験を看護師長役割として肯定的にとらえるような働きかけや,平時の災害対策のみではなく自治体病院の看護師としての役割や,レジリエンスを高める教育を行うことの必要性が示唆された.

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© 2020 一般社団法人 日本看護管理学会
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