日本看護管理学会誌
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原著
大腿骨近位部骨折患者におけるADL回復過程の可視化と関連する施設要因の検討
―DPCデータを用いた探索的分析―
松村 いつみ森脇 睦子大成 佳純佐々木 美樹林田 賢史緒方 泰子
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2023 年 27 巻 1 号 p. 208-217

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抄録

本研究の目的は,大腿骨近位部骨折術後患者が退院時ADL状態に至るまでの経日的変化を明らかにするとともに,病院規模など施設要因との関連を調査し,早期ADL回復に影響する環境要因を明らかにすることである.急性期病院において股関節・大腿近位の骨折で手術を行い退院した65歳以上の患者のうち,手術翌日から退院前日までに移乗の状態が回復した患者20,025人を分析対象とした.Diagnosis Procedure Combination(DPC)データを用いて,対象者属性,施設属性,移乗の状況についてデータ収集し,移乗能力の回復速度と施設属性との関連を調査した.統計学的手法はMann-WhitneyのU検定,もしくはχ²検定による群間比較をグループごとに用いた後,両グループの早い群と遅い群を統合してロジスティック回帰分析を行い,有意水準は5%とした.平均年齢は84.2歳,平均在院日数は25.3日だった.回復には施設規模が影響し,ロジスティック回帰分析(早い回復=1)において,「0-199床」と比較したオッズ比は「200-399床」で1.23,「400-599床」で1.29,「大学病院」で1.38であった(p<0.01).リハビリ量・頻度については統計学的有意差はなかった.我が国では現在,医療機関の機能分化が進められているところであるが,急性期病院を対象に高齢者の急性期代表疾患である大腿骨骨折に着目した本研究では病床規模によって回復速度に差が生じた.現行の病床機能分化の実施を進めている状況下でも,施設規模によってアウトカムに差が出ていることが明らかになった.

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© 2023 一般社団法人 日本看護管理学会
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