研究目的 保健所が取り組んだ変革活動の過程で導き出された要件と,「組織の変革過程に影響を与える条件」とを対比することで,経営的観点でとらえた地域における変革活動を提示したい.
対象・研究方法 対象はA地区の平成10年4月~平成11年3月までの保健所・教育行政が抱える連携事業の統合システム(協議会)の設立に取り組んだA保健所保健師の活動事例である.
研究材料は会議関係資料約50枚と協議会成立までの会議録(逐語録)約2万字を用いた.
データの収集・分析は帰納的な質的研究法を用いた.質的データから,「変革の目標,ビジョン,具体案づくり」に係る要件を導き出した.さらに,この要件を,企業組織の「組織の変革過程に影響を与える条件」と対比させた.
結果および結論 協議会設立の過程は,予算や資源をいかに効率良く住民に提供できる仕組みをつくるかという,地域における経営活動の一端であった.
その経営活動は,従来の関係機関・団体のそれぞれの対応から,それぞれが抱える事業を統合することで,協議会を設立し,協働による事業展開を図ることを可能にした変革活動であった.
「組織の変革過程に影響を与える条件」が,本事例の「変革の目標,ビジョン,具体案づくり」に係る要件と類似していたことから,地域における変革活動にも,経営学的な原理が成立することがわかり,経営的な観点をもった活動の一端を示すことができたのではないかと考える.