北ヨーロッパ研究
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論文
「北欧モデル」と新産業・イノベーション創出
フィンランドにおけるヘルスケア・デジタル化の事例
徳丸 宜穂
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 18 巻 p. 27-37

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抄録

福祉国家を経済的に持続可能なものとするためには、福祉サービスの生産性向上と産業構造転換・新産業創出が必要であるが、いわゆる北欧モデルの制度的特質がいかにこのプロセスに貢献しうるかは自明ではない。そこで本稿では、フィンランド・オウルにおける産業構造転換と、それに続く保健サービスのデジタル化の事例研究をもとに次の2点を明らかにする。第1に、福祉国家(改革)は、新産業の市場を作り出すことによって新産業の創出とイノベーションを促しうる。第2に、地方自治体や中間諸組織は、イノベーションを刺激し方向づける上でアクティブな役割を果たしうる。北欧モデルの経済的意味を論じる先行研究は主に個人への教育・訓練投資に焦点を当てており、個人的・集団的能力の「供給側」に対する北欧モデルの含意に着目していたが、本稿の力点は、形成された能力の「需要側」に対して北欧モデルが影響を及ぼす可能性に焦点を当てているという点にある。

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2022 『北ヨーロッパ研究』に掲載された著作物の著作権は,著者に帰属するものとします.
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