北ヨーロッパ研究
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特集論文
  • イノベーティブ福祉国家の条件
    菅沼 隆
    2023 年19 巻 p. 1-11
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    「イノベーティブな福祉国家」という概念を提案する。マッツカートやグリーヴの研究に示唆を受けて、イノベーティブ福祉国家の暫定的な定義を与えた。イノベーティブ福祉国家が備えるべき条件を明らかにするために、イノベーション・リーダーの国であり、かつ福祉国家を維持しているデンマークのイノベーション・システムを分析した。その際、Lundvallのナショナル・イノベーション・システム概念とその研究成果に依拠して、デンマークのイノベーション・システムの「根源的要素」として「教育」「労働市場」と「資本市場」に着目した。特に、労働市場と資本市場については、2022年夏の現地調査の成果も踏まえて、その実態を明らかにした。さらに、民間のイノベーションと相互に触発する位置にある公共部門のイノベーションについて、公共-民間イノベーション・センターの活動について紹介した。
  • フィンランドにおけるミッション指向型イノベーション政策
    徳丸 宜穂
    2023 年19 巻 p. 13-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    近年の先進資本主義諸国では、社会課題を解決するイノベーションを創出し、インクルーシブな経済を生み出す政府の役割を強調する議論が再興しているが、政府の役割と可能性を過大評価している可能性がある。そこで本稿は、政府が社会的関係の中に埋め込まれているという制度派経済学の視角に依拠し、社会課題を解決するイノベーションを生み出そうとする新しいイノベーション政策の制度的・組織的基盤を、フィンランドにおける政策実践を事例として明らかにすることを目的とする。フィンランドを対象とするのは、この種のイノベーション政策を先駆的に採用してきた国の一つであるからである。分析の結果、従来の「イノベーションシステム」とは区別すべき、「イノベーション公共空間」と名付けうる新しい制度的・組織的枠組が現れつつあることを論じる。
  • スウェーデンにみるイノベーション空間の形成とソーシャル・キャピタルのタイプ
    北井 万裕子
    2023 年19 巻 p. 25-35
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    今日、社会が多くの問題を抱える中、EUでは社会的なニーズを対象として行うイノベーションが関心を集めている。本稿の目的は、社会課題主導型イノベーションにおいて必要な要素を整理し、スウェーデンのイノベーション・システムがどのような機能を持つのかを明らかにすることである。分析の結果、社会課題主導型イノベーションには、⑴地域レベルでシステムを構築し、マルチアクター、特に公的部門がイノベーション・プロセスに参入することが重要であり、⑵この観点からみると地域の諸制度に補完される部門横断型の相互交流を持つスウェーデンのシステムは適していること、⑶マルチアクター間の協力関係についてソーシャル・キャピタル概念を用いた実証分析では国際的な協力関係を伴うイノベーションに対するソーシャル・キャピタルの正の効果、が示された。一方で、一般的信頼と特定的信頼の両方が高いというハイブリッド型の優位性については検証されなかった。
論文
  • 1950−60年代の政党政治に焦点を当てて
    柴山 由理子
    2023 年19 巻 p. 37-47
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    フィンランドの健康保険制度は公的医療モデルと産業保健モデルを併用する二重の医療制度の発展が特徴となっている。導入もヨーロッパの中でもっとも遅く、その背景には工業化の遅れのほか、農民同盟と社会民主党の利害の対立が見られた。健康保険は賃金労働者のみを対象とするか、全国民を対象とするか、任意とするか強制加入とするかが大きな争点となり、全国民を対象とする制度で決着をみた。ここには国民年金機構Kelaや人民民主同盟の関与の影響も大きく見られた。医療設備の不足や低水準の保障という課題は、産業保健制度の発展を後押しし折衷的な制度が定着することになる。一方、農民政党の関与は強い平等性の実現に貢献する。本稿では、健康保険導入を主に政党政治の駆け引き、農民同盟とKelaの経路依存から考察する。
  • 2009年法案以降の動向を中心に
    福地 潮人
    2023 年19 巻 p. 49-59
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿はスウェーデンにおける2009年以降の市民社会政策をめぐる動向を確かめることを目的とした。方法としては、先行研究や政策文書、筆者による聞き取り調査の結果を分析した。その結果、(1)スウェーデンの市民社会政策は2009年に確立して以降、市民社会組織(CSO)のサービス供給機能の強化に重点をおくようになったが、それらの政策効果は乏しく、(2)CSOのサービス供給面でのシェアは低い状態が続いていることが明らかとなった。その政治的背景として、(3)公共部門の解体と私企業の商圏拡大を狙う右派と、公共部門の維持を志向する左派との間で、サービス供給を担おうとするCSOが宙づり状態になっていることがわかった。しかし、(4)近年はむしろ同国のCSOに伝統的なアドボカシー機能をガバナンスの中心にすえた北欧型のアソシエーティブ・デモクラシーが大きく進展していることを指摘した。
  • イングランドの子どもコミッショナーとの比較の視点から
    吉岡 洋子
    2023 年19 巻 p. 61-71
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    スウェーデンの子どもオンブズマンは、子どもの権利条約の締約国に設置が求められる、子どもの権利擁護のための国レベルの独立機関である。本研究は、スウェーデンの子どもオンブズマンによる子どもの権利擁護における働きの特徴と今日的な変化を明らかにすることを目的とする。研究方法としては、文献資料調査と、2022年夏に実施したヒアリング調査を用いた。分析においては、独立機関の3つの機能:①政策提言、②人権教育、③人権救済、の側面からイングランドの子どもコミッショナーとの比較検討を行った。結果、スウェーデンの場合、①②の部分が非常に発展しているが、③の機能は有さないという特徴が見られた。その背景を含めて、独立性の意味を考察すると共に、スウェーデン社会での子どもの権利擁護の全体像の中での子どもオンブズマンの役割を考察した。そして、独立機関が今も存在しておらず、子ども施策改革の只中にある日本への示唆を示した。
研究ノート
  • 上田 星
    2023 年19 巻 p. 73-81
    発行日: 2023年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では、デンマークの保育改革の動向について、2018年に実施された保育カリキュラムの改定の観点から明らかにすることを目的とした。第一に、デンマークの保育カリキュラムの改定動向について整理した。第二に、保育現場における改定版保育カリキュラムの反映の実際について、デンマークの保育施設1園を対象に、主な改定点である子どもの権利条約における「参加」の視点を含む具体的な実践を基に検討した。 保育カリキュラムの導入によって提示された課題を踏まえ、改定版保育カリキュラムでは調和的な発達に向けて、分野横断的な視点を含む、子どもの参加の権利を基盤とした保育実践に取り組むことが目指されるようになった。一方、参加の権利を基盤とすることは、保育の基本原則である子どもの興味や関心に沿った内容を起点として展開される必要性があることを改めて示唆し、保育改革を迎えても基本原則は普遍的であることが、本稿を通して明らかになった。
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