動物心理学年報
Online ISSN : 1883-6283
Print ISSN : 0003-5130
ISSN-L : 0003-5130
シロネズミの逆転学習におよぼす逆転前の経験の影響
佐々木 正伸
著者情報
ジャーナル フリー

1969 年 19 巻 1 号 p. 17-28

詳細
抄録

弁別逆転学習の成分として存在し得ると考えられる2種の過程, すなわち, 原学習での負刺激に対する反応の強化, および原学習での正刺激に対する反応の消去の各々が, 実際に逆転学習の成立にどのように関与しているかを知ることがこの実験の目的であった。このため, 原学習と逆転学習の間に特別な訓練を挿入して, それが逆転学習におよぼす影響をみることが考えられた。このような逆転前訓練として2種のものが設けられた。第1は, 原学習での負刺激を単独に被験体に提示し, それに対する反応を強化することを一定回数おこなうこと, すなわちN-Pの訓練であり, 第2は, 原学習での正刺激を単独に提示し, それに対する反応を消去することを一定の回数だけおこなうこと, すなわちP-Nの訓練であった。対照条件として, 何の訓練も挿入されない場合が設けられた。実験Iでは黒白弁別学習がおこなわれた。すべての被験体がY字型装置で黒と白の弁別学習を一定の規準に達するまでおこなった。その後, それらは12匹ずつの3群に分けられ, 群により異なる逆転前訓練をあたえられた後, 逆転学習に移った。この結果, P-N群では対照群よりも逆転学習の成績がよかったが, N-P群では対照群との間にほとんど相違がなかった。このことから, シロネズミの黒白弁別学習ではP-Nの過程が主要な役割りをはたしていると考えられた。実験IIでは位置弁別学習がおこなわれた。すべてのネズミがT迷路で左右の位置の弁別学習を1日10試行ずつ3日間おこなった。その後それらは11匹ずつの3群に分けられ, 群により異なる逆転前訓練を10試行あたえられた後, 5日間の逆転訓練を受けた。その結果, P-N群では対照群よりも学習完成がはやかったが, N-P群では逆に対照群よりおそかった。このことから, 位置弁別の場合でも逆転学習で主要な役割りをはたしているのはP-Nの過程であることがわかった。

著者関連情報
© 日本動物心理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top