動物心理学年報
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ネコの中脳中心灰白質刺激による情動反応の条件づけ
松田 伯彦
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1972 年 21 巻 2 号 p. 69-80

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抄録

本研究の目的は, 中脳中心灰白質の刺激により起される逃走反応が, 本来動物にとって正の誘意性あるいは中性の刺激・事態に条件づけられ, それらに対し嫌悪が示され回避条件づけが形成されるかどうかを検討することである。
中脳中心灰白質の刺激により逃走反応をおこすネコ6匹が用いられた。まず食餌の回避条件づけでは, 統制として24時間の絶食・絶水後5分間にミルクを飲む時間が測定されたそして約1週間後同様に絶食・絶水した後5分間ミルクを飲もうとする瞬間ごとに中脳中心灰白質の刺激を1秒間与えた。次の, 部屋の回避条件づけでは, 白色と黒色の2つの部屋の偏好・偏嫌を調べ, そして毎日5試行ずついずれかの部屋で中脳中心灰白質の刺激をランダムに5秒間・5回与えられる回避条件づけがおこなわれ, その後刺激を受けた部屋から受けない部屋へ移るかどうかのテスト試行が5回おこなわれた。部屋の移行という条件反応が2日続けてみられた場合, 条件づけができたものとして実験を終了した。10日以内に条件づけがなされなければ実験を中止した。
結果は次の通りである。
1. 食餌の回避条件づけでは, 4例についておこなわれたところ, すべて条件反応が観察された。
2. 部屋の回避条件づけでは, 6例のうち3例は条件反応がみられ, 2例はほんのわずか観察され, そして残りの1例は全くみられなかった。
これらの結果を脳内刺激による今までの研究と比較し, 中脳中心灰白質の刺激による条件づけとの関連を検討し, さらに中脳中心灰白質刺激による逃走反応が痛覚によるものではないことにふれた。

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© 日本動物心理学会
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