動物心理学年報
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グッピーの摂食行動に及ぼすたたかい行動の影響
西川 和裕
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1975 年 25 巻 2 号 p. 91-102

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抄録
グッピーPoecilia reticulata PETERS のたたかい行動や摂食行動については, 若干の報告がある。ここでは, たたかい行動が摂食行動に及ぼす影響について実験的な分析を試みた。
実験には72時間以上絶食隔離された成魚〓が用いられた。実験Iでは, はじめに前半実験としてガラス水槽で対にされた直後から30分間そのたたかい行動が観察・記録された。つづいて, 透明ガラス板で等分された二室バスケットに分離され, Daphniaが投与されたのち再び30分間摂食が許された (後半実験) 。実験IIでは, ガラス境界の影響を除くため, 前半実験と同一水槽で後半実験が行なわれ, 全ての社会行動が観察・記録された。
得られた結果は, つぎの通りである。
1) たたかい行動は最初の約10分間に最も激しく展開され, 優劣が決定される。
2) ミジンコ投与直後は両個体とも摂食量が多いが, 約10分で頭打ち状態になる。
3) 10分経過後, 優位個体は少しずつ摂食を続けるのに対し, 劣位個体はほとんど摂食しない。
4) 同一水槽においてミジンコを投与すると, まず両個体ともさかんに摂食するが, そののち, たたかい行動が展開される。たたかい行動中は, 劣位個体の摂食行動は阻害される。
5) 前半実験におけるたたかい行動によって, 優位な個体は劣位個体よりも多くミジンコを摂食する傾向が認められた。
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© 日本動物心理学会
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