論文ID: NPR-D-24-00001
公共利益団体のアドボカシーは,デモクラシーにとって重要である一方,団体の形成は本質的に困難な営みである.そのため公共利益団体の成立を支える条件に関して様々な学説が生み出されてきた.しかし,主にアメリカの事例やデータに基づき理論化されてきた主要な学説は,同様の条件を欠く日本の事例を必ずしも説明できない.この点に注目し,本稿は,日本における公共利益団体の形成の事例として日本消費者連盟の結成を取り上げ,その過程を分析する.日消連は集合行為問題に直面したが,消費者行政の変化が触媒となり各地に様々な「草の根運動」が生まれたことをきっかけに,これらを組織基盤として全国規模のアドボカシー組織を成立させた.この歴史的経験は,政府の制度や政策が市民社会の変化を促していくことについて,従来の理論とは異なる因果メカニズムを明るみに出すとともに,組織化という集合行為を様々に支援し,メンバーシップ型のアドボカシーを成立させる団体支援政策の姿を浮かび上がらせている.