2024 Volume 44 Pages 358-373
目的:看護基礎教育でのLearning Management System(LMS)利用推進に向け国内外の先行研究からLMS利用の効果・課題を概説する.
方法:JBI Manual For Evidence Synthesis: Scoping Reviews 2020に基づきスコーピングレビューを行った.CiNii,JDream IIIを用いて設定したPCC(Population,Concept,Context)に対応する2013~2022年発行の日本語・英語の原著論文を抽出した.LMS利用の効果・課題を示す記述を抽出し,コード化,カテゴリー化した.
結果:30件の文献が得られ,効果はユビキタスな学習,自己学習の促進等6項目,課題は教員の準備や技術支援の不足等14項目のカテゴリーに分類された.
結論:LMS利用の効果・課題を概説し,導入・利用や必要な支援の検討につながる示唆を得た.
Objective: This study aimed to outline the effectiveness and problems of Learning Management System (LMS) use from previous Japanese domestic and international studies for the promotion of LMS use in basic nursing education.
Methods: This scoping review was conducted based on JBI Manual For Evidence Synthesis: Scoping Reviews 2020. CiNii and JDream III were searched, and original articles in Japanese and English published from 2013 to 2022 corresponding to the set PCC (Population, Concept, Context) were targeted. Descriptions indicating the effect and problem of using LMS were extracted from the selected literature and were coded and categorized.
Results: Thirty references were included. The extracted descriptions were coded and classified into six categories, such as “ubiquitous learning” and “promotion of self-learning” for effectiveness. Fourteen categories, including “lack of preparation of teachers” and “lack of technical support” were identified for problems.
Conclusion: The effectiveness and problems of using LMS were outlined. Suggestions were made to enhance consideration of implementation and use and provide necessary support.
近年,あらゆる分野において情報通信技術(Information and Communication Technology:以下,ICT)が広く普及し,その活用方法は多岐にわたる.日本では2000年以降,国家戦略としてICT活用が推進され(総務省,2022),教育分野においては,文部科学省が初等教育からICTを教育・学習に取り入れることの重要性を示している(文部科学省,2020).
ICTは看護基礎教育においても重要視されており,電子カルテや遠隔診療,AI等のICTに適応できる人材の育成が求められている(厚生労働省,2019).令和元年の「看護基礎教育検討会報告書」(厚生労働省,2019)において,「ICTの発展により,看護基礎教育においてもICTを活用するための基礎的能力を養うことが重要」と明記されたことを受け,厚生労働省は「看護師等養成所の運営に関する指導ガイドライン」の「基礎分野」における看護師教育の留意点に「情報通信技術(ICT)を活用するための基礎的能力を養う内容を含むものとする」との文言を追加した(厚生労働省,2020).こうした背景から,看護基礎教育において学生がICT活用の基礎的能力を獲得できるような授業設計をすることは,今後の医療を担う看護師の育成において重要な役割を持つと言える.
令和元年度の大学におけるICTを活用した教育の実施状況は,eラーニングやリアルタイム配信システムによる遠隔教育等,全ての項目が平成27年度と比較して増加を示しており,大学でのICTを活用した教育が拡大傾向にあったことがわかる(文部科学省,2021a).この状況に拍車をかけたのが,新型コロナウイルスの感染拡大である.教育機関では対面授業の中止,遠隔教育への切り替えが余儀なくされ,看護基礎教育では,臨地実習においても代替措置が取られる事態となった.令和2年10月の調査では,実習科目で代替措置を講じた大学が全体の97.2%を占め,その内,全ての実習科目で講じたと回答した大学は40.1%に及んだ(文部科学省,2021b).コロナ禍において,遠隔教育や代替実習等を目的とするICTツールの導入が迫られ,ICTを活用した教育が急速に推し進められたことが推察される.
教育の様々な場面で利用されているICTツールが,学習管理システム(Learning Management System:以下,LMS)である.大学で使用されているICTツールにおいて,「LMS」は「パワーポイント等のスライド」,「Web上の教材・ビデオ」に続き3番目に使用者が多いことが明らかになっており(大学ICT推進協議会,2020),文部科学省の調査においても,LMSを利用した事前・事後学習の推進を行っていると回答した大学が60.1%と,調査項目の中で最も高い値を示している(文部科学省,2021a).LMSは「eラーニングの運用を管理するためのシステムであり,学習者の登録や教材の配布,学習の履歴や成績及び進捗状況の管理,統計分析,学習者との連絡等の機能がある」とされており(文部科学省,2021a),1つのツールで多様な機能を持つことがわかる.看護基礎教育においても,急性期看護学実習(氏原ら,2021)や看護過程演習(乾ら,2021)にLMSを用いた教育実践が報告されており,資料配付,課題提出,質問対応,教員から学生へのフィードバック等,様々な機能が利用されている.多様な機能を持つLMSは,看護基礎教育におけるICTを活用した教育を推進する,有用性・利便性が高いツールであると考えるが,日本国内の看護基礎教育におけるLMSの利用に焦点を当てた研究は少ない.
LMSは様々な分野の教育実践において導入・利用され,それにより得られる効果や,生じ得る課題が先行研究で検証されている(Gamage et al., 2022).種々のLMSが有している基本的な機能は類似しており,看護基礎教育においても,他分野の先行研究で検証された効果が期待でき,課題が生じる可能性がある.そのため,これらの情報は,看護基礎教育におけるLMS導入・利用や,より効果的な利用方法を検討するにあたり重要であると考える.しかしながら,LMSを利用することの効果・課題は,看護だけでなく,どの分野の研究においても概説されておらず,LMS導入・利用の検討に必要な情報が不足していると言える.
そこで本研究では,国内外の様々な分野で行われている先行研究から,LMS利用の効果・課題を抽出し,概説することを目的にスコーピングレビューを実施することとした.本研究により得られる知見は,LMSが導入されていない看護系大学が導入を検討する際の資料となり,導入済みの看護系大学では今後のLMS利用への示唆を得ることにつながると考える.
研究方法は,幅広い知見を網羅的に概観(マッピング)することを目的とするスコーピングレビューとし(友利ら,2020a),レビューの方法論についてのガイドラインであるJBI Manual For Evidence Synthesis: Scoping Reviews 2020の日本語版(沖田ら,2021)(以下,JBIガイドライン)に基づき実施した.また,その報告ガイドラインであるPreferred Reporting Items for Systematic reviews and Meta-Analyses extension for Scoping Reviewsの日本語版(以下,PRISMA-ScR)(友利ら,2020b)に基づき報告する(付録).
1. 効果・課題の概念的定義本研究では,LMS利用の効果を,「LMSの利用により得られる良い結果,教育・学習における望ましい成果であり,学習者・教育者にとって利益となること」と定義した.LMS利用の課題は,「LMSの利用に関連して,対応策,改善策,解決策の検討が必要な問題のことであり,LMS利用により起こり得る,学習者・教育者にとって不利益となることや,LMS利用を妨げる要因,学習活動・教育活動において生じる困難」とした.
2. 研究疑問の特定本研究では,「国内外の様々な分野の教育実践において先行研究で検証されているLMS利用の効果・課題は何か」をリサーチクエスチョンとした.これに沿って研究疑問を特定するために,PCCのフレームワークを活用し,P(Population):学生・児童・生徒等の学習者および教員や指導医等の教育者,C(Concept):LMSの利用における効果・課題,C(Context):国内外の様々な分野における教育実践と設定した.
3. 文献の検索方法文献検索データベースは,国内外の様々な分野の研究論文を幅広く検索するべく,CiNii,J-Dream IIIを使用した.検索式の作成にあたり,事前にCiNii,J-Dream IIIで第一段階の検索を行い,得られた文献のキーワードを確認した.また,シソーラス機能を有するJ-Dream IIIのJSTシソーラスブラウザ・JSTシソーラスmapを使用し,シソーラス用語,関連語,同義語を確認した.それらを参考に,研究疑問に対応する概念毎に検索ワードを検討した.概念毎の検索ワードを表1に示す.概念には,「LMS」「効果・課題」に加え,「活用の場」を設定した.これは,LMSを検索ワードとした際に,子宮平滑筋肉腫(Leiomyosarcoma)や,頸椎外側塊スクリュー(lateral mass screw)等,学習管理システム以外にLMSを略語として用いている研究が含まれてしまうことを避けるためである.以上を踏まえ設定した概念毎の検索ワードをOR,概念をANDでつないだ,("LMS" OR "ラーニングマネジメントシステム" OR "学習管理システム" OR "Learning Management System")AND("効果" OR "effect" OR "effectiveness" OR "education evaluation" OR "education outcomes" OR "課題" OR "problem")AND("教育" OR "education" OR "学習" OR "learning" OR "teaching" OR "遠隔教育" OR "distance education" OR "remote education" OR "remote teaching" OR "teleteaching")を検索式とした.
概念 | LMS | 効果・課題 | 活用の場 |
---|---|---|---|
検索ワード |
・LMS ・Learning Management System ・ラーニングマネジメントシステム ・学習管理システム |
・効果 (effect, effectiveness, education evaluation, education outcomes) ・課題(problem) |
・教育(education, teaching) ・学習(learning) ・遠隔教育 (distance education, remote education, remote teaching, teleteaching) |
選択基準の検討にあたり,前述した検索式を用いて事前の検索を行ったところ,1,500件を超える文献がヒットし,多数の研究が発表されていることが示された.そこで,発行年および論文種別を限定し,より最新の学術論文を選択することとした.世界的なインターネットの普及状況は,2000年時点では6.5%であったが,2013年時点では38.5%に達し(総務省,2022),約6倍となっている.また,通信が3Gから4G,5Gへと移行する等,インターネット環境が大きく変化している.こうした環境の変化に伴い,ICTの利用がより身近になり,対象となる学習者・教育者のLMSを含むICTに関する知識・スキル・経験や,LMS自体の機能・性能等も変化している可能性があると考えた.そこで,より新しい研究結果を使用するために,発行年を最新10年に限定することとした.更に,学術論文に限定するために,論文種別を原著論文に限定することとした.
以上を踏まえ,選択基準は,(1)本研究で設定したPCCに対応していること,(2)2013~2022年に発行された文献であること,(3)原著論文であること,(4)抄録があること,(5)本文が入手可能であること,(6)日本語もしくは英語で記載されていることとし,(1)~(6)を満たさない文献は除外した.
文献選択はJBIガイドラインに従い実施した.一次スクリーニングでは,検索された文献のタイトル・抄録から,選択基準を満たすかどうかを確認し,タイトル・抄録のみでは判断できない場合は二次スクリーニングに進めた.二次スクリーニングでは,一次スクリーニングで選択された文献の全文を読み込み,選択基準を満たすかどうかを確認した.その際,LMS利用の効果・課題を示す記述が明記されていること,それがLMSを通じて提供された学習コンテンツへの評価ではないこと,一般化できる内容であることを適格とし,適格性が確認できたものを採用した.例えば,LMSもしくはその機能を独自に開発しており,評価対象となるLMSもしくはその機能が一般的に広く用いられているものではない等,特殊な状況で行われた研究に関しては,それにより示された効果・課題が一般化できない可能性があるため,不適格と判断することとした.スクリーニングは研究者2名が独立して実施し,意見が異なる箇所は,もう1名の研究者を交えて検討の上,決定した.
5. データの抽出と結果の統合採用文献からデータを抽出するにあたり,事前に,研究疑問に対応する抽出項目を研究者3名で検討し,2種類のフォーマットを作成した.1つ目のフォーマットでは,採用文献の概要について,著者,発行年,目的,国,分野,LMSの種類,研究デザイン,対象,介入/暴露内容,Primary Outcome,データ収集方法を抽出し,結果を統合した.2つ目のフォーマットでは,LMS利用の効果・課題を示す記述を抽出し,研究者間で検討の上コード化した後,サブカテゴリー,カテゴリーに分類した.
文献選択のプロセスを,PRISMAフローチャートに従い図1に示す.CiNiiでは88件,JDream IIIでは322件,合計410件の文献が検索された.最新検索日は2022年11月12日であった.重複文献6件を除外した404件に対し一次スクリーニングを行った結果,246件が除外された.二次スクリーニングでは更に128件が除外され,最終的に30件が採用された.採用された文献の概要を表2に示す.
No | 著者(発行年) | 目的 | 国 | (地域) | 分野 | LMSの種類 | 研究デザイン | 対象 | 介入/暴露内容 | Primary Outcome | データ収集方法 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 受講生の学習コンテンツへのアクセスログおよび性別や住所等の属性データと併せて解析し,琉大ハカセ塾Moodleの活用度に影響する要因を分析することを通して,大学からの学習者の距離が指定したパターンのいずれに該当するのかを調査すること | 日本 | (アジア) | 理数,情報学 | Moodle | 横断研究 | 学習者 | Moodle型プラットフォームe-ラーニングシステムにおける学習コンテンツの提供 | ・学習コンテンツへの総アクセス日数および総アクセス数 |
・アクセスログの取得 ・地図アプリケーションを用いて,大学-自宅間の車での所要時間を収集 |
|
2 |
篠田 成郎,今井 亜湖,仲田 久美子,神谷 宗明,肥後 睦輝,西村 貢,西本 裕,髙橋 由起子,田中 雅宏,山口 忠,加藤 正吾,西津 貴久,松原 正也 |
課外学習の時間および授業内容の理解等に対する効果に着目して,受講生へのアンケート調査により,AIMS(LMS)利用の有無やAIMS活用度による違いを明らかにすること | 日本 | (アジア) | 教育学,医学,地域科学,工学,応用生物科学 | 大学独自のLMS | 横断研究 | 学習者 | LMSを利用した授業 |
・アクセス頻度(日数) ・授業外学習で有効な機能 ・授業外における平均学習時間 ・授業外での活用度 ・LMS利用による興味,学習意欲,学習効率,理解度の向上度 |
アンケート調査 |
3 | ブレンディッド型e-learningを用いた授業実践を行い,アクセスログの解析による利用実態の把握,Moodleの利用状況と学習成果の関連性についての検討,利用に伴う認識についての質問紙調査を実施することで,効果的な運用方法についての示唆を得ること | 日本 | (アジア) | 教育心理学 | Moodle | 横断研究 | 学習者 | 対面授業にMoodle上で提供されるe-ラーニングを組み合わせたブレンディッドラーニング | ・Moodleの有効性に関する認識 |
・Moodleのアクセスログの取得 ・期末試験 ・アンケート調査 |
|
4 | Thepwongsa, I., Sripa, P., Muthukumar, R., Jenwitheesuk, K., Virasiri, S., Nonjui, P. (2021) | 新たに開発したLMSが,学生の利用状況,満足度,学習成果に与える影響を評価し,医学生の認識,LMS導入に影響を与える要因を明らかにすること | タイ | (アジア) | 医学 | 大学独自のLMS | 混合型研究(横断研究・半構造化インタビュー) | 学習者 | コロナ禍におけるLMSを利用したオンライン学習 |
・オンライン学習の有効性とLMSの使用に対する態度を測定するために設計され,専門家により検討された質問項目 ・LMSでの学習経験および学習に対する認識 |
・Webアンケート調査 ・半構造化インタビュー |
5 | Heo, J., Han, S. (2021) |
・オンライン教育効果自己評価(SEOTE注1)と学習管理システムのリテラシー(LLMS注2)が自己主導型学習準備度(SDLR注3)に有意な影響を与えるかどうかを分析すること ・LLMSがSEOTEとSDLRの間に有意な媒介効果を持つかどうかを検討すること |
韓国 | (アジア) | 心理学 | 大学独自のLMS | 横断研究 | 学習者 | LMSを利用したオンライン学習 |
・学習管理システムのリテラシー(LLMS) ・オンライン教育効果自己評価(SEOTE) ・自己主導型学習準備度(SDLR) |
Webアンケート調査 |
6 | Mehrolia, S., Alagarsamy, S., Sabari, M. I. (2021) | 学生のWebベース学習管理システム(WLMS注4)の受容に影響を与える要因を明らかにし,WLMSの成功における学生のアカデミックな関与のモデレート効果を検証すること | インド | (アジア) | 経済学 | ― | 横断研究 | 学習者 | WebベースのLMSを利用した学習 | ・WebベースのLMS利用の成功を予測する要因 | Webアンケート調査 |
7 | Abu-Shanab, E. A., Samara, J., Ayari, M. A. (2020) | 特定のLMSの様々な機能と,それを使用する際に教員が直面する課題を調査すること | カタール | (中東) | アーツ・サイエンス,商経学,教育学,工学,健康科学,法学 | ― | 横断研究 | 教育者 | LMSを利用した教育 | ・教員からの問い合わせ件数・頻度・内容・方法 | サポートデスクに寄せられた教員の問い合わせデータ |
8 | Alotumi, M. (2022) |
・イエメン人大学院生がブレンディッドラーニングの一環としてGoogle Classroom(LMS)を利用する行動意向を決定する要因を明らかにすること ・イエメン人大学院生がブレンディッドラーニングの一環としてGoogle Classroom(LMS)を利用する行動意向を決定する上で,重要かつ実行可能な要因を明らかにすること |
イエメン | (中東) | 言語学 | Google Classroom | 混合型研究(横断研究・半構造化インタビュー) | 学習者 | LMSを利用したブレンディッドラーニング | ・Google Classroomプラットフォームでのオンライン学習経験に関する学生の人口統計学的情報 |
・アンケート調査 ・半構造化インタビュー |
9 | Granic, A. (2022) | 教育研究で広く適用されている技術受容・採用の理論・モデルおよび,教育工学の採用に影響を与える最も有力な予測因子(先行因子)を明らかにすること | クロアチア | (欧州) | 教育工学 | ― | システマティックレビュー | 両方 | LMSを含む教育工学の利用 |
・技術受容・採用の理論・モデル ・教育工学の採用に影響を与える予測因子(先行因子) |
Web of Science (WoS): Current Contents Connect (CCC) |
注1:SEOTE(Self-Evaluation Online Teaching Efectiveness:オンライン教育効果自己評価)
注2:LLMS(Literacy of Learning Manage System:学習管理システムのリテラシー)
注3:SDLR(self-directed learning readiness:自己主導型学習準備度)
注4:WLMS(Web-Based Learning Management Systems:Webベース学習管理システム)
No | 著者(発行年) | 目的 | 国 | (地域) | 分野 | LMSの種類 | 研究デザイン | 対象 | 介入/暴露内容 | Primary Outcome | データ収集方法 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
10 | Calaguas, N. P., Consunji, P. M. P. (2022) | 構造方程式モデリングを通じて,①成人フィリピン人学習者のオンライン学習自己効力感を予測する要因を検討すること,②学業自己効力感が,a) コンピュータ自己効力感,b) 学習管理システム自己効力感,c) 情報探索・操作自己効力感に影響を与えるかどうかを検証すること,③a) コンピュータ自己効力感,b) 学習管理システム自己効力感,c) 情報探索・操作自己効力感がオンライン学習自己効力感に影響を与えるかどうかを検証すること,④構造方程式モデリングにより,統計的に有意なモデルを定式化すること | フィリピン | (アジア) | 看護学 | ― | 横断研究 | 学習者 | LMSを利用したオンライン学習 |
・LMSの使用状況 ・学習管理システム自己効力感(LMSSE注1) ・オンライン学習自己効力感尺度(OLSES注2) |
Webアンケート調査 |
11 | Jabali, A. K. (2022) | 工学部の学生および教員のE-learning利用に対する意識と実際の利用指標を評価すること | サウジアラビア | (中東) | 工学 | Blackboard | 横断研究 | 両方 | LMSを利用したコースの提供 |
〈学生〉 ・教員のLMS講座利用に対する認識 ・自身のLMS講座利用に対する認識 ・LMS利用行動 〈教員〉 ・LMS経験 ・LMS活用方法 ・自身のLMS講座利用に対する認識 |
アンケート調査 |
12 | Shaheen, Z. (2022) | 学生が持つLMSの機能に対する知覚と,学生が持つLMSを学業に利用する際の自己効力感が学生のLMS受容と利用に与える影響を測定すること | ニュージーランド | (大洋州) | ― | Canvas | 横断研究 | 学習者 | LMSを利用した学習 |
・LMS経験 ・LMS自己効力感と知覚された機能性を外部変数として取り入れた拡張版技術受容モデル(TAM注3) |
Webアンケート調査 |
13 | Hafner, S., Zolk, O., Barth, H. (2022) | 臨床薬剤学の学習・教育におけるパンデミック関連の変化を明らかにし,当該大学の学生および講師の態度とニーズを明らかにすること | ドイツ | (欧州) | 医学 | Moodle | 横断研究 | 両方 | COVID-19パンデミック時の遠隔教育 |
・特定の学習メディア/教材の使用状況 ・e-ラーニングに対する個人的な態度 ・学習教材や教授法の違いによる有用性の評価 |
アンケート調査 |
14 | Sibgatullina, A., Ivanova, R., Yushchik, E. (2022) |
Moodleがどのように大学教育の刷新を支援できるかを調査することにより,以下の目的を達成する. ・Moodle LMSによって行われる大学教育のプロセスをモニターすること ・高等教育の観点からオフラインとオンラインの教育形式の主な違いを明らかにすること ・大学の革新政策の文脈におけるオンライン教育の影響を研究すること |
ロシア | (欧州) | 外国語 | Moodle | 横断研究 | 両方 | Moodleを利用した教育・学習 | ・Moodle使用に対する学生や教師の認識 |
・2020年世界最優秀大学ランキングの結果 ・アンケート調査 |
15 | Steindal Simen A., Ohnstad Mari O., Landfald Orjan Flygt, Solberg Marianne T., Sorensen Anne Lene, Kaldheim Hege, Mathisen Cathrine, Christensen Vivi L. (2021) | 高度実践看護学修士課程における科目でLMSを利用した看護大学院生の経験について知見を得ること | ノルウェー | (欧州) | 看護学 | ― | 質的記述研究 | 学習者 | LMSを利用した学習 | ・学修支援ツールとしてLMSを利用することに対する看護学部大学院生の経験 | フォーカスグループインタビュー |
16 | Sáiz-Manzanares, M. C., Marticorena-Sánchez, R., Rodríguez-Díez, J. J., Rodríguez-Arribas, S., Díez-Pastor, J. F., Ji, Y. P. (2021) | オンラインプロジェクト型学習(OPBL注4)を含む3つの教授方法が,共変量「コラボレーティブグループ」を考慮してMoodle行動と学生の成績に対する効果を検証すること | スペイン | (欧州) | 作業療法学 | Moodle | 横断研究 | 学習者 | OPBLを含む3つの教授方法 |
・学習成果 ・満足度 |
LMS上のデータ |
注1:LMSSE(Learning Management System Self-Efcacy:学習管理システム自己効力感)
注2:OLSES(Online Learning Self-Efcacy Scale:オンライン学習自己効力感尺度)
注3:TAM(Technology Acceptance Model:技術受容モデル)
注4:OPBL(Online Project-based Learning :オンラインプロジェクト型学習)
No | 著者(発行年) | 目的 | 国 | (地域) | 分野 | LMSの種類 | 研究デザイン | 対象 | 介入/暴露内容 | Primary Outcome | データ収集方法 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
17 | Alzahrani, L., Seth, K. P. (2021) | COVID-19の大流行時に高等教育におけるオンライン学習管理システムの継続利用に対する学生の満足度に影響を与える重要な要因について分析すること | イギリス | (欧州) | 経営情報システム,教育学 | Blackboard | 横断研究 | 学習者 | コロナ禍におけるLMSを利用したオンライン学習 |
・満足度 ・自己効力感 ・個人的な成果への期待 ・継続利用意向 |
Webアンケート調査 |
18 | Goh, T. T., Yang, B. (2021) | 学生のモチベーションとシステム継続利用のダイナミックな性質を理解するために,技術受容モデルとeラーニングシステムの様々な学習活動に従事することで得られるフロー経験を統合したモデルを提案すること | 中国 | (アジア) | 情報管理,教育学 | Moodle | 横断研究 | 学習者 | LMSを利用したブレンディッドラーニング |
・利用強度 ・フロー構成要素(集中力,楽しさ,テレプレゼンス,コントロール) ・継続意思の構成要素(知覚された有用性,知覚された使いやすさ) |
アンケート調査 |
19 | Teng, Y., Wang, X. (2021) | LMSとソーシャルネットワークシステム(SNS注1)のそれぞれが,学生のエンゲージメントの3つの次元に対してどのような効果をもたらすかを調査すること | 中国 | (アジア) | 外国語 | ― | 横断研究 | 学習者 | LMS・SNSを利用したEFL注2コース | ・教育工学(LMS・SNS)のエンゲージメントに関する質問項目 | アンケート調査 |
20 | Balkaya, S., Akkucuk, U. (2021) | 初等・中等教育機関の教員のLMS導入の行動意図に影響を与える要因について調査すること | トルコ | (中東) | 経済学 | ― | 横断研究 | 教育者 | LMSを利用した教育 |
・LMS利用意図に影響を与える要因を測定するために作成された尺度(パフォーマンス期待・努力期待・社会的影響・行動意図・遊び心) ・LMSの利用に対する自発性 |
アンケート調査 |
21 | Mohammadi, M. K., Mohibbi, A. A., Hedayati, M. H. (2021) | LMSの使用に直面する課題を調査し,教員と学生の両方におけるLMSの使用に影響を及ぼす要因を探ること | アフガニスタン | (中東) | コンピュータ教育,農学,コンピュータサイエンス | アフガニスタンの大学に統一して提供されたLMS | 質的記述研究 | 両方 | LMSの利用 |
・経営的視点で見たLMS活用の課題 ・学生,教員両者のLMS利用に影響を与える主な要因 |
・半構造化インタビュー ・フォーカスグループインタビュー |
22 | Upadhyaya, P., Acharya, V. (2021) |
・テクノストレス尺度を用い,私立大学の学部生と大学院生のテクノストレス度を測定し,学術的な文脈で検証を行うこと ・テクノストレスと学術生産性の関係を検討すること |
インド | (アジア) | 経済学 | ― | 横断研究 | 学習者 | ICTを利用した学習 |
・テクノストレス尺度 ・学術的生産性尺度 |
アンケート調査 |
23 | Tinmaz, H., Lee, J. H. (2020) | LMSの設計における文化の役割を,性別・年齢・学年の変数の影響とともに理解すること | 韓国 | (アジア) | 教育技術,グローバルヘルスケアマネジメント | ― | 横断研究 | 学習者 | LMSを利用した学習 | ・LMS設計基準(コンテンツ管理・使いやすさ・コミュニケーション・デザイン) | アンケート調査 |
24 | Sáiz-Manzanares, M. C., Marticorena-Sánchez, R., Ochoa-Orihuel, J. (2020) |
・インテリジェント・パーソナル・アシスタント(IPA注3)を利用する場合と利用しない場合では,LMSへのアクセスに大きな違いがあるかどうかを検証すること ・IPAを利用する場合と利用しない場合で,学生の学習成果に有意な差があるかどうかを検証すること ・COVID-19パンデミック時の授業満足度について,IPAの利用有無による有意差の有無を確認すること ・LMSにおけるIPAの有用性について,学生の認識を分析すること |
スペイン | (欧州) | 健康科学 | Moodle | 準実験研究 | 学習者 | LMSの機能であるIPAを利用した学習 |
・学習戦略尺度のメタ認知戦略尺度 ・IPAの機能を評価するための質問票 |
アンケート調査 |
25 | Chong, D. Y. K., Tam, B., Yau, S. Y., Wong, A. Y. L. (2020) |
・理学療法士の学生を対象とした臨床実習の評価方法について検討すること ・LMSの利用パターンと学習成果との関係を探ること |
中国 | (アジア) | 理学療法学 | Blackboard | 混合型研究(横断研究・フォーカスグループインタビュー) | 学習者 | LMSを利用したルーブリックを組み合わせた本格的な継続評価 |
・本格的な継続評価,ルーブリック,LMSに関する経験 ・ディスカッションフォーラムのアクセスパターン ・本格的な継続評価の経験における認識と経験 |
・Webアンケート調査 ・フォーカスグループインタビュー ・LMS上のデータ |
26 | Yawson, D. E., Yamoah, F. A. (2020) | 学習者の特性であるジェンダーと,従来の学位授与プログラムにおける多世代コホートという新しい概念の文脈で,オンライン学習における学生の満足度の要素の効果を見ることにより学生の満足度の本質を検討すること | ガーナ | (アフリカ) | 経営学 | Moodle | 横断研究 | 学習者 | LMS/e-ラーニングを利用したオンライン学習 | ・コース設計,コースの提供,コースとの交流,受講環境に関する満足度 | Webアンケート調査 |
注1:SNS(Social Networking Systems:ソーシャルネットワークシステム)
注2:EFL(English as a Foreign Language:外国語としての英語)
注3:IPA(Intelligent Personal Assistant:インテリジェントパーソナルアシスタント)
No | 著者(発行年) | 目的 | 国 | (地域) | 分野 | LMSの種類 | 研究デザイン | 対象 | 介入/暴露内容 | Primary Outcome | データ収集方法 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
27 | de Lima, D P. R., Gerosa, M. A., Conte, T. U., de M. Netto, J. F. (2019) | 講師の視点からオンライン・ディスカッション・フォーラムを利用する利点と困難を明らかにし,その困難を軽減し,より参加性の高いフォーラムに導くための戦略と改善策を提供すること | ブラジル | (中南米) | 情報学 | Moodle | 質的記述研究 | 教育者 | LMS上でのディスカッションフォーラムを活用した遠隔教育 |
・ディスカッション・フォーラムに対して教員が感じる利点 ・ディスカッション・フォーラムで直面する困難 ・フォーラム・ツールの改善点 |
半構造化インタビュー |
28 | Brozina, C, Knight, D. B., Kinoshita, T., Johri, A. (2019) | 講師によるLMSの利用状況のばらつきが,コースの成果にどのように関連するかを調査すること | アメリカ | (北米) | 工学 | ― | 横断研究 | 学習者 | LMSを利用した学習 |
・成績 ・LMS利用状況 |
LMS上のデータ |
29 | Abdullah, A. (2018) | サウジアラビアの大学におけるLMSの導入を妨げている様々な障壁を明らかにすること | サウジアラビア | (中東) | 教育技術 | ― | 横断研究 | 学習者 | LMSを利用した学習 |
・LMSリソースのアクセスレベルや制限について ・インターネット接続とネットワーク ・LMSに関するトレーニング ・セキュリティへの配慮 ・ハードウェアとソフトウェアの可用性 ・英語であるLMSを理解するための英語力 |
Webアンケート調査 |
30 | e-ラーニング運用を目的としたLMS利用による授業を実践し,LMS利用状況の特徴と要因を整理することにより,LMS利用の効果について検証し,効果的な導入の方法を考察する | 日本 | (アジア) | 情報学 | MANALOG | 横断研究 | 学習者 | LMSを利用した情報リテラシー科目の受講 |
・LMS利用状況 ・利用意識(操作性,各機能の評価) |
アンケート調査 |
採用された文献の内,国内で発行された文献は4件,海外では26件であり,地域毎に分類すると,アジアで13件,欧州で7件,中東で6件,中南米・北米・大洋州・アフリカで1件ずつであった.発行年別に見ると,最も多い2021年で12件,次いで2022年で7件,2020年で5件,2017・2019年で2件,2014・2018年で1件と,2020年以降に発行されたものが8割を占めた.分野が明確な文献の内,最も多かったのは教育系の分野の9件であり,情報系の分野では5件,工学系の分野で4件,言語系の分野で3件であった.医療に関連する分野では,医学が3件,看護学・健康科学が2件,作業療法学・理学療法学が1件であった.研究デザインは,横断研究が22件と約7割を占め,質的記述研究・混合型研究が3件,準実験研究・システマティックレビューが1件であった.対象は,22件が学習者であり,教育者は3件,両方を対象としたものは5件であった.
3. LMS利用の効果・課題採用された文献から,LMS利用の効果・課題を示す記述を抽出し,コード化した結果,効果で41個,課題で63個のコードが示された.これらを,サブカテゴリー,カテゴリーに分類した結果を表3・4に示す.以下,カテゴリーを【 】,サブカテゴリーを〔 〕で示す.
カテゴリー | サブカテゴリー | コード | 文献番号 | 該当する医療関連分野 |
---|---|---|---|---|
ユビキタスな学習 | 場所を選ばない学習が可能になる | 学習者と学習地の空間的距離が埋まる | 1 | |
インターネットを利用できる環境であれば,学生が場所を選ばずに学習できる | 4 | 医学 | ||
学生が時や場所を選ばずに学習できる | 4 | 医学 | ||
学生が時や場所を選ばずに学習に関する情報やフィードバックにアクセスでき,学習がはかどる | 25 | 理学療法学 | ||
学生のユビキタスな学習を可能にする | 30 | |||
学習教材の利便性を高める | 利便性が高い | 4 | 医学 | |
学生が配布資料を持ち歩く必要がなくなるという点で利便性が高い | 30 | |||
自己学習の促進 | 学習効率が高まる | 課外学習習慣がある学生の学習効率が高まる | 2 | |
活用度が高い学生の学習効率が高まる | 2 | |||
学生の学習効率が高まる | 4 | 医学 | ||
効果的な自己学習ができる | 授業VTRにより,学生は授業の必要な箇所を,必要な時に繰り返し確認することができ,効果的な復習ができる | 3 | ||
小テストにより,学生は自身の理解度を把握することや,理解を深めることができ,効果的な復習ができる | 3 | |||
学生が授業内容を繰り返し確認できる | 4 | 医学 | ||
学生が自身のペースで学習できる | 4 | 医学 | ||
学生が自身のペースで映像を視聴できる | 4 | 医学 | ||
LMSリテラシーが高い学生の自己主導型学習レディネスが高まる | 5 | |||
学習のプラットフォームとなり,学生の自己学習を可能にする | 8 | |||
学生の反復学習が可能になる | 15 | 看護学 | ||
学生が自分の都合に合わせてポッドキャストを聞く事ができ,より柔軟な学習ができる | 15 | 看護学 | ||
学生の講義前の予習が容易になる | 15 | 看護学 | ||
ルーブリック評価により,学生が学習する際のガイドラインを得られる | 25 | 理学療法学 | ||
学習習慣の定着につながる | 課外学習習慣がない学生の学習時間が増える | 2 | ||
学生の学習機会が増加し,課外学習の習慣がつく | 2 | |||
自己学習を管理できる | 学生が学習時間を管理できる | 4 | 医学 | |
学生が学習の進捗状況を把握することに役立つ | 25 | 理学療法学 | ||
コミュニケーションの円滑化 | 学生同士の円滑なコミュニケーションが可能になる | IPAを利用した学生はグループワークが促進されたと認識する | 24 | 健康科学 |
ディスカッション・フォーラムにより,学生同士のより深い議論が可能になる | 27 | |||
ディスカッション・フォーラムにより,学生が他の学生の考えを理解するのに役立つ | 30 | |||
学生-教員間の円滑なコミュニケーションが可能になる | 対面以外の方法で質問することを希望する学生が,チャットやメールで質問することができる | 4 | 医学 | |
学生が教員からのフィードバックを受けやすくなる | 8 | |||
学生の学習に対する心理状態の変化 | 学生の学習に対する興味・意欲が向上する | 活用度が高い学生の授業への興味・学修意欲が高まる | 2 | |
学生が楽しんで学習することができる | 15 | 看護学 | ||
学生の学習に対するエンゲージメントが向上する | 学生のエンゲージメントを高める | 19 | ||
学習成果の向上 | 各機能の利用により学習成果(成績)が向上する | 小テストを利用した学生の学習成果(期末試験の得点)が向上する | 3 | |
利用頻度が高い学生の学習成果(成績)が向上する | 28 | |||
各機能の利用により学習成果(理解度)が向上する | 活用度が高い学生の授業内容に対する理解度が高まる | 2 | ||
IPAを利用した学生は予備知識・授業終了後の知識が高まったと認識する | 24 | 健康科学 | ||
IPAを利用した学生はコースの目的を明確に理解できたと認識する | 24 | 健康科学 | ||
各機能の利用により学習成果が向上する | グループワークに役立つ機能を利用して学生同士が共同作業に取り組むことで,学習成果が向上する | 16 | 作業療法学 | |
学習状況の可視化 | 学生間の交流を可視化できる | ディスカッション・フォーラムにより,学生の交流が教員に向けて可視化される | 27 |
カテゴリー | サブカテゴリー | コード化 | 文献番号 |
該当する 医療関連分野 |
---|---|---|---|---|
学生・教員のLMS利用行動意図への影響 | 学生のLMS利用行動意図はLMSに対する認識(満足度,自己効力感)に影響を受ける | 技術サービス品質・情報サービス品質・教育サービス品質・技術スタッフによるサービス品質によって学生のLMSを利用意図は変化する | 6 | |
自己効力感はLMS利用に対する満足度に影響し,間接的にLMS継続利用意図を変化させる | 17 | |||
社会的影響は自己効力感に影響し,間接的にLMS継続利用意図を変化させる | 17 | |||
LMS自己効力感が低い学生はLMSを利用しない可能性がある | 12 | |||
LMSに対する学生の満足度によってLMS継続利用意図は変化する | 17 | |||
情報品質が低いとLMS利用に対する満足度が低くなり,間接的にLMS継続利用意図を変化させる | 17 | |||
学生のLMS利用行動意図はLMSをどのように知覚しているか(有効性,個人的成果期待)に影響を受ける | LMSに対する学生の個人的成果期待によってLMS継続利用意図は変化する | 17 | ||
先行体験は個人的成果期待に影響し,間接的にLMS継続利用意図を変化させる | 17 | |||
社会的影響は個人的成果期待に影響し,間接的にLMS継続利用意図を変化させる | 17 | |||
LMSの学習機会の認識が低い学生はLMS利用行動意図が低い | 20 | |||
学生のLMS利用行動意図は学生の習慣に影響を受ける | 学生の習慣によってLMS行動意図は変化する | 8 | ||
教員のLMS利用行動意図はLMSに対する認識(自己効力感,遊び心,主観的規範)に影響を受ける | 自己効力感が低い教員はLMS行動意図が低い | 9 | ||
主観的規範によりLMS利用行動意図は変化する | 9 | |||
LMSに関する遊び心(集中・好奇心・楽しさ)の知覚が低い教員はLMS利用行動意図が低い | 20 | |||
自己効力感が低い教員はLMS行動意図が低い | 20 | |||
教員のLMS利用行動意図は教員の背景(年齢,性別,経験)に影響を受ける | 教員の年齢や性別の間接的な影響によってLMS利用行動意図は変化する | 9 | ||
学生のLMS利用行動への影響 | 学生のLMS利用行動は教育設計やLMSに対する認識に影響を受ける | LMSの有効性を知覚していない学生はLMSを利用しない可能性がある | 12 | |
教育設計によって学生のLMS利用行動は変化する | 16 | 作業療法学 | ||
LMSのフロー・使いやすさ・有効性に対する学生の認識によってLMS継続利用行動は変化する | 18 | |||
教員のLMS利用方法によって学生のLMSに対する認識(有効・無効)は変化する | 8 | |||
学生の背景によりLMSに対する認識や利用状況が異なる | 学生の様々な学習スタイルに適した方法で情報にアクセスできるよう,複数のリソースと評価方法を検討し提供する必要がある | 16 | 作業療法学 | |
学生の文化的背景や学年によってLMSに対する認識が異なる | 23 | |||
学生の性別や年齢によってLMSに対する認識が異なる | 23 | |||
学生の世代によってLMSに対する満足度が異なる | 26 | |||
学生のニーズに適していないとLMSの機能が利用されない可能性がある | 配信された説明動画が学生のニーズに適したものでないと視聴されない可能性がある | 15 | 看護学 | |
学生がLMSの機能(ディスカッション・フォーラム)よりソーシャルメディアを好む場合がある | 27 | |||
学生同士の学びの共有の希薄化 | 学生が学びの共有等の交流を行う場が少ない | 学生同士が学びを共有しているという感覚を得にくい | 4 | 医学 |
学生同士の接触が減少する | 13 | |||
学生の負担 | テクノストレスを感じ,学術的生産性が低下する | 年齢が上の学生,大学院生,ICT経験の浅い学生はテクノストレスをより強く感じる | 22 | |
テクノストレスの増加によって学術的生産性が低くなる | 22 | |||
LMS利用に対し,学生が負担を感じる | メッセージアラートが複数あると学生の負担になる | 15 | 看護学 | |
大学院生はナビゲーション,概要の把握,重要な情報の入手に苦労する | 15 | 看護学 | ||
学生の準備不足 | 学生のLMSに関する理解が不足している | LMSの機能(ディスカッション・フォーラム)に対する学生の理解が不足している | 27 | |
学習成果への影響 | 学習成果(成績)は教員のLMS利用方法に影響を受ける | LMS利用状況と成績の正の関係は教員のLMS利用方法に影響を受ける | 28 | |
学習に対する自己効力感への影響 | LMS自己効力感はオンライン学習自己効力感に影響する | LMS自己効力感が低い学生はオンライン学習自己効力感が低い | 10 | 看護学 |
教員のLMS受容への影響 | 時間・費用・不安・技術的要因により教員のLMS受容状況は変化し,受容が妨げられる場合がある | 必要な時間や費用などの要因によって教員のLMSの受容は変化する | 9 | |
互換性の問題に関する技術的要因によって教員のLMSの受容は変化する | 9 | |||
不安は教員のLMSの受容を妨げる | 9 | |||
教員の業務負担増加 | LMSの導入により業務時間が増加した | 教員が画面に向かって行う業務時間が増加する | 13 | 医学 |
教員の教育活動にかける時間が増加する | 13 | 医学 | ||
一部の教員は,LMSは時間がかかり使いにくいと考えている | 14 | |||
教員はLMSを用いた業務に負担を感じる | 教員はLMSを用いた評価に困難を感じている | 7 | ||
ディスカッション・フォーラムでは参加者数,投稿数が多く,迅速なフィードバックが困難な場合がある | 27 | |||
教員の準備不足 | 教員のLMSに関する経験が不足している | 教員のLMS経験によって利用するLMSの機能は変化する | 11 | |
教員のLMS利用経験の不足によってLMS利用への意欲が変化する | 21 | |||
教員のLMSに関する知識が不足している | 教員がLMSの主要な機能やツールを有効に活用できていない | 11 | ||
教員のLMS利用が体系的でない | 11 | |||
教員のLMSに関する予備知識や専門知識が不足している | 21 | |||
教員同士の交流の希薄化 | 教員間の交流が減少する | 教員同士の接触が減少する | 13 | 医学 |
技術支援体制の不足 | 学生への技術サポートやトレーニングが不足している | 学生へのLMSに関する技術サポートが不足している | 29 | |
学生のLMSに関するトレーニングが不足している | 29 | |||
教員に対する技術支援体制が不足している | 熟練したトレーナーが不足しており,教員の利用意欲やコンテンツの質が低い | 21 | ||
教員へのLMSに関する支援体制が不足している | 27 | |||
システム・設備に関する問題 | インターネットの状況によりLMS利用が妨げられる | 一部の教員は,ネットワークの性能と帯域幅に関連する問題を経験している | 14 | |
インターネットが低速だとアクセスに時間がかかる | 21 | |||
インターネットの状況により,通信速度が遅いことや,接続が途切れることがある | 29 | |||
セキュリティに対する懸念がある | セキュリティに対する懸念がある | 29 | ||
必要なシステム・設備が不足している | 授業外で利用できるPCの有無によって授業外のLMS利用は変化する | 30 | ||
インターネットやハードウェアの利用にコストがかかる | 21 | |||
ディスカッション・フォーラムには教員が学生の活動をモニターし評価するためのツールが不足している | 27 | |||
組織的な取り組みの不足 | 組織全体での取り組みが不足している | LMS導入に関する手順が明確でないことにより大学運営に支障をきたす | 21 | |
組織におけるLMSに関するコミットメントの欠如によって教員のLMS利用の動機づけが低下する | 21 | |||
大学の管理スタイルによって教員のLMS利用が変化する | 21 |
LMS利用の効果は,6のカテゴリー,14のサブカテゴリーに分類された.【自己学習の促進】は,〔学習効率が高まる〕,〔効果的な自己学習ができる〕,〔学習習慣の定着につながる〕,〔自己学習を管理できる〕から構成される.【ユビキタスな学習】は,〔場所を選ばない学習が可能になる〕,〔学習教材の利便性を高める〕から構成される.【学習成果の向上】は,〔各機能の利用により学習成果(成績)が向上する〕,〔各機能の利用により学習成果(理解度)が向上する〕,〔各機能の利用により学習成果が向上する〕から構成される.【コミュニケーションの円滑化】は,〔学生同士の円滑なコミュニケーションが可能になる〕,〔学生-教員間の円滑なコミュニケーションが可能になる〕から構成される.【学生の学習に対する心理状態の変化】は,〔学生の学習に対する興味・意欲が向上する〕,〔学生の学習に対するエンゲージメントが向上する〕から構成される.【学習状況の可視化】は,〔学生間の交流を可視化できる〕から構成される.
LMS利用の課題は,14カテゴリー,26のサブカテゴリーに分類された.【学生・教員のLMS利用行動意図への影響】は,〔学生のLMS利用行動意図はLMSに対する認識(満足度,自己効力感)に影響を受ける〕,〔学生のLMS利用行動意図はLMSをどのように知覚しているか(有効性,個人的成果期待)に影響を受ける〕,〔学生のLMS利用行動意図は学生の習慣に影響を受ける〕,〔教員のLMS利用行動意図はLMSに対する認識(自己効力感,遊び心,主観的規範)に影響を受ける〕,〔教員のLMS利用行動意図は教員の背景(年齢,性別,経験)に影響を受ける〕から構成される.【学生のLMS利用行動への影響】は,〔学生のLMS利用行動は教育設計やLMSに対する認識に影響を受ける〕,〔学生の背景によりLMSに対する認識や利用状況が異なる〕,〔学生のニーズに適していないとLMSの機能が利用されない可能性がある〕から構成される.【システム・設備に関する問題】は,〔インターネットの状況によりLMS利用が妨げられる〕,〔セキュリティに対する懸念がある〕,〔必要なシステム・設備が不足している〕から構成される.【教員の業務負担増加】は,〔LMSの導入により業務時間が増加した〕,〔教員はLMSを用いた業務に負担を感じる〕から構成される.【教員の準備不足】は,〔教員のLMSに関する経験が不足している〕,〔教員のLMSに関する知識が不足している〕から構成される.【学生の負担】は,〔テクノストレスを感じ,学術的生産性が低下する〕,〔LMS利用に対し,学生が負担を感じる〕から構成される.【技術支援の不足】は,〔学生への技術サポートやトレーニングが不足している〕,〔教員に対する技術支援体制が不足している〕から構成される.【教員のLMS受容への影響】は,〔時間・費用・不安・技術的要因により教員のLMS受容状況は変化し,受容が妨げられる場合がある〕から構成される.【組織的な取り組みの不足】は,〔組織全体での取り組みが不足している〕から構成される.【学生同士の学びの共有の希薄化】は,〔学生が学びの共有等の交流を行う場が少ない〕から構成される.【学生の準備不足】は,〔学生のLMSに関する理解が不足している〕から構成される.【学習成果への影響】は,〔学習成果(成績)は教員のLMS利用方法に影響を受ける〕から構成される.【学習に対する自己効力感への影響】は,〔LMS自己効力感はオンライン学習自己効力感に影響する〕から構成される.【教員同士の交流の希薄化】は,〔教員間の交流が減少する〕から構成される.
今回のレビューで採用された文献の多くはアジアで発行されたものであり,米国や英国等の先進国で発行されたものは少なかった.文部科学省先導的大学改革推進委託事業として取り組まれた調査では,2009年時点で,米国で約93%,英国で全ての大学がLMSを導入されており,両国でLMSが普及されていた時期は10年以上前に過ぎていたことがわかっている(放送大学学園,2011).また,同調査で示された2009年時点の日本におけるLMS導入率は約40%,2020年に行われた調査(大学ICT推進協議会,2020)でも約69%であった.これらの調査結果から,日本やアジア諸国は,米国や英国より10年以上遅れてLMS導入やLMSに関連する研究が進められてきたことが推察される.更に,発行年別に見ると,2020年以降に発行された文献が8割を占めていることから,コロナ禍で遠隔教育が急速に推し進められたことが影響している可能性がある.本レビューでは,こうした状況が反映された結果が示されたと考えられる.
採用文献の対象は,約7割が学習者であった.高等教育機関におけるICTの利活用に関する調査(大学ICT推進協議会,2020)において,各教育機関が考える「ICT活用教育の対象者」を調査したところ,国内の4年制大学の約97%が「一般の学生」と回答しており,主な対象者を学習者であると認識していることがわかる.LMSを利用した教育・学習はICT活用教育に含まれるものであり,LMS利用についても主な対象者は学習者であると考えられていたことが推察される.本研究においても,対象者を学習者とした研究が多い傾向が示されたことから,本研究で選定された文献でも同様に対象は学習者であると考えられ,対象者の評価を得ることを目的とした研究が多く行われていた可能性がある.また,教育者を対象とした研究は少ないが,その一方で,教育者側にも【教員の準備不足】【技術支援の不足】等,様々な効果・課題があることが明らかになった.LMS利用推進にあたっては,学習者にLMSを利用した教育・学習機会を提供する教育者が効果を理解した上でより効果的に利用できるよう,教育者に対して情報提供をすることや,教育者がLMSを受容し利用行動を取ることを促すような支援を検討すること等が必要と考える.
2. LMS利用の効果・課題本レビューでは,LMS利用の効果について6つのカテゴリーが抽出された.LMS上で提供可能なコンテンツの1つであるe-ラーニングに関する先行研究(Luaran et al., 2014;Mousazadeh et al., 2016;Button et al., 2014)や,ICT活用教育全体に関する調査(大学ICT推進協議会,2020)では,本レビューで示された【ユビキタスな学習】【自己学習の促進】【学習成果の向上】【コミュニケーションの円滑化】の効果があることが既に明らかになっており,本レビューにおいても同様の結果となった.それらに加えて本レビューでは,【学生の学習に対する心理状態の変化】【学習状況の可視化】といった効果も示された.一方,同先行研究(Mousazadeh et al., 2016)や調査(大学ICT推進協議会,2020)においては,「コストの削減」や「教育の質向上」,「教職員の作業効率化」等の効果も示されているが,本レビューでは同様の結果は示されなかった.これらの効果は教育者の視点で評価される内容であるが,先に述べたように,採用文献の対象の約7割が学習者であったことから,本レビューでは効果として抽出されなかったことが予測される.
【自己学習の促進】や【コミュニケーションの円滑化】については,21世紀型スキルに挙げられている項目が反映された結果となった.21世紀型スキルの代表例である,Assessment and Teaching of 21st Century Skills(以下,ATC21S)では,21世紀型スキルとして,「思考の方法(創造性とイノベーション,批判的思考・問題解決・意思決定,学び方の学習・メタ認知)」,「働く方法(コミュニケーション,協働性)」等の項目を挙げている(白井,2020).本研究の結果から,これらのスキルの獲得にLMSが有用である可能性が示された.
効果を示す記述が抽出された研究の分野を見ると,約半数が医療関連分野における研究から抽出されたものだった.看護学を例に挙げると,看護職として求められる基本的な資質・能力として,課題対応能力,コミュニケーション能力,保健・医療・福祉における協働,生涯にわたって研鑽し続ける姿勢等がモデル・コア・カリキュラムで挙げられている(文部科学省,2017).医学教育においても類似した内容が示されており(厚生労働省,2022),これらの資質・能力の獲得に,本研究で示されたLMSの効果は関連が深く,医療関連分野において効果が多く抽出される結果が示されたのではないかと考える.また,医学教育のモデル・コア・カリキュラムにおいては,学修目標として「情報・科学技術を活かす能力」が挙げられており,更に,学修方略としてLMSの利点が示され,紹介事例においてもLMSを利用したものが複数取り上げられる等,注目されていることがわかる(厚生労働省,2022).こうした背景が,本研究の結果にも表れていた.
課題は効果よりも多岐にわたり,14のカテゴリーが抽出された.e-ラーニングに関する先行研究では,【技術支援体制の不足】【システム・設備に関する問題】(Button et al., 2014)や,【学生同士の学びの共有の希薄化】(Luaran et al., 2014)に関連する課題が示されており,本研究結果でも同様の課題が示された.ICT活用教育に関する調査(大学ICT推進協議会,2020)では,ICT活用教育の導入・推進を妨げる要因として,「教職員・学生のICTスキル不足」「予算・時間の不足」「学内の組織的な協力支援体制の欠如」「学内コンセンサスの欠如」等が挙げられており,本研究で示された【学生/教員の準備不足】【教員のLMS受容への影響】【組織的な取り組みの不足】は,これらと同様の結果であると言える.一方,LMSの利用を含むブレンディッド・ラーニングにおけるオンライン・コンポーネントの課題をレビューした先行研究(Rasheed et al., 2020)では,上記以外にも,学生の課題として「先延ばし行動」や「不適切な時間管理」,教員では「テクノロジーを教育に利用することに関する否定的な認識や信念」等が示されている.また,Button et al.(2014)は,学習者・教育者が共に「情報リテラシーのスキルが不十分」であることについても指摘している.本レビューで抽出されなかったこれらの課題については,LMS利用にあたっても生じ得る課題であると考える.更に,看護教育におけるe-ラーニングに関するレビュー(Button et al., 2014)では,「大学で習得したICTスキルが看護師としての役割に必要とされることへの理解の不足」も課題として報告されている.前述したように,看護基礎教育においては,電子カルテや遠隔診療等,医療現場でのICT活用に適応できる人材の育成が求められており,卒後必要になるスキルを理解し,その習得を視野に入れ,学習していく必要がある.このことは,本レビューでは抽出されなかったが,LMSの利用にあたっても課題と捉え,LMSを利用した学習の中で習得できるスキルが,卒後どのように活かされるのかを,教育者が学習者に伝えていく必要があると考える.
本レビューの結果では,特に,学習者・教育者のLMS利用行動や利用行動意図への影響に関するものが多く示された.LMS利用に関連するこれらの要因の存在を理解し,LMSの導入・推進に向けて対応策を検討する必要がある.また,【技術支援の不足】や【組織的な取り組みの不足】等,各教育機関が組織として検討・対応する必要のある課題も複数の文献から抽出された.日本のICT活用教育の導入・推進については,課題として資金や人材の不足があることや,推進組織体制の整備が不十分であるために導入・推進に対して教員が負担を感じている可能性があること等が2013年の調査で指摘されている(京都大学,2014).2020年の調査(大学ICT推進協議会,2020)では,各教育機関における技術支援組織,教育支援組織が抱える問題点を調査しており,最も多くの大学が問題点として回答した項目が「人員の不足」,次いで,「知識・経験のあるスタッフの確保」,「予算の不足」であった.このように,日本国内では,本研究の結果と同様の内容が以前から指摘されていたことがわかる.また,看護教育におけるe-ラーニングに関するレビュー(Button et al., 2014)においても,「サポート/トレーニングの不足」が指摘されており,看護基礎教育においても,組織として検討すべき課題が他分野と同様に存在することがわかる.各教育機関が組織として課題の解決に積極的に取り組み,必要な技術支援を検討し,それを提供できる体制を整えることは,【技術支援の不足】や【組織的な取り組みの不足】等の課題の直接的な解決になるだけでなく,【教員の業務負担増加】や【学生の負担】等,その他の課題の改善にもつながり得ると考える.
本研究では,国内外の様々な分野で行われた先行研究から,LMS利用の効果・課題を概説することを目的に,検索データベースとしてCiNii・J-Dream IIIを使用した.しかし,看護基礎教育におけるLMS利用への示唆を得るためには,CiNii・J-Dream IIIから抽出される研究では限界があり,より広範囲な分野の研究を抽出するには,この他にもデータベースを併用する必要がある.また,CiNiiがシソーラス機能を有していないこと等を加味すると検索ワードについても検討の余地が残る.表1に示した概念毎の検索ワードを再検討することで,今回のレビューでは抽出されなかった文献が得られる可能性がある.以上のことから,本レビューにおける文献検索方法には網羅性という点で課題が残ることを踏まえ,本研究結果を反映し,文献の検索・選択方法を再検討したレビューを実施することが今後の課題である.
LMS利用の効果・課題を概説することを目的にスコーピングレビューを実施し,採用された30件の文献から,LMS利用の効果・課題を示すことができた.効果は,【自己学習の促進】や【コミュニケーションの円滑化】等,6つのカテゴリーが抽出され,その内の約半数が医療関連分野の研究から抽出されたものであった.看護や医学教育で求められる資質・能力の獲得に,本研究で示されたLMSの効果は関連が深く,医療関連分野において効果が多く抽出される結果が示されたのではないかと考える.課題は,【技術支援体制の不足】【システム・設備に関する問題】等,14のカテゴリーが抽出され,看護基礎教育においても同様に生じ得る,検討すべき課題が示された.【技術支援の不足】や【組織的な取り組みの不足】等の課題に対しては,各教育機関が組織として積極的に取り組み,必要な技術支援の検討およびその提供体制を整えることで,課題の直接的な解決や,【教員の業務負担増加】や【学生の負担】等,その他の課題の改善にもつながり得ると考える.また,本研究の結果は,LMS導入・利用の検討,必要な支援の検討・強化につながり,看護基礎教育におけるLMS利用推進,更には,ICTを活用した教育の推進の一助となることが期待できる.
付記:本論文の内容の一部は,第43回日本看護科学学会学術集会において発表した.
謝辞:本研究をご指導くださり,多くのご助言をくださった東京医療保健大学大学院看護実践開発学領域の指導教員の先生方に深く感謝申し上げます.
利益相反:本研究における利益相反は存在しない.
著者資格:YKは研究の着想およびデザイン,研究プロセス全体,検索式作成,一次・二次スクリーニング,原稿の作成に貢献.NAは研究のデザインならびにプロセス全体への助言,検索式作成,一次・二次スクリーニング,原稿の示唆・修正に貢献.YMは研究のデザインならびにプロセス全体への助言,検索式確認,一次・二次スクリーニング,原稿の示唆・修正に貢献.全ての著者は最終原稿を読み,承認した.