抄録
令和7年の労働安全衛生法改正(令和7年法律第33号)は、産業構造の変化や多様化する働き方に対応し、個人事業者への保護を中心に安全衛生法制の再構築へ向け、第一歩を記したものである(本格的な再構築は、今後の改正に委ねられている)。最も重要なのは、建設アスベスト訴訟の最高裁判決を契機に、個人事業者にも労働者と同様の保護措置を及ぼすことを目的とし、義務主体や保護対象の拡張や明確化が図られた点である。また、小規模事業場へのストレスチェックの義務化(ただし罰則なし)、化学物質の自律管理化のための支援策の法定、高年齢者の就業環境整備の努力義務の法定など、幅広い課題を扱っている。本稿では、行政が公表した公布通達を素材として、本改正の趣旨と要点の解説を図った。