産業保健法学会誌
Online ISSN : 2758-2574
Print ISSN : 2758-2566
最新号
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大会特集 AIと産業保健法:DX時代の多様化した産業保健と法
大会長講演
  • 山田 省三
    2026 年5 巻1 号 論文ID: conf-feat.26-008
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
    AI(人工知能)は、人間の学習・推論・判断・言語理解などの知的機能をコンピュータで模倣する技術であり、機械学習やディープラーニングの発展により急速に進歩してきた。現在では、言語処理、画像・音声認識、機械翻訳、医療診断、金融市場分析、画像診断、自動運転、スマートホンのアシスタント機能など多くの分野で活用されている。特に生成AI は、大量のデータから既存のパターンを学習して文章や画像、音声などの新しいアイデアやコンテンツを生み出すことができ、教育部門や顧客サービス、ソフトウェア部門など様々な領域で活用されている。一方で、AI の発展は労働市場にも影響を与え、これまで単純作業が自動化されると考えられていたが、近年では高度な知識を必要とするホワイトカラー職にも影響が及ぶ可能性が指摘されている。また、SNS やデータ分析による個人情報の収集や信用評価システムなど、プライバシーや社会的格差の問題も生じている。さらに将来的には自律的に判断するAI の登場やシンギュラリティの可能性も議論されているため、AI に倫理性を習得させることと、最終的な意思決定は人間によるものでなければならないことを確認すべきである。
教育講演
模擬裁判
先達との対話 パーソナルヒストリー
特別対談
メインシンポジウム
シンポジウム1 高年齢労働者の安全・健康確保と法
シンポジウム2〈学問の最前線〉ドイツのパワハラ論争が示唆するもの 〜医療者と法律論者の対話〜
  • 原 俊之
    2026 年5 巻1 号 論文ID: conf-feat.26-018
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
    ドイツにおいても、職場のいじめ・嫌がらせ(モビング:Mobbing)に対しては、わが国と同様、不法行為等の法規定に基づき、損害賠償請求のための訴訟が提起されてきた。しかし、学説・判例が構築してきたモビングの定義・概念ゆえに、加害行為の立証が容易ではなく、法による対処の限界が指摘されている。ドイツ法における議論は、深刻かつ法では捉えにくい職場のいじめに対しては、法以外の専門的知見との連携の必要性を示唆している。
  • ―医療者と法学者の対話からみえた実務的枠組み―
    吉川 徹
    2026 年5 巻1 号 論文ID: conf-feat.26-019
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
    本報告はドイツのモビング論争を手がかりに、職場のいじめ・ハラスメントをめぐる課題について医療者と法学者の対話を通じて整理を試みたものである。法は行為の違法性の可視化を試みるが、「システマティック」要件の立証困難により救済に限界を有する。一方、医療はこれを慢性的・累積的ストレス曝露として捉え、健康影響を可視化し得る。こうした異なる可視化の枠組みは、対立ではなく補完関係として位置づけられる。この理解に基づき、医療者は早期発見・臨床介入・復職支援を通じて被害者保護の実効性を高めるとともに、法学・心理学との連携のもとで組織改善と予防に関与することが求められる。他方で、診断や臨床対応は医学の範囲に属する一方、行為の法的評価や労務管理上の対応はその外側にあり、両者の境界は実務において揺らいでいる。職場のいじめ・ハラスメントは個人にとどまらず、同僚や組織全体に影響を及ぼす現象であり、多層的主体を視野に入れた包括的対応が必要である。本報告では法と医学の限界と強みを踏まえた学際的対話に基づき、実務に接続可能な対応の枠組みの提示を試みた。
シンポジウム3
シンポジウム4 生成AIは私たちの認知にどのようなインパクトを与えるか~法政策への示唆を考える~
  • ─DX時代におけるメタ認知のスキルアップ─
    竹倉 史人, 三宅 琢, 小島 健一
    2026 年5 巻1 号 論文ID: conf-feat.26-021
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
    本稿は、第5回日本産業保健法学会シンポジウム「生成AI は私たちの認知にどのようなインパクトを与えるか」における竹倉史人氏(武蔵野大学客員教授)の講演内容を報告するものである。AI 時代における人間の認知スキーマの再編を主題とし、「異化(defamiliarization)」や「認知スキーマによる世界の編集」など、人間が世界をどのように体験・構築しているかを人類学的視点から論じる。特に、時空・家族・生命の3領域における認知スキーマの多様性を示し、DX 時代の法・倫理・産業保健における新しい視座を提示した。
シンポジウム5 支援職(士業)がハラスメントにあったらどうする? 支援職の支援体制の構築と課題
シンポジウム6
  • ~国内外の産業保健看護職のあり方と課題~
    帆苅 なおみ, 鈴木 悠太, 西脇 巧, 長谷川 佳代子, 錦戸 典子, 今井 鉄平
    2026 年5 巻1 号 論文ID: conf-feat.26-024
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
    日本では、多くの労働者が中小規模事業場で就労しているが、従業員50人未満の事業場では産業保健体制の整備が法的義務とされておらず、十分な産業保健サービスが提供されていない。その結果、メンタルヘルス不調や生活習慣病、業務関連疾病に対する予防的対応が不十分であるという課題がある。これらの課題に対応するためには、多職種連携による産業保健支援が不可欠であり、その一員として産業保健看護職の活用は重要である。本シンポジウムでは、本学会の「産業保健看護職の活用方策に関する検討会」の活動成果を基に、国内外の法制度および実践事例を踏まえ、日本における産業保健看護職活用の課題と今後の方策について検討した。ディスカッションでは、産業保健看護職の役割や評価に関する課題が共有され、中小規模事業場における活用方策、諸外国の制度や仕組みの活用、ならびに教育・資格制度による質保証の必要性について議論された。
シンポジウム7 職場における新型コロナワクチン接種と被害者救済
シンポジウム8
シンポジウム9
  • ~現場から見えてくることを通じて~
    佐藤 文彦, 笹井 健司, 島田 陽一, 堤 健, 佐藤 典久
    2026 年5 巻1 号 論文ID: conf-feat.26-029
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
    2024年4月から始まった「医師の働き方改革」は予想以上に浸透した。しかし一方で、宿日直許可の申請を巡っては、サービス残業といった観点からも少なからず課題が浮き彫りとなっている。この背景には厳しい病院経営と深刻な医師不足などが挙げられ、一筋縄ではいかない構造的課題が潜んでいる。このため、臨床の現場から見えてくることを通じて、労使双方の視点を持つ医師、政策立案に関与する法学者、健康管理を支援する実務家が、多角的な現状分析を行い、医師の働き方という労務的な観点の、その先を見据えた医療政策全体を俯瞰した議論、および成功事例を紹介する。
シンポジウム10 改正安衛法、化学物質管理を自律的に取り組むには~取り組み事例から考える自律的管理
  • 香山 不二雄, 石﨑 由希子, 松井 正義, 山口 宏茂, 真鍋 憲幸
    2026 年5 巻1 号 論文ID: conf-feat.26-030
    発行日: 2026/05/31
    公開日: 2026/06/25
    ジャーナル フリー
    2024(令和6)年4月以降、化学物質管理については、法令に規定されたことを遵守することを求める規制のスタイル(法令遵守型)から、事業者自らがリスクアセスメントを実施し、取るべき措置を選択する規制(自律的管理型)への移行が進められている。もっとも、現場においては、「自律的管理」に対する理解が十分に浸透しているとは言えない状況にある。本シンポジウムでは、具体的な取組事例から、「自律的管理」のファーストステップとその後の進め方を明らかにすることを試みた。
連携学会シンポジウム1(日本産業精神保健学会)
連携学会シンポジウム2 (全国社会保険労務士会連合会)
連携学会シンポジウム3 (日本産業ストレス学会)
連携学会シンポジウム4(JAOHL弁護士会・大阪弁護士会)
論説
労働行政の動向
カンファレンス報告
  • 日本産業保健法学会
    2026 年5 巻1 号 論文ID: cor.26-001
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/06/25
    [早期公開] 公開日: 2025/12/25
    ジャーナル フリー
    2025年7月10日に開催された「AI時代の労働安全衛生(OHS)政策に関する国際オンライン会議」では、日本、欧州連合、英国、ドイツの政策担当者や支援者・研究者・実務家が、人工知能(AI)が職場の安全と健康にもたらすチャンスとリスク、そして規制上の課題について、情報交換し、討議した。主催は日本産業保健法学会(JAOHL)、共催は労働安全衛生総合研究所(JNIOSH)であり、厚生労働科学研究費(25JA1004)の支援を得て実施した。各国の対応策や事例の報告、学際的ディスカッションを構成要素とした。 EU-OSHAは、欧州におけるデジタル化・AI活用の調査結果と事例を示した上で、安全性向上のチャンスに加え、業務強度の増大や自律性の喪失といった心理社会的リスク、関連するEU法制度の枠組みを示した。英国HSEは、各業種やリスク要因(機械、化学物質など)別のリスク管理の規制体系に、AI特有のリスク(予測誤り、データ偏り、ブラックボックス化、アップデート起因の性能変動等)を組み込むことによる、リスクに応じた「イノベーション促進的」アプローチ(規制の行きすぎを抑制するアプローチ)や、ホライズン・スキャニング(「何が起きつつあるか」を早期に察知し、規制・基準・運用を前倒しで整える作業)、標準化の進展を紹介した。ドイツのBAU BG(建設業労災保険組合)は、建設業における災害予防政策でのAIの実装例として、監督官向けワークリスト・アプリ(現場担当者に、「赴くべき現場と実施する手順」を優先度付きで示す業務アプリ)やAIを活用した点検記録システムを示し、スケーラビリティ(ユーザー数・データ量・対象現場・機能が増えても、性能や信頼性とコスト効率を保って運用を拡張できる性質)と人間中心設計の重要性を強調した。 日本からは、厚生労働省が機械安全規制へのAIや自律的なシステムの汲み入れや、労働基準監督行政におけるデジタル変革(AIの活用)の状況を報告した。JNIOSHは、破面解析、斜面崩壊予測、人間工学的リスク評価、災害報告書の自然言語処理などのAI応用研究を紹介した。さらに、企画責任者の三柴より、日本で実施した意識調査の結果として、AI親和性が高い者ほどリスク探知等におけるAIの信頼性を疑う傾向があることや、AIの透明性や説明責任を求める声が強いこと、リスクの捉え方に独自の文化的傾向が窺われること、AIの問題による災害が生じた場合に責任を負うべき者として、プログラム設計者、データ入力者、利用現場の管理者らが挙げられたこと等が示され、共同規制、国際標準の整合、リスク・コミュニケーション、そしてリスク創出者への責任配分といった法政策提案がなされた。 総括討議では、透明性、対応原則の現場での実効的執行、感情応答型AIが労働者心理に与える潜在的影響(認知の歪みの強化など)など新たな論点が取り上げられた。各国に共通して、リスクの質量に応じた「過度でない比例的な規制」と国際協調の組み合わせこそが、労働者のウェルビーイングを守りつつ、AIによるOHS成果の向上を実現する鍵であることが確認された。
会議報告
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