本稿では,自閉症スペクトラムのある思春期・青年期の若者たちへの臨床的アプローチの課題について,学校という文脈に即しながら教育相談の視点を中心に論じた。小学校から中学校に進学する際には学校の仕組みが大きく変わるため,自閉症スペクトラムのある若者にとってはさまざまな困難が伴うことや,中学校以降の学校段階において本人・保護者と学校・教員との間で起こるさまざまな問題について事例を挙げ説明を加えた。最後に,思春期・青年期における臨床的アプローチの課題として,アイデンティティ形成の重要性に対する再評価,思春期・青年期的な心性に対する理解の促進,支援員の専門性の向上,学校内における効果的な支援システム作り,学校間における情報提供の改善,高校・大学段階での進路選択における支援体制の整備を取り上げた。