抄録
以前,不登校は心の問題として捉えられてきたが,近年になって不登校と発達障害(特に広汎性発達障害)との関連性についての研究が増加している。本研究は,広汎性発達障害児が不登校となる経緯,および不登校となった発達障害児への支援や予防的な支援の在り方について,主として環境的な要因に焦点を当てて検討することを目的とし,医療機関と教育機関を対象とした実態調査を行った。その結果,広汎性発達障害児の不登校や登校しぶりの特徴として,初発時期が早いこと,不登校や登校しぶりの契機は多様であることがわかった。広汎性発達障害が不登校や登校しぶりとなる環境的要因としては,主として,いじめられた経験が挙がり,さらには広汎性発達障害児が「生きにくさ」を感じやすい学校環境や人間関係が背景にある可能性が示唆された。また,発達障害が関係する不登校への支援については,一般的な不登校のケースとは支援内容や支援における困難な点に違いが見られた。