自閉症スペクトラム研究
Online ISSN : 2434-477X
Print ISSN : 1347-5932
実践研究
発達障害のある成人における長時間入浴行動の改善
保護者を含めた行動コンサルテーションを通して
植田 隆博松岡 勝彦
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2014 年 11 巻 2 号 p. 55-62

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抄録

本研究では、母親による入浴開始の指示を受けてから入浴を終了するまでに長い時間を要する発達障害のある成人男性1 名(A さん)とその母親を対象に行動コンサルテーションを通した支援を行った。A さんの入浴の流れ(指標)は、①A さんに対して母親は入浴開始を指示する、②A さんは浴室へ移動を開始する、③A さんに対して母親は入浴終了を指示する、④A さんは浴室から退室する、⑤A さんはリビング・ルームに入室する、以上であった。そして、①~⑤が実際に行われた時刻および指示内容ならびにフィードバック内容を母親がリビングにおいて記録した。A さんはベースライン期において①~⑤に94 分を要していた。介入期では、母親に対して、入浴終了の指示を9 分早めること、入浴所要時間の結果に応じて異なるフィードバックを行うことを助言した。また、介入期における入浴所要時間の減少は母親の支援によってもたらされた旨の結果操作を行った。さらに、A さん本人に対しても肯定的なフィードバックを行った。その結果、介入期においては67.2 分へと約27 分間短縮され、フォローアップ期においてもこの傾向は維持された。つまり、入浴終了の声かけをベースライン期より9 分だけ早め、入浴時間短縮に対して正の強化刺激を提示したことにより、入浴時間は40 分以上も短縮されたわけである。またその後に、A さんと母親の両者を対象に事後評価を実施したが、ここでも今回のコンサルテーションの有効性が示され、負担も感じなかった旨の回答が得られた。

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© 2014 NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
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