自閉症スペクトラム研究
Online ISSN : 2434-477X
Print ISSN : 1347-5932
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成人期に自閉症スペクトラム障害の診断を受けた男性当事者が経験する困難と対処の過程
砂川 芽吹
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2017 年 14 巻 2 号 p. 59-67

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抄録

成人期に初めて自閉症スペクトラム障害(ASD)の診断を受けた者は、成人期になるまで障害に気づかぬまま、何らかの不具合が生じて診断に至った者である。このような当事者に対する理解と支援を考える上では、診断に至るまでの当事者の経験に焦点を当てる必要がある。本研究では、成人期に初めてASD の診断を受けた男性が、診断に至るまでにどのような困難を経験し、それに対処してきたのかということについて、質的な方法を用いて明らかにすることを目的とした。成人期にASD の診断を受けた男性当事者15 名に対して半構造化面接を行い、グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。その結果、ASD の男性は、学生時代から【周囲との差(学校)】を感じながらも、【違和感への対処】をしていた。また、【周囲の環境との相互作用】によってASD の特性が「個性」として受け止められたり、あるいはいじめの原因となっていたりした。そして、学生時代には何とか過ごすことができていたが、社会に出て自分の能力を超える社会的な要求に応えられなくなった時に【周囲との差(仕事)】が問題として顕在化し、診断につながっていたことが示唆された。最後に、成人期に診断されるASD 当事者の特徴について考察した。

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© 2017 NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
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