2018 年 16 巻 1 号 p. 5-20
本研究の目的は、青年期と成人期の自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder : ASD)を対象とした社会的スキル訓練(social skills training : SST)の効果研究を概観し、児童・青年期のASDを対象としたSSTのレビューにおいて指摘されている8つの観点に基づき検討を行うことであった。12編の論文が抽出され、全ての論文においてSSTの有効性が認められた。抽出された論文は、非言語コミュニケーションに焦点を当てた研究と、ソーシャルスキル獲得や対人交流を標的とした研究に大別でき、プログラム上の工夫として、構造化やシステム化がみられること、現実場面に近い状況下でのトレーニングや保護者の介入など、般化を促す手続きが行われていることが示された。一方で、獲得スキルの般化効果を示した研究も少ないことが示された。今後の課題としては、効果量の報告や例数設計が求められること、介入効果における性差の検討や、介入効果の般化を促進する手続きが含まれたプログラム開発が求められること、測度の統一やプログラムのマニュアル化に基づくプログラム間の比較検討が必要であること、個人の発達段階やニーズなどを考慮したプログラム選択が重要であることを論じた。